労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  株式会社コマレオ 
事件番号  山形地労委 平成14年(不)第2号 
申立人  ゼンセン同盟コマレオ労働組合 
被申立人  株式会社コマレオ 
命令年月日  平成15年11月11日 
命令区分  全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) 
重要度   
事件概要  会社が、(1)組合委員長に対しタンクローリー運転業務からパチンコ店業務員への配置転換を命じ、これに従わなかったことを理由に同人を懲戒解雇したこと、(2)同委員長の年次有給休暇の申請を拒絶したこと、(3)組合が要求した労働条件変更等に関する団体交渉に誠実に応じなかったこと、(4)組合役員に対し、組合の上部団体からの脱退を強要したこと、(5)暫定労働協約を無視して組合費のチェック・オフを一方的に廃止したことが不当労働行為であるとして争われた事件で、(1)組合委員長に対する配置転換命令及び懲戒解雇の撤回、原職復帰、バック・ペイ、(2)組合委員長の年次有給休暇の申請を承認したものとしての取扱い、(3)誠実団交応諾、(4)チェック・オフの再開、(5)文書手交(上記(1)乃至(4)及び上部団体からの脱退強要に関して)を命じた。 
命令主文  1 被申立人は、申立人組合執行委員長X1に対して、平成14年8月12日付で行った配置転換 命令及び平成14年8月15日付で行った懲戒解雇を撤回し、同人を原職に復帰させ、当該命令 及び処分がなければ受けるはずであった給与に相当する額(既支払額を除く)を支払わなけ ればならない。
  また、被申立人は、X1が平成14年8月14日付で請求した年次有給休暇を承認したものと して取り扱わなければならない。
2 被申立人は、申立人が平成14年6月14日に申し入れた「労働条件の変更等」に関する団体 交渉に対し、関係資料の提示、回答根拠の具体的な説明をするなど誠意を持って団体交渉に 応じなければならず、また、組合側出席者の人選を理由として団体交渉を拒んではならな  い。
3 被申立人は、申立組合の求めに応じ、昭和63年5月16日に締結した暫定労働協約第9条に 基づき、申立組合員の組合費のチェック・オフを実施しなければならない。
4 被申立人は、本命令書写しの交付の日から1週間以内に、下記の文書を申立人に手交しな ければならない。
                      記
                                    年 月 日
   ゼンセン同盟コマレオ労働組合
    執行委員長 X1 殿
                            株式会社コマレオ
                             代表取締役 Y1
  当社が行った下記の行為は、山形県地方労働委員会において不当労働行為であると認定さ れましたので、今後このような行為は繰り返さないようにします。
                     記
  (1)貴組合委員長X1氏に対する、平成14年8月12日付配置転換命令及び同月15日付懲戒    解雇処分。
  (2)貴組合との団体交渉において、資料の提示、回答根拠の具体的説明を行わず誠実に団体   交渉に応じなかったこと及び組合側出席者の人選を理由として団体交渉に応じなかった   こと。
  (3)組合に上部団体からの脱退を強要したこと。
  (4)貴組合との合意なくチェック・オフを廃止したこと。
 救済方法について
  (1)主文1の給与相当額は、本件懲戒解雇前3箇月の給与により算出した労働基準法第12条   第1項に規定する平均賃金の30日分の額を1箇月当たりの賃金相当額とする。
  (2)被申立人は、主文1の賃金相当額の支払いに当たり、これに対する山形地方裁判所の仮   処分の決定に従って既に支払った金額をこれに充当することができる。
  (3)申立人は、謝罪文の掲示並びに複数の新聞への掲載を求めるが、主文の掲載をもって足   りると考える。 
判定の要旨  1300 転勤・配転
2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
組合委員長X1に対するタンクローリー運転業務からパチンコ店清掃係への配置転換命令は、組合活動が活発化しつつあった時期に組合委員長に対し行われたものであること、配転に関する合理性や配転命令翌日からの勤務という緊急性について、会社からの納得のいく疎明がなされていないこと、会社の就業規則には、配置転換についての規定はなく、従業員に包括的に転勤を受認されているものではないこと、本件配置転換命令は職種の変更、手当等の減額が伴なう等、本人に大きな不利益を強いるものであることから、会社は、本人の同意を得るべく誠意を持って説明、説得を行うべきであるが、そのような姿勢はうかがわれないこと、さらに、会社代表取締役Y1が本件配置転換命令と労働組合委員長の立場との関連を繰り返し発言していることから、本件配置転換命令は、活発化する組合活動を抑制するため、組合委員長の排斥を目的とした不当な命令で、X1に対し著しい不利益を強いるとともに、組合活動に対する支配介入を目論んだ労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

