労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  駸々堂(解雇・団交) 
事件番号  大阪地労委 平成12年(不)第16号 
大阪地労委 平成12年(不)第50号 
申立人  関西単一労働組合 
被申立人  株式会社駸々堂 
被申立人  日本出版販売株式会社 
被申立人  個人Y1 
被申立人  破産者株式会社駸々堂破産管財人E 
命令年月日  平成15年 6月30日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  本件は、会社が、(1)破産に伴い組合員を解雇したこと、(2)破産に至るまでの間、週40時間制実施に際し生じた時間外割増賃金問題を未解決のまま放置したこと、(3)会社及び会社の大口債権者で会社破産の契機となる債権回収を行った書籍取次会社が、会社の破産後に申し入れられた団交を拒否したことが不当労働行為であるとして争われた事件で、会社に対し団交拒否に関する文書交付を命じ、会社に対するその余の申立て及び破産管財人に対する申立ては棄却、書籍取次会社及び同社役員に対する申立ては却下した。 
命令主文  1 被申立人株式会社駸々堂は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなけれぱならな い。
                    記
                                   年 月 日
   関西単一労働組合
    執行委員長 X1 殿
                           株式会社駸々堂
                            代表取締役 Y2
  当社が、貴組合から平成12年4月14日付で申入れのあった団体交渉に応じなかったこと  は、大阪府地方労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であ ると認められました。今後、このような行為はいたしません。
2 被申立人株式会社駸々堂に対するその他の申立てを棄却する。
3 被申立人破産者株式会社駸々堂破産管財人Y3に対する申立てを棄却する。
4 被申立人日本出版販売株式会社及びY1に対する申立てを却下する。 
判定の要旨  4916 企業に影響力を持つ者
会社の経営ないし従業員の労働条件に対する書籍取次会社の影響力は、親子関係にある親会社のそれに比肩しうるものではなく、唯一の取次店又は大口債権者の立場から、会社の支援ひいては債権確保を目的としたものとみるのが相当であって、書籍取次会社が会社の経営を支配下に置き、その従業員の労働条件について現実かつ具体的な支配力を有していたとまでいえないから、書籍取次会社を労働組合法上の使用者と認めることはできず、同社に対する申立てが却下された例。

4905 経営補助者
4916 企業に影響力を持つ者
Y1は、書籍取次会社から会社に派遣された役員であるにすぎず、同人を派遣した書籍取次会社は、要旨1のとおり使用者に当たらず、また、同人が派遣元の書籍取次会社を離れて独自に会社の従業員の労働関係上の諸利益に直接的な影響力ないし支配力を及ぼす使用者たる地位にあったとも認められないから、Y1に対する申立てが却下された例。

1800 会社解散・事業閉鎖
会社は、平成4年以降、経営不振を脱するために様々な方策を講じてきたが、経営状態が好転せず、同12年1月に至って、唯一の書籍取次店であり最大の債権者である書籍取次会社から強硬に債務の弁済を求められたことが直接の契機となり、社長ら経営陣が、経営再建への展望を見出せなくなり、事業継続を断念したものとみるのが相当であり、本件破産申立て及びこれに伴う本件解雇が組合の消滅を意図したものとは認められないとされた例。

1203 その他給与決定上の取扱い
2235 その他組合の態度
2300 賃金・労働時間
会社が、組合に知らせることなく就業規則を変更し、一か月単位の変形労働時間制を導入したことについては問題があるが、会社の回答は、組合員のみを特に不利益に取り扱うものであるとまでいえず、週40時間制実施につき、会社と組合との間で合意が形成されなかったのは、組合が、自らの意思で、より好条件での週40時間制実施を求めて会社回答を拒否するとともに時間外割増賃金未払分の受取を拒否したことによるものとみるのが相当であり、組合員に対する時間外割増賃金が未清算のまま会社が破産に至ったからといって、これが不当労働行為に当たらないとされた例。

2130 雇用主でないことを理由
4912 破産事業における使用者
企業に対する破産宣告がなされた後も、当該企業の法人格が直ちに消滅するわけではなく、労使関係上の当事者たる地位がなくなったわけではないから、会社は破産宣告がなされた後も労働組合法上の使用者としての地位を有し、組合から破産申立てに至った経緯及び組合員の処遇等について団体交渉を求められた場合は、誠実に応じる義務があるにもかかわらず、会社は、団体交渉について、特段理由を述べることなく応じなかったことが認められ、当該会社の行為は、労働組合法第7条第2号の不当労働行為とされた例。

4913 破産管財人
破産管財人は、破産財団の財産管理を行う限度において労働関係上の諸利益に対して実質的な影響力ないし支配力を及ぼす地位にあるから、破産財団の財産の管理及び処分に係る事項については、使用者の地位にあると解すべきであるが、会社の破産申立て及び組合員の解雇は不当労働行為に当たらないこと、時間外割増賃金未払分の問題についても会社に不当労働行為は認められないから、これらに関する組合の管財人に対する申立てには理由がないとされた例。

1800 会社解散・事業閉鎖
4503 他の救済との関係で団交の必要性を認めなかった例
5008 その他
5122 和解・取下
会社に対する組合の団体交渉申入れ事項のうち、組合員X2に関する部分は取り下げられていること及び組合員X3に係る債権確定訴訟において管財人と同人との間で和解が成立したことから、同団体交渉の議題として掲げられた事項のうち未解決の事項は、執行委員長X4に関する解雇の撤回及び時間外割増賃金未払分の支払のみであり、これらは不当労働行為に当たらず、また、会社は既に破産し、現在、破産管財人の権限の下で、破産手続が進行している状況にあり、この手続を離れて、これらの問題について会社と組合が独自に交渉する実質的利益はもはや存しないと思料され、団交拒否に関する文書手交をもって足りるとされた例。

業種・規模  卸売業、小売業、飲食店 
掲載文献  不当労働行為事件命令集126集407頁 
評釈等情報   

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