労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日立精機 
事件番号  千葉地労委 平成14年(不)第5号 
申立人  全日本金属情報機器労働組合千葉地方本部 
申立人  全日本金属情報機器労働組合 
申立人  全日本金属情報機器労働組合千葉地方本部日立精機支部 
被申立人  株式会社森精機ハイテック 
被申立人  日立精機株式会社 
被申立人  株式会社森精機製作所 
命令年月日  平成15年10月29日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  (1)H社が、同社から営業譲渡を受けたM1社への雇用承継に関する団体交渉に応じなかったこと、(2)M1社及びその親会社のM2社が、組合員の雇用承継とその後の労働条件に関する団体交渉に応じなかったことが不当労働行為であるとして争われた事件で、(1)文書手交(H社の団交拒否が不当労働行為である旨)を命じ、(2)M1社及びM2社に対する申立ては却下し、その余の申立ては棄却した。 
命令主文  1 被申立人日立精機株式会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記の内容の文書を 申立人らに交付しなければならない。
                     記
   全日本金属情報機器労働組合
    代表者 中央執行委員長 X1 様
   全日本金属情報機器労働組合千葉地方本部
    代表者 執行委員長   X2 様
   全日本金属情報機器労働組合千葉地方本部
    代表者 執行委員長   X3 様
                                   年 月 日
                          日立精機株式会社
                           代表取締役 Y1
  貴組合らの平成14年9月11日及び同月18日の団体交渉申入れに対し、当社が同月30日以前 にこれを行うことを拒否したことが、千葉県地方労働委員会によって労働組合法第7条第2 号に該当する不当労働行為であると認定されました。
  当社は、今後このような行為をしないことを誓約します。
2 被申立人株式会社森精機ハイテック及び被申立人株式会社森精機製作所に対する申立てを 却下する。
3 その余の申立てを棄却する。 
判定の要旨  2249 その他使用者の態度
組合は、H社が9月30日付で従業員全員の解雇を宣言している状況下で、組合員らの雇用と労働条件を守るため、解雇前に団体交渉を行うことを申し入れていたのであるから、労働組合の申入れを尊重し、この申入れを前提として団体交渉の日時を労使の話合いによって決めるべきであるところ、H社は、単に多忙なため申立人らが申し入れた日時の団体交渉には応じられない旨の文書回答に終始したと認められることから、正当な理由なくこれを拒否したものと考えざるをえず、H社が団体交渉申入れに対し9月30日以前に団体交渉を行わなかったことは、労働組合法第7条第2号に規定する不当労働行為に該当するとされた例。

2249 その他使用者の態度
2250 未妥結・打切り・決裂
従業員全員解雇後の団体交渉において、H社は組合の雇用問題についての質問事項に回答しており、当該回答が組合の要求と異なるものであったとしても、H社には組合の要求を入れたり、それに対し譲歩をなす義務まではないのであって、双方の主張が対立し、意見の一致をみないまま交渉が打ち切りになったことをもって、H社が誠実に団体交渉に当たっていないとは認められないとされた例。

4300 労組法7条2号(団交拒否)の場合
H社と組合において、和解に向けての協議、検討がなされていたとしても、本来組合が要求事項に掲げ、団体交渉を行おうとした、組合員の雇用と労働条件を守ること等については、実質的な交渉機会を経ないまま、解雇により実現不可能な状況となったものであり、これらの原因は、上記のとおりH社の団体交渉拒否よるものであるから、団体交渉拒否の事実に対して謝罪文の交付等を求めることについての救済利益が失われるものではないとされた例。

4908 営業譲渡後の譲受人
H社からM1社への営業譲渡はその契約内容から、M1社がH社から営業の全部を譲り受けたものではなく、M1社はH社従業員の雇用契約上の地位を承継していないこと、また、本件営業譲渡契約中の労働契約不承継条項について、H社とM1社が相計って解雇権濫用の法理や整理解雇の法理を潜脱しようとしたと解されるようなこともないこと等から、H社の従業員全員解雇は、民事再生手続の中でM1社への営業譲渡と従業員全員解雇を決定したものであり、一方、M1社による採用は、M1社が親会社のM2社の協力を得て実施し、採用者を決定したものであって、H社の従業員全員解雇とM1社の採用との間に密接不可分な関連性があるとはいえず、M1社と組合員との間に雇用関係は認められないことから、M1社は労働組合法第7条第2号の使用者に該当せず、M1社に対する申立ては、却下するとされた例。

4915 親会社
本件営業譲渡に至る過程の中で、M2社が本件営業譲渡の企画、立案、交渉及び決定の全てを行った事実は認められないこと、また、M2社はM1社の親会社であり、本件M1社の採用手続に親会社として協力していることから、M1社とM2社の間に密接な関連性があることは認められるが、そのことをもって、M2社がM1社を通じて、実質的にH社の従業員の採用人数、その採用基準及び採用後の諸労働条件を支配し、決定力を有していたとまで認めることはできないこと、さらに、右のとおり、本件営業譲受人M1社が労働組合法第7条第2号の使用者に該当しないのであるから、親会社であるM2が独自に同法第7条第2号の使用者に該当するとはいえず、M2社に対する申立ては、却下するとされた例。

4505 その他
H社の本件解雇日以前の団交拒否に対する救済については文書交付をもって足りるとされた例。

業種・規模  精密機械器具製造業 
掲載文献   
評釈等情報   

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