1600 休暇の取扱い
X1に対する年休の不承認は、事前申請期間経過後であることのみを理由としているが、緊急性のある年休取得の場合は、期限後の申請も認めてきたことからしても、事後申請のみを理由としたX1の年休不承認は適当とは認められないこと、本件年休申請により、業務に大幅な支障が発生する等の疎明はなく、仮に疎明があったとしても、時季変更権の行使にあたっては、申請された年休は認められないことを早急に告げるべきであるのに、X1は解雇通知書の中で初めて年休が認められなかったことを知り得たもので、時季変更権の行使手続きが有効に行われたものとは認められないこと等から、本件年休の不承認は、X1の解雇を決断していた会社が、X1から申請された年休を認めることとなれば、解雇処分にも影響が出ることを考慮し拒否したものであると判断せざるをえず、X1に対する不利益取扱いであり、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為であるとされた例。

1400 制裁処分
3601 処分の程度
3603 労働者に落度がない場合
会社は、X1の懲戒解雇の理由として、配置転換命令に従わない業務命令違反とするが、同配置転換命令は、上記のとおり不当なものであり、その不当な命令に従わなかったことを理由として行われた懲戒解雇処分についての正当性の主張は認められないこと、また、懲戒解雇処分を行うにあたっては、本人からの弁明を聴く機会を与える等、慎重に検討を行うことが求めらるが、配置転換命令時の話合い以外に一切の話し合いの機会を持たず、文書送付による懲戒解雇処分を行っていること等から、X1に対する懲戒解雇は、労働組合委員長の排斥を目的とした不当な解雇であり、X1に対し著しい不利益を強いるとともに、組合活動の弱体化を目論んだものであり、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

2240 説明・説得の程度
2249 その他使用者の態度
組合は、3回に渡る団体交渉において一貫して、第1回団体交渉で掲げた要求に対する詳細な説明・回答を求めているものであり、会社は、労働条件の変更等の必要性について、団体交渉の場で委細を尽くして説明し、組合の納得を得る努力を誠意を持って行うべきであり、「要求は一切めない。」との回答のみに終始する会社の姿勢は、誠意を持って団体交渉に応じているとは言えず、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとされた例。

2121 被解雇者
2123 その他交渉出席者
本件事件申立後に組合が求めた団体交渉について、団体交渉の組合側出席者を誰にするかは、組合が自主的に決定すべきことであり、会社がその人選に干渉することは適当ではなく、団体交渉に上部団体の役員の出席や被解雇者の出席を拒否することは適当でないことから、会社のX1委員長及び上部団体役員の団体交渉への出席の見合せの要請について、組合と合意に達していないことが、団体交渉に応じない正当な理由とは認められず、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとされた例。

2624 組合人事への干渉
上部団体から脱退しなければ団体交渉に応じないとする会社の姿勢は、労働組合の運営に不当に干渉するものであり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
会社の、チェック・オフの停止、再開、再停止は、組合との事前協議、合意もないままに、一方的にチェック・オフを停止したものであり、組合運営に対する支配介入であり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

業種・規模  娯楽業 
掲載文献   
評釈等情報   

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