労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  南海観光バス 
事件番号  大阪地労委 平成11年(不)第5号 
申立人  全日本建設交通一般労働組合関西支部 
被申立人  南海観光バス株式会社 
命令年月日  平成12年12月26日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  会社が、(1)就業基準変更に反対している組合の組合員を予備勤務とし、乗務勤務に就かせなかったこと、(2)就業基準変更の申入れの受諾に固執し、組合員に冬季一時金及び住宅補助金を支給しなかったこと、(3)組合事務所、組合掲示板の貸与について、別組合と差別して取扱ったことが、不当労働行為であるとして争われた事件で、会社に対し、(1)予備勤務による減収分の支払い、(2)住宅補助金の一部支給、(3)組合掲示板を貸与しなかったことに関する誓約文の手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、平成10年12月1日から同11年5月31日までの間の予備
 勤務に伴う減収分として、申立人組合員に対し、次のとおりの金額及びこれに
 年率5分を乗じた金額を支払わなければならない。
    X1  843,054円
    X2  617,346円
    X3  873,198円
    X4  684,696円
2 被申立人は、平成11年度住宅補助金として、申立人組合員に対し、次のと
 おりの金額及びこれに年率5分を乗じた金額を支払わなければならない。
    X1  54,500円
    X2  78,500円
    X3  78,500円
    X4  54,500円
3 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
                 記
                              年 月 日
 全日本建設交通一般労働組合関西支部
  執行委員長    X5    殿
                      南海観光バス株式会社
                       代表取締役    Y1
  当社が行った下記の行為は、大阪府地方労働委員会において、労働組合法第
 七条第一号及び第三号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、
 このような行為を繰り返さないようにいたします。
 (1)新就業基準に同意しないことを理由に、貴組合員を予備勤務としたこと。
 (2)新就業基準に同意しないことを理由に、貴組合員に平成11年度住宅補
  助金を支給しなかったこと。
 (3)貴組合に対し平成10年10月16日以降同11年8月9日まで掲示板
  を貸与しなかったこと。
4 申立人のその他の申立ては棄却する。 
判定の要旨  1401 労務の受領拒否
会社が、組合員を予備勤務とし、乗務勤務に就かせなかったのは、新就業基準に同意しない組合らを嫌悪して、精神的苦痛とともに収入の減少という経済的不利益を与え、もって組合の弱体化を企図したものと判断せざるを得ず、労働組合法第七条第一号及び第三号に該当する不当労働行為であるとされた例。

1201 支払い遅延・給付差別
会社は、深刻な経営危機を打開するため組合らに協力を求めて、新就業基準の賃金関係のうち、ベースアップの停止並びに夏季及び冬季一時金の実質的な不支給を提示したものということができ、新就業基準が、ことさら組合の組合員にのみ不利益をもたらし、組合を弱体化させる意図をもって提案されたものであると認めるに足る事情も見あたらないことから、申入れを受諾していない組合の組合員に協力一時金を支給しなかったことをもって、不当労働行為であるとは認められないとされた例。

1203 その他給与決定上の取扱い
1601 福利厚生上の差別
会社が、新就業基準に同意しないことを理由に、平成11年度住宅補助金のうち、従前からの支給を受けていた手当相当部分を組合員に支給しなかったことは、別組合員と差別して経済的不利益を与え、もって組合の弱体化を企図したものであって、労働組合法第七条第一号及び第三号に該当する不当労働行為であるとされた例。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
会社の経営が危機的状況にあって、その方向性が不透明であり、施設管理の上からも、会社が、組合事務所の貸与の決断に日時を要したことについては、やむを得ない事情があったと考えられ、別組合には事務所を貸与していたこと及び会社内に使用されていない部屋があったことを考慮しても、同年8月まで組合事務所を貸与しなかったことにつき、会社に不当労働行為があったということはできないとして、組合の申立てが棄却された例。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
2901 組合無視
組合掲示板の貸与を認めたとしても、会社にとってさほど問題が生じるとはいえず、会社が営業譲渡を断念し、経営と雇用の存続を図っていくことを組合らに表明した平成10年10月16日以降同11年8月9日までこれを貸与しなかった会社の行為は、合理的理由なく別組合と取扱いを異にするもので、労働組合法第七条第三号に該当する不当労働行為であるとされた例。

業種・規模  道路旅客運送業(バス専業) 
掲載文献  不当労働行為事件命令集118集375頁 
評釈等情報   

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