労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  園田陸運 
事件番号  鹿児島地労委 平成11年(不)第1号 
申立人  園田陸運グループ労働組合 
被申立人  園田陸運株式会社 
命令年月日  平成15年 3月18日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  会社が、合理化計画の実施やあっせん案に基づく長距離業務の実施等において、組合員であること又は組合活動を理由とする組合員差別をしたことが不当労働行為であるとして争われた事件で、あっせん案にある「具体的な配車のあり方」について協議し、会社の命令書受領から2か月以内の合意を目指すこと、あっせん案により努力することとされた賃金30万円と実際に支払われた給与の差額の3割の支払いを命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 申立人及び被申立人は、鹿地労委平成10年(あ)第1号園田陸運争議あっせん事件(以下「本件あっせん事件」という。)において、双方が受諾したあっせん案第2項に定める「具体的な配車のあり方」について協議し、被申立人が本命令書写し受領の日から2か月以内に、合意に達するよう努めなければならない。
2 被申立人は、別紙目録記載の申立人組合員に対し、平成11年9月1日から被申立人が本命令書写しを受領する日までの間で、かつ、組合員が被申立人の従業員であった期間(以下「是正期間」という。)の給与について、月額30万円と各月に既に支給された給与額(諸手当を含む。)との差額(既支給月額が30万円を超えたときは、その月の差額は0円とする。また、是正期間に1月に満たない月があるときは、日割り計算とする。)の3割を支払わなければならない。
3 その余の申立ては、棄却する。 
判定の要旨  4301 労組法7条3号(支配介入、経費援助)の場合
あっせんにおいて当事者が協議し、あっせん案を双方が受諾し、事案について一定の解決が図られた場合は、不当労働行為としての事実が消滅するものではないが、合意が成立した事案についての不当労働行為救済申立ては、原則として救済利益が失われると解するのが相当であるとされた例。

4301 労組法7条3号(支配介入、経費援助)の場合
あっせん案受諾について、会社に不当労働行為意思のないことがあっせん案受諾の条件として表示されていたとは認められないから、組合の意思表示に錯誤があったということはできず、また、組合においては不当労働行為意思のないことを条件とする旨の意思であったとしても、それは動機の錯誤に属することであって、その錯誤をもって意思表示が無効となるものではなく、あっせんが無効ということにはならないとされた例。

4301 労組法7条3号(支配介入、経費援助)の場合
事情変更の法理は、合意成立時の事情と現在の事情とが大きく変動し、合意にそのままの拘束力をもたせることが著しく不当である場合に、拘束力の解除を認めるものであり、本件あっせん受諾時と現在において大きな事情の変更はなく、事情変更による無効に当たらないとされた例。

2240 説明・説得の程度
2300 賃金・労働時間
2900 非組合員の優遇
4300 労組法7条2号(団交拒否)の場合
4301 労組法7条3号(支配介入、経費援助)の場合
会社の経営合理化について、会社は、分会員等に対する説明が必ずしも十分であったとは言い難く、また、従業員が労働条件の大幅な変更を伴う移籍について検討するには、あまりにも短期間であることから、会社の対応は適切であったか疑問が残るところであり、このような経営合理化の告示後の労使交渉の状況に鑑みると、会社は十分な説明のないまま合理化を強行しようとした様子が窺われ、その対応は必ずしも適切であったとはいえないが、受諾されたあっせん案で「組合は、『告示』について理解する。」とする合意が成立したことによって解決されたと考えるのが相当であるとされた例。

2900 非組合員の優遇
長距離運転手に対する長距離業務の指示は、事前に会社から連絡がされていたことから、会社から連絡がなければ、休日扱いであったと推測できるものの、自宅待機の制度を疎明するものは見当たらず、また、分会員による長期不出社については、この期間が40余日という長期間に及ぶことを考慮すると、長距離業務の指示がないから出社しないという組合の対応は、必ずしも適切であったとはいいがたく、この期間中に会社から自宅待機を命じられていたと認定することは困難であるから、出社しなかった者に対して長距離業務を配車しなかったとする会社の行為が、直ちに分会員に対する差別に当たらないとされた例。

2235 その他組合の態度
2249 その他使用者の態度
使用者は、合意を求める労働組合の努力に対しては、誠実な対応を通じて合意達成の可能性を模索する義務があり、組合員はあっせん案を受諾したことで「概ね30万円以上を確保する」業務に従事できるよう処遇されていたのであるが、一部の組合員がこのような業務に従事できなかったことについては、組合に不適切と思われるところもある反面、会社にも、あっせん案で合意した代行による長距離業務を実施するために、必ずしも十分な努力をしていたとは言い難いことから、十分に誠意ある交渉・協議を行ったとはいえないことや、あっせん案で合意した代行による長距離業務を実施するための努力が十分であったとは考えられず、あっせん案が一部の組合員について履行されなかったことについては、当事者双方の対応に責任があるとされた例。

