概要情報
事件名 |
日立製作所(神奈川・昇級差別等) |
事件番号 |
神奈川地労委 平成11年(不)第7号
神奈川地労委 平成10年(不)第5号
神奈川地労委 平成 9年(不)第6号
神奈川地労委 平成 8年(不)第3号
神奈川地労委 平成 7年(不)第6号
神奈川地労委 平成 5年(不)第21号
神奈川地労委 平成 4年(不)第16号
|
申立人 |
X1 外4名 |
被申立人 |
株式会社 日立製作所 |
命令年月日 |
平成12年 5月16日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) |
重要度 |
|
事件概要 |
会社が、申立人X1ら5名による労働条件の改善等を求める職場新聞の配布等の組合活動を嫌悪して、(1)同人らの職群等級を同期・同学歴入社者の中位者より低位に格付けて差別したこと、(2)昭和52年以降、同人らの昇給・賞与の査定を同期・同学歴入社者の中位者より低くして、賃金等を差別したこと、(3)同人らを仕事・研修及び福利厚生において不利益に取扱ったことが争われた事件で、(1)X1ら5名の平成3年5月21日以降の職群等級を差別したこと、(2)X4ら2名の平成3年度以降の昇給及び同年12月賞与の査定差別をしたこと、(3)X5に対する研修を差別をしたことが不当労働行為に当たるとしてこれらについて差別の是正を命じ、その余の申立てを棄却した。 |
命令主文 |
主 文 1 被申立人は、申立人X1、同X2,同X3、同X4及び同X5に対し、平成3 年5月21日以降、それぞれの同期同学歴入社者の中で中位にある者と同等の 職群等級にあるものとして取り扱わなければならない。 2 被申立人は、申立人X4及び同X5に係る平成3年度以降の昇給の査定及び 平成3年12月賞与の査定について、日立製作所労働組合との協定の平均にあ るもとして取り扱わなければならない。 3 被申立人は、第1項による是正後の職群等級に対応する賃金の額並びに第2 項による是正後の基本給及び賞与の額と現に支払った額との差額に相当する額 に、年率5分相当額を加算した額の金員を支払わなければならない。 4 被申立人は、申立人X5に係る研修について、正当な組合活動を理由に不利 益に取り扱ってはならない。 5 被申立人は、本命令交付後、速やかに下記の文書を縦1メートル、横1.5 メートルの白紙にかい書で大きく明瞭に墨書し、エンタープライズサーバ部神 奈川製造本部、デジタルメディアシステム事業部システム本部、デジタルメデ ィアシステム事業部映像本部及びデジタルメディアシステム事業部生産統括本 部の見やすい場所に、き損することなく10日間掲示しなければならない。 記 当社が、貴殿らに対し、職群等級を低位に留めたこと、賞与査定を低くした こと又は研修について不利益に取り扱ったことは、神奈川県地方労働委員会に おいて労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為であると認定されまし た。 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 平成 年 月 日 X1 殿 X2 殿 X3 殿 X4 殿 X5 殿 株式会社日立製作所 代表取締役 Y1 6 申立人らのその余の申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
5201 継続する行為
賃金是正に関して平成4年10月に申立てられているところ、平成3年3月までを査定対象期間とする3年度賃金が4年5月28日まで支給されていたのであるから、3年度賃金は申立て前1年以内にあり、また、格付けに関する申立ては平成3年5月21日発令に差別があったとして申立てられているのであり、さらに、賞与については基本給の算定を基礎としているのであるから、基本給に差別があれば賞与に格差が生ずることとなるから、いずれの申立て前1年以内にあるとされた例。
5201 継続する行為
仕事差別・研修差別に係る申立ては、今後差別を行わないよう求めるものであるから、当該差別が行われてから1年経過後の申立てであっても、却下事由に該当しないとされた例。
0120 政治(党)活動
0121 個人的活動
0126 反執行部・分派活動
申立人らの「明るい会」等による活動は、同人らが所属する日立労組や支部の機関決定を得た活動ではないが、さりとて機関決定や公式の方針に反するものでもなく、その活動には従業員の労働条件の維持改善を目指すなど、日立労組の組合員として、その自主的、民主的運営を志向するためにしたものと認められるから、政党の支部名を冠して活動が行われることがあるとしても、なお、労働組合の行為に当たるとされた例。
4422 その他
会社は、従業員の処遇・賃金制度の運用・実施は日立労組との協定に基づき、その範囲で会社の裁量権を行使しているのであり、その当否は経営の専権事項であって、法的審査の対象にならないと主張するが、いかに人事権の行使といえども正当な組合活動を行ったことなどを理由に不利益取扱を行うことは許されず、労委は当該措置の是正に必要な命令を発することができるとされた例。
5121 挙証・採証
会社は、職群等級の格付け、賃金、賞与について中位者と同等に是正することを求める本件申立ては申立ての根拠が恣意的、独善的に作り出されたものであり、また、大量観察方式ではグループ間の格差を比較検討する手法であって本件に適用できないと主張するが、申立人らの立証に対して会社の有する資料を用いて具体的な反論をしていないのであるから、労委としては申立人らの主張立証を基にその存否を判断せざるを得ないとされた例。
1302 就業上の差別
申立人X5に対する研修は新入社員研修やOJT以外になされておらず、同一職場の他の従業員と比較して不利益に取り扱われており、これが不当労働行為と判断された例。
4414 その他の不利益の場合
申立人X5に対する研修差別の不当労働行為の救済として、研修について正当な組合活動を理由に不利益に取り扱ってはならない旨を命じた例。
1200 降格・不昇格
1202 考課査定による差別
申立人X1ら5名の職務遂行状況が少なくとも平均的であったところからすると、同人らに対する職群等級の格付け、昇給、賞与の格差に合理的理由は認められず、会社が同人らの組合活動を嫌悪し、同人らの活動を封じ込め、あるいは、その弱体化を意図して行ったことにより生じたものと推認され、申立人らに対する取り扱いは組合活動を理由とするもので不当労働行為に当たるとされた例。
1302 就業上の差別
申立人X3に対する座席差別の申立ては、事務所室内に同人の席が用意されていたのであり、また、申立人X1、X3、X5に対する仕事差別に関する申立ては不利益性が認められず、不当労働行為に当たらないとされた例。
4413 給与上の不利益の場合
職群等級の格付けの格差の是正については、申立人らと同期同学歴入社者の中位者と同等にあるものとして取り扱うよう命ずることが相当とされた例。
4413 給与上の不利益の場合
4415 賃金是正を命じた例
昇給及び賞与の査定の格差是正については、申立人X4及びX5に係る平成3年度以降の昇給及び平成3年12月賞与以降の査定を日立労組の平均にあるものとして取り扱うよう命ずることが相当とされた例。
4422 その他
申立人X1らに対する職群等級の差別の是正に当たり、申立人らの組合活動の自由を具体的に保障するとともに、本件格差が不当労働行為意思に基づいてなされたものであることを他の従業員にも周知せしめるのが相当であるので、文書掲示を命ずることが相当とされた例。
|
業種・規模 |
電気機械器具製造業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集117集93頁 |
評釈等情報 |
 
|