労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  奈良新聞社 
事件番号  奈良地労委 平成13年(不)第1号 
申立人  X1 
申立人  奈良新聞労働組合 
被申立人  株式会社奈良新聞社 
命令年月日  平成15年 2月24日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  会社が、組合の副委員長である個人1名を、販売店から受領した信認金を横領したこと等を理由に懲戒解雇処分としたこと、平成13年度春季賃金改定及び夏季一時金並びに副委員長の懲戒解雇処分に関する団交を誠実に行わなかったこと、組合ニュースの表現や懲戒解雇された副委員長が出席することを理由に、団交を拒否したことが不当労働行為であるとして争われた事件で、平成13年度春季賃金改定及び夏季一時金に関する誠実団交応諾、副委員長の懲戒解雇処分に関する団交応諾、組合ニュースの表現を理由とする団交拒否の禁止、懲戒解雇された副委員長が出席することを理由とする団交拒否の禁止、文書手交及び掲示を命じ、その余の申立ては棄却した。 
命令主文  1 被申立人株式会社奈良新聞社は、申立人奈良新聞労働組合が申し入れた平成13年春季賃金 改定、夏季一時金要求に関し、被申立人の経営状況を具体的に説明する資料を示すなどし  て、申立人組合と誠意をもって団体交渉しなければならない。
2 被申立人は、申立人X1に対する懲戒解雇処分に関し、処分に至った事情を説明するなど して、申立人組合と団体交渉しなければならない。
3 被申立人は、申立人組合が発行する「組合ニュース」の表現を理由として、団体交渉を拒 否してはならない。
4 被申立人は、団体交渉に申立人組合の交渉委員として申立人X1が出席することを理由  に、団体交渉を拒否してはならない。
5 被申立人は、本命令受領後、速やかに下記の文書を申立人組合に手交するとともに、同文 書を1m×2m大の白紙に明瞭に記載し、被申立人会社内の申立人組合の組合員らの見やす い場所に1ヶ月間掲示しなければならない。
6 申立人らのその余の申立ては、これを棄却する。
                    記
                                 年  月  日
   奈良新聞労働組合
    執行委員長 X2 殿
                           株式会社奈良新聞社
                            代表取締役 Y1
  当社が行った下記の行為は、奈良県地方労働委員会において不当労働行為であると認定さ れました。
  今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
                    記
(1)貴組合が申し入れた平成13年春季賃金改定、夏季一時金要求に関する団体交渉に、誠意を  もって応じなかったこと。
(2)貴組合が申し入れた貴組合の組合員X1に対する懲戒解雇処分に関する団体交渉を拒否し  たこと。
(3)貴組合との団体交渉を貴組合が発行する「組合ニュース」の表現を理由に拒否したこと。
(4)貴組合との団体交渉を貴組合の交渉委員X1が出席することを理由に拒否したこと。 
判定の要旨  0900 不正行為
1400 制裁処分
3601 処分の程度
新聞販売店から預かった信認金をめぐる問題について、会社がX1に対して懲戒解雇処分としたことは、X1が着服・横領を意図して計画的に着服したとまでは断定できないが、弁済を約しながら、その後会社に対して何らの対応を行っていないこと等の事実経過からみてやむを得ないこと、一般に着服・横領という行為が重大な非違行為であり、X1の信認金問題への対応に問題があったことを考慮すれば、仮にX1が組合の副委員長でなかったとしても、同様の処分がなされたと考えられ、また、本件懲戒解雇処分にあたっては適正手続が履行されていないとはいえないことから、X1の懲戒解雇処分は、7条1号及び3号の不当労働行為に当たらないとされた例。

2240 説明・説得の程度
2300 賃金・労働時間
賃金等に関する団体交渉において、労使が対立する背景には、会社が同業他社と比較して低賃金であるという事情が窺われ、このような事情の下において、ベア・ゼロ回答という組合員にとって深刻な意味をもつ回答をする場合、会社は、より詳細に説明し対応する義務があるにもかかわらず、従来の資料で十分であると主張し、原資が無いと終始していることから、会社の態度は不誠実であるといわざるを得ず、7条2号の不当労働行為に当たるとし、具体的資料を示す等の誠実団交応諾及び文書掲示を命じるのが相当であるとされた例。

2301 人事事項
X1の懲戒解雇問題に関する団体交渉については、本件懲戒解雇処分を会社が行ったことはやむを得ない理由があったといえるが、一般に組合員の懲戒解雇処分は義務的交渉事項であり、本件についても処分に至った事情等をふまえて交渉することに意味が無いとはいえないから、本件処分に至った事情を説明する等の団交応諾及び文書掲示を命じるのが相当であるとされた例。

2232 宣伝活動
2247 解決済
4500 交渉拒否理由または交渉条件に関する指示に触れた例
4505 その他
「組合ニュース」の表現を巡って会社と組合が対立し、団体交渉が行われなかったことについては争いがなく、このことについては当事者間で一応の解決がなされたが、会社が団体交渉を拒否したことは7条2号の不当労働行為に当たり、また、会社がこうした不当労働行為を繰り返すおそれがあると認められることから、組合が救済を求めることには理由があり、「組合ニュース」の表現を理由として、団体交渉をしてはならないこと及び文書掲示を命じるのが相当であるとされた例。

2121 被解雇者
4500 交渉拒否理由または交渉条件に関する指示に触れた例
会社から懲戒解雇を受けたX1が、会社から懲戒解雇処分を受けたとしても、団体交渉の当事者は、相手方である会社の従業員でなければならないことはないから、組合の副委員長である同人は当然組合を代表して団体交渉に当たることができるといわざるを得ず、同人が団体交渉に出席したことを理由に、会社が団体交渉を拒否したことは、7条2号の不当労働行為に当たるとされた例。

2121 被解雇者
2249 その他使用者の態度
4500 交渉拒否理由または交渉条件に関する指示に触れた例
4505 その他
会社は、再三にわたりX1の出席を理由に団体交渉を拒否しており、委員会が会社に対し、団体交渉拒否をしないようにと実効確保に関する要望を行ったことに対しても、その後も団体交渉拒否を継続し、委員会が同要望と同内容の文書勧告を行い、かつその履行状況の確認を行い、勧告に従うよう再度要望した結果、X1の団体交渉出席を認めた経緯を鑑みると、会社が今後、同様な団体交渉の拒否を行うこともあり得ると考えざるを得ず、団体交渉に組合の交渉委員としてX1が出席することを理由に団体交渉を拒否してはならないこと及び文書掲示を命じるのが相当であるとされた例。

業種・規模  出版・印刷・同関連産業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集125集418頁 
評釈等情報   

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