概要情報
事件名 |
金融経済新聞社 |
事件番号 |
東京地労委 平成11年(不)第23号
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申立人 |
日本出版労働組合連合会金融経済新聞労働組合 |
被申立人 |
株式会社金融経済新聞社 |
命令年月日 |
平成15年 7月15日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、(1)組合副執行委員長X1を暴力行為を理由に懲戒解雇したこと、(2)昼休み集会に参加した組合員を懲戒処分したこと、(3)(2)の件に関する始末書未提出の組合役員4名に対して加重して懲戒処分したこと、(4)組合結成通告以前に昇格予定者であった組合員5名を不昇格としたことが不当労働行為であるとして、争われた事件で、会社に対し、(1)X1の懲戒解雇処分のなかったものとしての取扱い及びバック・ペイ、(2)昼休み集会参加に関する組合役員の懲戒処分のなかったものとしての取扱い、(3)(2)のうち賃金減額となった組合執行委員長及び組合員1名に対するバック・ペイ、(4)文書掲示を命じ、その余の申立ては棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人株式会社金融経済新聞社は、申立人日本出版労働組合連合会金融経済新聞労働組 合の組合員X1に対する平成11年2月23日付懲戒解雇処分をなかったものとして取り扱い、 次の措置を講じなければならない。 (1)X1を原職に復帰させること。 (2)平成11年2月以降、X1が原職に復帰するまでの間、同人に支払われるべき賃金相当額 と既に支払われている金員との差額を支払うこと。 2 被申立人会社は、申立人組合の組合員X2、同X3、同X1、同X4、同X5、同X6及 び同X7に対する平成11年1月29日付懲戒処分並びに組合員X2、同X3、同X1及び同X 4に対する同年2月15日付懲戒処分をなかったものとして取り扱い、次の措置を講じなけれ ばならない。 (1)X2を次長心得に復帰させ、平成11年2月以降、同人が次長心得に復帰するまでの間、 当該処分を理由に支払われなかった次長心得の役付手当相当額を支払うこと。 (2)X4の主任手当を平成11年3月以前の金額に戻し、当該処分を理由に減額した主任手当 相当額を支払うこと。 3 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、縦1m×横1.5mの白紙に下記の内 容を楷書で明瞭に墨書し、本社、東北総局、東海総局、関西総局、中国総局、九州総局の掲 示板若しくは見やすい場所に10日間掲示しなければならない。 記 平成 年 月 日 日本出版労働組合連合会 金融経済新聞労働組合 執行委員長 X2 殿 株式会社 金融経済新聞社 代表取締役 Y1 当社が (1)平成11年2月23日付で貴組合副執行委員長X1氏を懲戒解雇したこと (2)11年1月29日付で貴組合組合員X2氏、X3氏、X1氏、X4氏、X5氏、X6氏及び X7氏を懲戒処分したこと (3)11年2月15日付で貴組合組合員X2氏、X3氏、X1氏及びX4氏を懲戒処分したこと は、不当労働行為であると東京都地方労働委員会で認定されました。今後このような行為 を繰り返さないよう留意します。 4 被申立人は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならな い。 5 その余の申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
0600 暴力行為
2625 非組合員化の言動
3500 処分の時期
3601 処分の程度
3607 労働者の行為と不利益取扱の程度との関連
本件懲戒解雇処分の理由とされる組合副執行委員長の暴力行為は、組合員の転勤問題についての団交申入れを常務が真剣に受け止めようとせず、明確な返答もしない態度に誘発されたもので、かつ、同常務に直接危害を負わせようとしたものではないと認められること、また、事件発生後1週間も経過しない非常に早い時期に懲戒解雇をするとの決定がなされたこと、その手続においても、副執行委員長本人に弁明の機会を与えない等、手続的にも問題があること等からすると、会社は、本件行為を奇貨として、団体交渉の開催を迫っていた組合側の主要な交渉メンバーを会社から排除することにより、組合の影響力を減殺することを狙って懲戒解雇処分を行ったもので、労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるとされた例。
3500 処分の時期
3601 処分の程度
3607 労働者の行為と不利益取扱の程度との関連
組合が開催した職場集会は昼休みに行われ、時間も10分程度と非常に短く、特に具体的な業務妨害があったとは認められないこと、また、会社は、個別の従業員に対する懲戒処分であるのに、その場にいた組合員全員の処分内容を一括して掲示板に掲示しただけで、処分された各個人に対して処分の内容及び処分理由の説明もせず、弁明の機会も与えないなど手続上の問題があること、さらに、会社は始末書提出に応じなかった組合役員4名に対しては、加重に賃金減額を伴う降格処分等の懲戒処分を行っており、かかる処分の態様は、性急、且つ、犯した企業秩序維持義務違反の程度に比較して過度に厳しいものであること等から、昼休み集会に参加したことを理由とする各懲戒処分、及び始末書の提出を拒否したことを理由として加重になされた懲戒処分は、労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるとされた例。
1200 降格・不昇格
会社は、全社的改革を行うことを発表した文書の「付帯事項」の中で昇格予定者を発表したが、必ずしも6か月後の昇格を確約したものとまではいえないこと、また、実際に昇格した者の中に組合員も含まれていることからすれば、会社が必ずしも組合所属を理由に昇格させなかったとも言い切れないこと、さらに、昇格については会社にある程度の裁量の余地が認められていることなどを併せ考えれば、本件において、組合員を昇格させなかったことが不当労働行為に当たるとまではいえないとされた例。
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業種・規模 |
出版・印刷・同関連産業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集126集465頁 |
評釈等情報 |
 
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