労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  駸々堂ほか3者・日本出版販売 
事件番号  大阪地労委 平成12年(不)第10号 
大阪地労委 平成12年(不)第37号 
申立人  関西合同労働組合 
被申立人  個人Y1 
被申立人  個人Y3 
被申立人  破産者株式会社駸々堂破産管財人F 
被申立人  日本出版販売株式会社 
被申立人  株式会社駸々堂 
被申立人  個人Y2 
命令年月日  平成15年 8月22日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  本件は、会社が(1)組合との事前協議合意約款が存在するにも関わらず、協議することなく自己破産の申立てをしたこと、及びこれに伴い、全従業員を解雇したこと、(2)会社及び会社の大口債権者である書籍取次会社が、会社の自己破産申立て後、組合の団体交渉申入れを拒否したこと等が不当労働行為であるとして、争われた事件で、会社に対し、事前協議を行わなかったこと及び団交拒否に関する文書手交を命じ、その余の申立て及び破産管財人に対する申立てについては棄却、会社役員ら及び書籍取次会社に対する申立ては却下した。 
命令主文  1 被申立人株式会社駸々堂は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならな い。
                    記
                                    年 月 日
   関西合同労働組合
    執行委員長 X1殿
                             株式会社駸々堂
                            代表取締役社長 Y1
  当社が行った下記の行為は、大阪府地方労働委員会において、労働組合法第7条第2号及 び第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為はいたし ません。
  (1)平成12年1月31日の株式会社駸々堂の破産申立てに際して、貴組合との事前協議を行わ   なかったこと
  (2)貴組合から平成12年2月2日付及び同年3月21日付でそれぞれ申入れのあった破産申立   て等に関する団体交渉に応じなかったこと
2 被申立人株式会社駸々堂に対するその他の申立てを棄却する。
3 被申立人破産者株式会社駸々堂破産管財人Y4に対する申立てを棄却する。
4 被申立人Y1、同Y2、同Y3及び同日本出版販売株式会社に対する申立てを却下する。 
判定の要旨  4916 企業に影響力を持つ者
N書籍取次会社は会社の唯一の書籍取次店又は大口債権者の立場から、駸々堂の経営ないしは従業員の労働条件等に一定の影響力を及ぼしたものとみるのが相当であるが、会社従業員の労働条件について現実的かつ直接的な影響力ないし支配力を有していたとまではいえないから、労組法上の使用者と認められないとされた例。

4905 経営補助者
Y3は、N書籍取次会社から会社に派遣された役員であるにすぎず、N会社は上記のとおり使用者にはあたらず、また、同人はN会社を離れて独自に会社の従業員の労働条件に影響力ないし支配力を及ぼす使用者たる地位にあったとは認められないため、組合のY3に対する申立てが却下された例。

4905 経営補助者
会社の役員は、Y3を除きY1社長とその縁故関係者であること、会社の株主は一名を除きY1社長とその縁故関係者であることが認められるが、これのみをもって会社がY1社長の個人経営によるものであったとまではみることができず、さらに個人として労働者の労働条件に影響力ないし支配力を及ぼし得る地位にあったと認められないため、組合のY1に対する申立てが却下された例。

4905 経営補助者
Y2は会社の代表取締役(専務)であり、Y1社長の縁故関係者であり、会社株主の一人であることが認められるが、これをもって会社がY2の個人経営によるものであったということはできず、またY2が個人として従業員の労働条件に現実的かつ直接的な影響力ないし支配力を及ぼし得る地位にあったと認める疎明はないのであるから、組合のY2に対する申立てが却下された例。

1800 会社解散・事業閉鎖
X2他13名が組合に加入したのはいずれも平成12年2月頃のことであり、会社が全従業員を解雇した1月以後のことであることから、組合の消滅を図る意図をもって破産申立てを行ない、全従業員を解雇したとの申立ては棄却された例。

1800 会社解散・事業閉鎖
会社は、経営不振を脱するために様々な方策を講じていたが、経営状態が好転せず、唯一の書籍取次店であり最大の債権者であるN会社から強硬に債務弁済を求められたことが契機となり、事業継続を断念したものとみるのが相当であり、会社が別途同じ事業を再開しているという事実も認められず、全従業員が解雇されていることから、本件破産申立て及び本件解雇は、組合の消滅を意図して行なったものとはいえないとされた例。

1107 その他
組合と会社の間に事前協議約款が有効に成立している以上、会社は、特段の事情がない限り、これを遵守して組合と協議し合意を得る努力をすべきであり、本件事前協議約款を無視したことは、組合の存在を軽視又は無視した行為というべきであり、労働組合法第7条第3号の支配介入とされた例。

4912 破産事業における使用者
企業に対する破産宣告がなされた後も、当該企業の法人格が直ちに消滅するわけではなく、労使関係上の当事者たる地位が当然になくなるわけではないから、会社は破産申立てに至った経緯及び組合員の処遇等について団交を求められた場合はこれに誠実に応じるべき義務があり、組合が申し入れた団交について、特段理由がないのに応じなかったことが労働組合法第7条第2号の不当労働行為とされた例。

4913 破産管財人
破産管財人は、破産財団の財産管理を行う限度において労働条件に対して直接的な影響力ないし支配力を及ぼす地位にあるが、本件破産申立て及び本件解雇は不当労働行為とはいえないから、これに関する管財人に対する申立てには理由がなく、また管財人は団交に応じたことが認められるから管財人に対する申立てが棄却された例。

4503 他の救済との関係で団交の必要性を認めなかった例
会社が破産申立てに当たり事業協議を行わなかったこと、本件破産、解雇等の団交に応じなかったことは不当労働行為と認められるが、現在、破産管財人の下で破産手続が進行している状況にあることから、この手続を離れて会社と組合がこれらについて独自に交渉する実質的な利益はもはや存しないと判断されるとして、文書手交が命じられた例。

業種・規模  卸売業、小売業、飲食店 
掲載文献   
評釈等情報   

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