1302 就業上の差別
会社が代行による長距離業務を割り当てなくなったことは、グループ分会員全員を長距離業務に従事させず、地場業務のみに就かせることにより、収入の減少を強いるという不利益取扱いであり、あっせん案により解決したと考えられる組合の食事代訴訟に対する対策としては行き過ぎたものといわざるを得ず、7条1号の不当労働行為に当たるとされた例。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
組合費の賃金控除は、覚書で労使双方が合意したものの、分会長が賃金控除の実施時期を検討させて欲しい旨申し出ていることから、会社が当時賃金控除等の申入れに応じられないとしたことには相当の理由があるといわざるを得ず、また、会社が組合員名簿を受け取ったことは、会社としては賃金控除を実施するために組合員名簿を必要とした事情があることから、このことだけをもって会社に不当労働行為意思があるとは認められないとされた例。

2622 組合員調査
会社が従業員を一人ひとり呼んで組合員であるかどうかを確認してまわったとすれば、組合員に動揺を与えるものであり、労働組合に対する支配介入になりかねないが、そのような事実については、十分な疎明がされておらず、組合においても、団交を申入れた関連会社に組合員が存在するならば、組合員の人数を明らかにするとか、一部の組合員の名前を明らかにするなど、確かに関連会社に組合員が存在すると理解できるような説明を行うべきであるとされた例。

3600 処分の差別
3601 処分の程度
組合員が職場の規律に違反する酒気帯びの状態で出勤した状況において、会社が同人に対し始末書の提出を要求したことは、会社の管理責任上行ったものと考えられ、そのことだけをもって会社に不当労働行為意思があったと解することはできず、また、同人を含め、組合員に始末書の提出を強要していることについても、対象の者が組合員に偏っていることや正当な組合活動を行ったことの故になされたものであるとするような事情について、十分な疎明がされていないから、不当労働行為に当たらないとされた例。

3106 その他の行為
会社が求人誌により運転手の募集を行ったことは、運転手が離職等の理由で流動化している実情がある一方で、人員削減等の合理化を進めながら、他方で人員不足の事態に備えるため、恒常的に採用募集を掛けておくこと自体は、決して不合理なことではなく、会社の求人行為が、直ちに組合員に対し差別待遇意思をもってなされたと判断するのは困難であるとされた例

3410 職制上の地位にある者の言動
組合は、会社の管理職が朝礼等で全員を前に「組合員とは話をするな。」などと明言し、このようなことは日常茶飯事に行われていると主張するが、十分な疎明がされているとはいえないとされた例。

2625 非組合員化の言動
鹿児島営業所の組合員の脱退について、組合は、組合脱退を余儀なくされたとする者の氏名やその時期、脱退の経緯、団体交渉での具体的な状況についての十分な疎明がされていないから、不当労働行為に当たらないとされた例。

2900 非組合員の優遇
2901 組合無視
分会が結成される以前から他の従業員に対しても時間外手当は固定金額で支給されており、組合員であることや正当な組合活動の故に固定金額で支給されているわけではないから、これをもって会社の不当労働行為意思は認められないとされた例。

4602 組合との協議を命じた例
組合は、経営合理化の告示前の長距離業務に従事させることの救済を求めているが、当事者双方があっせん案を受諾し、既に一定の解決が図られているから、あっせん結果に基づき「具体的な配車のあり方」について労使間で協議することを相当と考え、会社に対し、本命令書受領の日から2か月以内に合意に達するように努めなければならないと命じた例。

4407 バックペイの支払い方法
長距離業務を割り当てなくなったことの不利益取扱いに対する差額支給については、当事者双方が受諾したあっせん案において、概ね月額30万円以上の確保に努力することとされているから、月額30万円をもって算定の基準とするのが相当であり、算定期間については、会社が代行による長距離業務を割り当てなくなった翌月から本命令書写し受領の日までの間とするのが相当であるが、このような事態を招いたことには、食事代訴訟の提起等、組合の行動にも責任の一端が認められ、かかる事情及びその他諸般の事情を考慮して、一か月あたり30万円の金額と実際の支給総額との差額の3割の支払を命じた例。

業種・規模  道路貨物運送業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集125集495頁 
評釈等情報   

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