労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  あすなろ福祉会 
事件番号  東京地労委 平成13年(不)第12号 
申立人  全労協全国一般東京労働組合 
被申立人  社会福祉法人あすなろ福祉会 
命令年月日  平成15年11月18日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  本件は、社会福祉法人が、(1)組合休暇協約、電話取次協約及び土曜半休協約の3件の労働協約を解約したこと、(2)組合休暇の取得を理由として組合員4名の平成12年度冬期賞与を減額したこと、(3)組合休暇の取得及びストを理由として組合員5名の平成13年度夏期賞与を減額したことが不当労働行為であるとして、争われた事件で、(1)組合休暇協約について、内容を改定した上で存続させるよう、誠実協議すること、(2)平成12年度冬期賞与及び平成13年度夏期賞与について、減額がなかったものとしての取扱い及び減額分の支給、(3)文書手交を命じ、その余の申立ては棄却した。 
命令主文  1 被申立人社会福祉法人あすなろ福祉会は、平成13年3月31日に解約した「組合休暇労働協 約」について、内容を改定した上で存続させるよう、申立人全労協全国一般東京労働組合と 誠実に協議しなければならない。
2 被申立人福祉会は、(1)12年度冬期賞与において、申立人組合の組合員X1、同X2、同X 3及び同X4に対し組合休暇取得を理由に行った減額、並びに(2)13年度夏期賞与の支給にお いて、申立人組合の組合員X1、同X2、同X3、同X4及び同X5に対し組合休暇取得及 びストを理由に行った減額をなかったものとして取り扱い、減額分の賞与金額を上記各人に 支払わなければならない。
3 被申立人福祉会は、申立人組合に対し、本命令書受領の日から1週間以内に下記内容の文 書を交付しなければならない。
                     記
                                    年 月 日
   全労協全国一般東京労働組合
    執行委員長 X6 殿
                       社会福祉法人あすなろ福祉会
                        理事長 Y1
  当福祉会が、(1)平成13年3月31日に貴組合傘下のあすなろ保育園労働組合との「組合休暇 労働協約」を解約したこと、(2)12年度冬期賞与の支給において、貴組合の組合員X1氏、同 X2氏、同X3氏及び同X4氏に対し組合休暇取得を理由に減額したこと、並びに(3)13年度 冬期賞与の支給において、貴組合の組合員X1氏、同X2氏、同X3氏、同X4氏及び同X 5氏に対しストを理由に減額したことは、いずれも不当労働行為であると東京都地方労働委 員会において認定されました。今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。)
4 被申立人福祉会は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなけばな らない。 
5 その余の申立てを棄却する。 
判定の要旨  3800 行為の結果・その他
4600 対抗的団体に対する措置(解散・団交禁止・協定破棄・経費援助の停止等)に触れた例
福祉会による組合休暇協約等3件の労働協約の解約が不当労働行為に該当するかどうかは、福祉会による協約の解約が私法上適法になされたか否か、また、その結果いかなる法的効果が生じたかの問題とは別個に、当該労使関係の公正な形成維持を図るべく設置された不当労働行為制度上の要請に鑑みて、各解約が、当該労使関係上不公正な形でなされたものとみるべきかどうかの観点から改めて吟味された上で決せられるべきであり、その際には解約の経緯やその間の組合側の対処の仕方を含め、当該各協約の成立事情、運用の展開過程並びに福祉会が解約した実質的理由ないしその意図、ひいては解約によって組合が組合活動上に被った不都合、打撃等を総合的に考慮すべきであると判断された例。

3700 使用者の認識・嫌悪
4600 対抗的団体に対する措置(解散・団交禁止・協定破棄・経費援助の停止等)に触れた例
組合休暇の取得が他の従業員の負担となっていたり、組合休暇の使用状況に好ましくないところがある等の問題があったことは認められるが、そのような問題は、協約締結者である福祉会と組合の双方が協約の改定等により対処すべきものであり、約10年間存続し、組合活動への影響も大きい本協約について、福祉会が具体的な見直し案等を提示しないままに解約を申し入れ、組合との協議がないまま一挙に解約に及んだことは、対立関係にあった組合やその活発な組合活動を嫌悪して、組合に打撃を与え、組合活動を抑制しようとしたものであるといわざるを得ず、組合運営に対する支配介入に該当するとされた例。

4600 対抗的団体に対する措置(解散・団交禁止・協定破棄・経費援助の停止等)に触れた例
電話取次協約は、昭和62年に締結されて以降十数年間有効に存続していたものであり、組合傘下の分会であり、職場が第一園と第二園とに分れている組合にとって、組合用件の様々な連絡のために重要であったといえるが、一方で、携帯電話等が普及した現在では、本協約によらない連絡手段も可能な状況となってきていることから、本協約の解約申入れは、唐突ではあってもそれ相応の理由があり、解約までに組合との交渉がなかったことは好ましいものではないが、交渉の不成立は福祉会のみの責任とはいえず、解約によって著しく組合活動に支障が生じるとはいえないことから、福祉会が電話取次協約を解約したことは不当労働行為であるとまではいえないとされた例。

4600 対抗的団体に対する措置(解散・団交禁止・協定破棄・経費援助の停止等)に触れた例
土曜半休協約は、平成8年度に有効に成立していたものの、9年度には新たな取決めをした時点で、事実上、効力を失っていたものと考えられること、本協約が解約となっても、労働時間に関する交渉において、特に組合に不利となるような事情は認められないこと等から、本協約の解約は、事実上効力を失っていた労働協約を解約したものに過ぎず、組合及び組合員が特に不利益を受けることはないから、福祉会が土曜半休協約を解約したことは不当労働行為であるとはいえないとされた例。

1201 支払い遅延・給付差別
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
3700 使用者の認識・嫌悪
長期間にわたり、組合休暇は有給扱いとし、また、組合休暇、ストともに賞与査定における「欠勤時間」扱いとはしていないことから、これらは労使慣行によって成立していた便宜供与であると認められ、福祉会が、組合に何ら説明せず、組合の同意を得る努力もしないまま12年度冬期賞与及び13年度夏期賞与において減額を実施したことは、対立関係にあつた組合やその活発な組合活動を嫌悪し、組合活動の抑制を図ったものであって、組合活動への打撃を意図した支配介入に該当するとされた例。

4602 組合との協議を命じた例
4603 その他
4614 文書手交のみを命じた例
組合休暇協約を解約したことは不当労働行為であると認められるものの、組合休暇の取得が他の従業員の負担となっていたり、その使用状況に好ましくないところがある等の問題があるとして、当該救済として「組合休暇協約」について、内容を改定した上で存続させるよう組合と誠実に協議するよう命じた例。

業種・規模  社会保険、社会福祉 
掲載文献   
評釈等情報   

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