労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  神奈川県厚生農業協同組合連合会 
事件番号  神奈川地労委 平成11年(不)第13号 
申立人  神奈川県厚生農業協同組合連合会労働組合 
被申立人  神奈川県厚生農業協同組合連合会 
命令年月日  平成12年11月28日 
命令区分  全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) 
重要度   
事件概要  本件は、連合会が、(1)組合員に脱退を勧奨したこと、(2)第2 組合の結成を支援したこと、(3)「組合費天引き中止願い」を提出した組合員のチェック・オフを中止したこと、(4)組合専 従役員を誹謗中傷したり、「職員外専従制」の廃止を求めたことなどが不当労働行為であるとして申立てのあった事件で、脱退勧 奨などによる支配介入の禁止及びポストノーティスを命じた。 
命令主文  1 被申立人は、申立人組合員に対して脱退を煽り、申立人書記次長 を誹謗中傷し、あるいは第2組合づくりに関与するなどして、申立人の運営に介入してはならない。
2 被申立人は、本命令受領後、速やかに下記の文書を縦1メートル、横1.5メートルの白色木板にかい書で明瞭に墨書し、被 申立人の本所、相模原協同病院及び伊勢原協同病院の従業員出入り口付近の見やすい場所に、毀損することなく10日間掲示しな けれならない。
                 記
  当会が、貴組合員に対して組合からの脱退を煽り、貴書記次長を誹謗中傷し、あるいは第2組合づくりに関与するなどしたこ とは、労働組合法第七条第三号に該当する不当労働行為であると神奈川県地方労働委員会において認定されました。
  今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
   平成  年 月 日
 神奈川県厚生農業協同組合連合会労働組合
  執行委員長   X1   殿
                   神奈川県厚生農業協同組合連合会
                    代表理事会長    Y1 
判定の要旨  2610 職制上の地位にある者の言動
それぞれの地位を利用した婦長らによる行為ないし特定の判示部分を摘示した判決文の掲示は、判決文の説明を受け、又は判決文 を読んだ部下の看護婦らに組合脱退の意思を持たせようとするものであり、同時期に同様の態様でなされていることからして単な る偶然とは解されず、むしろ本件判決を利用して組合員を脱退させようとする会の指示ないし意向を受けてなされたものであると 見ざるを得ない。

2610 職制上の地位にある者の言動
会は、労使関係が円滑にいっていない状況下において、組合がX2書記次長を専従者として採用したことで組織が強化され、これ により一層組合との交渉が難渋するのではないかと危機感をもっていたところ、婦長らに組合費等に係る不満や組合脱退の意見が あること、組合予算に占める専従者経費の割合が高いことなどの状況があることから、これらに着目して組合を財政的に追いつめ ることを企図し、その布石として先ずX3放射線室長、婦長、X4総務課員らにチェック・オフ中止依頼書を提出させ、その後、 X4総務課員らに組合費返還要求文書を提出させ、更には矢部裁判を支援し、本件プール金のプールを開始したものであると推認 せざるを得ない。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
組合費相当額のプールという方法は、その控除自体は継続されるのであるから脱退表明者の意向に沿うものではなく、しかも、本 来、チェック・オフ協定に基づき控除された組合費は、直ちに組合に引き渡されるべきものであるところ、会は本件プール金を何 ら法的根拠に基づかずにプールし続け、本件判決が言い渡されると一方的に本人に返還しているのであり、このような会の一連の 行為は、組合を弱体化させようとする意図の下に行われたものであると言わざるを得ない。

3700 使用者の認識・嫌悪
会は、本件団交で要求された組合への回答の前に、病院運営会議及び職員説明会を急遽開催(ただし、伊勢原病院の病院運営会議 は定例)し、明確な根拠を示さないままに組合が内部告発を行い、これにより病院が潰されてしまうかもしれないなどと組合員に 告げて動揺を与え、その上で、組合と会との二者択一を迫ることにより、組合からの脱退を煽ったものである。このような会の対 応は、係争中の使用者に認められる反論の域を著しく逸脱するものであり、また、Y2事務長の本件判決に係る「憲法の上で脱退 が自由だという判決が出ました」との発言は、組合と会との二者択一を強く迫る中で、殊更に組合脱退の自由を判決の一部分と結 びつけて強調することにより、法的にも会の方が正しいと印象づけようとしたものであると言わざるを得ない。

