労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  東北美術第2 
事件番号  宮城地労委 平成12年(不)第7号 
申立人  X2 
申立人  X1 
申立人  日本民間放送労働組合連合会 
申立人  X3 
申立人  日本民間放送労働組合連合会東北放送労働組合 
申立人  日本民間放送労働組合連合会東北地方連合会 
被申立人  有限会社 東北美術 
命令年月日  平成15年 6月24日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  本件は、会社が、(1)組合員3名に退職を勧奨し続けていること、(2)平成11年及び12年のベア、各一時金等に関する団交を拒否又は不誠実な対応をしていること、(3)組合が先行事件の再審査を申立てたことを理由として平成11年年末一時金を不支給としたこと、(4)両年のベアをゼロとし、各一時金を不支給としたことが争われた事件で、(1)組合員3名に対し、両年の年末一時金として、2.5ヶ月分相当額の支払、(2)組合員3名の業務内容並びに平成12年のベア及び一時金に関しての誠実団交応諾を命じ、(3)平成11年の期末一時金、ベア及び夏期一時金に関する申立ては却下し、その余の申立ては棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人X1,同X2及び同X3に対して、それぞれ、平成11年年末一時金と して同年の各人の本俸の2.5か月分、及び平成12年年末一時金として同年の各人の本俸の2.5 か月分に相当する額の金員を支払わなければならない。
2 被申立人は、申立人日本民間放送労働組合連合会東北放送労働組合との間で申立人X1, 同X2及同びX3の業務内容並びに平成12年の期末一時金、ベース・アップ及び夏期一時金 に関し、経理状況に関する資料を提示し、誠意をもって団体交渉を行わなければならない。
3 申立人らの、平成11年の年末一時金、ベース・アップ及び夏期一時金に関する申立てを却 下する。
4 申立人らのその余の申立てを棄却する。 
判定の要旨  4418 継続する行為を認めた例
5201 継続する行為
本件救済申立ての一年前までになされた個々の具体的行為のうち、賃金及び一時金のカットに関する申立ては、除斥期間の故に却下すべきであるが、退職勧奨及び団体交渉に関する申立ては、その対象を個々の会社の行為そのものとするものではなく、これらの行為によって表象され申立時において継続すると申立人らが主張する不当な退職勧奨や団交拒否を対象とするものであるから、労働組合法第27条第2項の趣旨に照らし、本件救済申立ての1年前までの行為についても、申立時において継続する行為の一環として考慮の対象とすることとされた例。

5200 除斥期間
会社が組合員X1ら3名に対して行った直截な退職勧奨行為はいずれも平成6年頃までのものであって、その後、本件結審時までの間においては、そのような行為が行われていないこと、また、間接的には退職勧奨に当たる行為のうち、希望退職者への退職金上積みの提案はそれ自体は通常行われている正当な行為であって、本件において不当労働行為として救済すべき特段の事情は認められず、申立人らが求める「退職勧奨を撤回しなければならない。」という救済命令を発することは相当ではないとされた例。

2240 説明・説得の程度
2300 賃金・労働時間
会社が主張する経営状態の悪化によっては、ベアをゼロとし、一時金を不支給とすることが一応の合理性をもつこともあり得るが、そのような決定をする場合、X1ら3名に対し、具体的根拠に基づき合理性を説明する必要があると言わなければならず、会社は、組合との団体交渉において、経理状況に関する資料を提示して会社の経営状況について説明した上で、期末一時金、夏期一時金及びベアについて誠意をもって話し合い、また、それらと密接に関連するX1ら3名の勤務形態や業務内容のあり方等についても誠意をもって話し合うことが必要であるから、このことを会社に対して命ずることが妥当であるとされた例。

2240 説明・説得の程度
2300 賃金・労働時間
4504 他の救済と重畳的に団交の必要性を認めた例
前件審査の過程において、社長自身が、長期的な展望として一時金は年額2.5か月分が妥当と述べており、実際にも組合に対し、平成7年か11年までは年末一時金として2.5か月分を回答していたこと、前件審査の対象期間と本件審査の対象期間とでは、会社の経営状態その他一時金支給額に影響を及ぼすべき事情に大きな変化はないこと、一時金を支給しない合理的理由を説明してしないこと等の事情を総合判断すれば、ベア・ゼロ、一時金の不支給については、会社が団体交渉において誠意をもって話し合う過程を経れば一応合理的なものと認められる範囲を逸脱しており、これらのことは、組合活動に対する支配介入として労働組合法第7条3号の不当労働行為を構成するとされた例。

2300 賃金・労働時間
4413 給与上の不利益の場合
組合は、年末一時金として「本俸×3.55+家族手当×1.0+資格手当×2.0」の金員の支払を求めているが、会社は売上高減少を理由として平成7年年末一時金の支給率について長期的展望を踏まえ2.5か月分としていたことが認められるところであり、本件における救済としては平成11年及び12年におけるX1ら3名の年末一時金について、当該年の本俸の2.5か月分に相当する金員の支払を命ずることが相当であるとされた例。

4700 労組法7条4号(申立てによる不利益取扱い)の救済
組合員らは、平成11年年末一時金の不支給が、組合らが前件命令を不服として中労委に再審査申立てを行った報復措置であると主張するが、再審査申立てと同年年末一時金の不支給との間には、報復措置であると言えるような直接の関連があるとは考えられず、上記4のとおり、労働組合法第7条3号の不当労働行為として救済すれば足りるとされた例。

2240 説明・説得の程度
2249 その他使用者の態度
前件結審後から本件申立てまでの約2年間、会社が団体交渉に応じたのはわずか3回であり、それ以外は団体交渉を拒否したり一方的に回答を述べるのみで、会社全体の経営状況についての具体的な資料を示して合理的な説明をする努力をしていない等しているのであるから、会社の当該対応は、労働組合法第7条2号の不当労働行為に当たるとされた例。

4420 団交を命じた例
4504 他の救済と重畳的に団交の必要性を認めた例
上記6の救済方法として、組合員X1ら3名の賃金及び一時金並びにそれらと密接に関連する同人らの業務内容について、誠実に団体交渉することを会社に対して命ずることが妥当であるとされた例。

業種・規模  放送業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集126集374頁 
評釈等情報   

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