2610 職制上の地位にある者の言動
管理職らの組合脱退に関する発言や組合費天引き中止依頼の取りまとめは、職員説明会における病院長、事務長の説明の趣旨及び 「労働組合費のチェックオフについて」と題する平成11年6月28日付け文書の趣旨と軌を一にするものと認められるのであ り、また、組合に送付された「脱会届け」は、いずれも同じ文面であることからして、これら管理職らによる一連の行為は、多数 の組合員を脱退させようとする会の企図の下、組織的になされたものであると判断する。

3700 使用者の認識・嫌悪
会による本件判決を利用しての組合脱退工作、診療報酬不正請求問題を利用しての組合脱退煽動は、組合の運営に対する支配介入 として労働組合法第七条第三号に該当する不当労働行為であると判断する。

2501 親睦団体の利用
管理職らによる一連の言動は、職員説明会における病院長及び事務長の説明の趣旨を具現化するものであり、また、伊勢原病院で は、看護部長の了解の上、「病院を守る会」が発足しており、しかも、Y3放射線室長の作成文書の内容が会によるX2書記次長 の排斥行動と軌を一にしており、更には、両病院における「病院を守る会」が同時期に発足していることからして、その発足は同 一の意思に基づくものであると推認されるところであり、加えて、Y4検査室次長の「緊急事態発令」の発言を斟酌すると、病院 運営会議が開催された当日夜に組合説明会が開催され、組合が事情を説明し、事態を沈静化させようとしたことから、会が危機感 を抱き、組合に対抗するものとして管理職らに「病院を守る会」の結成を指示し、これを受けてなされたものであると推認せざる を得ない。以上のとおりであるから、「病院を守る会」の発足には会の関与があったものと言わざるを得ない。

2500 別組合の結成・援助
Y3放射線室長の第2組合づくり準備に関する発言及び「病院を守る会」と伊勢原協同病院従業員組合への深い関与、伊勢原病院 の「病院を守る会」の文章中、「新たな会を発足」との記述、相模原病院の「病院と仲間を守る会」名義の文章中の組合に対する 批判及び第2組合への移行に関する記述、両病院における第2組合結成までの動きが同一時期であり、かつ、軌を一にしているこ とから、「病院を守る会」又は「病院と仲間を守る会」と第2組合との間にはそれぞれ連続性があり、したがって、第2組合の結 成には会の関与があったものと言わざるを得ない。

2900 非組合員の優遇
相模原協同病院労働組合が結成された直後の平成12年度の人事異動において、「病院と仲間を守る会」の発起人11名中6名が 昇進していることは、申立人組合員の昇進が実質ゼロと推認(チェック・オフ中止願いと同時に組合脱退届を提出しているものと 推認される。)されるところ、両者の間には著しく格差が認められるのであり、このことは、単なる偶然とは解されないところで ある。

2620 反組合的言動
会の一連の行為をみると、本件判決を利用して脱退工作をし、本件プール金をプールし続けた上、一方的に返還するなどして組合 の弱体化を図っていたところ、診療報酬不正請求問題が発生したことから、これを契機に一気に多数の組合員を組合から脱退さ せ、ひいては組合を崩壊させることを企図し、その一環として職員説明会において組合と会との二者択一を迫り、管理職らを通じ て組合脱退を煽動し、組合書記次長に的を絞り誹謗中傷して組合の信用を失墜せしめようとし、あるいは第2組合結成に関与した と言うべきである。これらの行為は、いずれも組合の運営に対する支配介入であり、労働組合法第七条第三号に該当する不当労働 行為であると判断する。

業種・規模  医療業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集118集254頁 
評釈等情報   

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