概要情報
事件名 |
西谷商事 |
事件番号 |
東京地労委 平成10年(不)第78号
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申立人 |
全労協全国一般東京労働組合女性ユニオン東京 |
申立人 |
全労協全国一般東京労働組合 |
被申立人 |
西谷商事株式会社 |
命令年月日 |
平成12年 3月 7日 |
命令区分 |
全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、(1)会社管理職らを通じて、組合員X1に対し、組合加入を理由として嫌がらせをしたり、本人の意に反する退職を強要・勧奨したこと、(2)組合が申し入れた同人に対する退職強要問題等に関する団体交渉に応じなかったことが争われた事件で、東京地労委は、(1)会社管理職らを通じて、組合員X1に対し、組合加入を理由として嫌がらせをしたり、本人の意に反する退職を強要することの禁止、(2)組合が申し入れた組合員X1に対する退職強要問題等を議題とする団体交渉に速やかに応じること、(3)ポスト・ノーティス及び(4)履行報告を命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人西谷商事株式会社は、部長、次長、課長および課長代理らを通じて、 組合員X1に対し、組合加入を理由として、嫌がらせをしたり、本人の意に反 する退職を強要・勧奨する言動をしてはならない。 2 被申立人会社は、申立人全労協全国一般東京労働組合および同全労協全国一 般東京労働組合女性ユニオン東京が申し入れた「組合員X1に対する退職強要、 同人への解雇予告とその撤回までの経緯および営業第1部における就労に関す る問題」を議題とする団体交渉を、申立人組合の組織関係や法適合性を問題と したり団体交渉議題が存在しないなどとして拒否してはならず、速やかに団体 交渉に応じなければならない。 3 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、55センチメートル ×80センチメートル(新聞紙2頁大)の大きさの白色木板に、下記の内容を 楷書で明瞭に墨書して、被申立人会社東京支社の従業員の見やすい場所に20 日間掲示しなければならない。 記 年 月 日 全労協全国一般東京労働組合 執行委員長 X2 殿 全労協全国一般東京労働組合女性ユニオン東京 執行委員長 X3 殿 西谷商事株式会社 代表取締役 Y1 当社が行った下記の行為は、東京都地方労働委員会において、不当労働行為 であると認定されました。今後このような行為を繰り返さないよう留意します。 記 (1) 当社の部長、次長、課長および課長代理らが、貴組合員X1氏に対し、 組合加入を理由として、嫌がらせをしたり、本人の意に反する退職を強要・ 勧奨する言動をしたこと。 (2) 貴組合員が申し入れた「組合員X1に対する退職強要、同人への解雇 予告とその撤回までの経緯および営業第1部における就労に関する問題」を 議題とする団体交渉を拒否したこと。 (注:年月日は文書を掲示した日を記載すること。) 4 被申立人会社は、前記第二項および第三項を履行したときは、速やかに当委 員会に文書で報告しなければならない。 |
判定の要旨 |
4823 上部団体
不当労働行為救済制度において、上部の組合は、下部の組合及び加盟組合の組合員の不当労働行為にかかわる問題について固有の申立権を有し、上部の組合が単独で救済申立てを行うことも、上部の組合と下部の組合とが連名で同一内容の救済申立てを行うことも可能なのであり、また、組合規約についての資格要件は、規約の文言自体が労組法第五条第二項の要件を満たしていれば足りるのであるから、二重申立てでありかつ運用の実態を理由として却下すべきであるとの主張は採用できないとされた例。
5000 具体的請求の欠除
労働委員会には、個々の事案に応じた具体的妥当な救済方法を決定する広範な裁量権が与えられているところであり、また、救済に際して、不当労働行為が成立するとされた行為と同種の行為を被申立人が将来も反復するおそれがあると判断した場合は、将来にわたる命令を発することができることも疑いないのであるから、組合の請求する救済内容の文言のみをとらえて本件申立てが不適法であると主張するのは失当であるとされた例。
2611 その他の従業員の言動
会社の管理職でない者の発言も、その内容と時期に照らして、会社の誘導によってなされたものであると認めることが相当であり、したがって、会社はその責を負わなければならないものであるとされた例。
1602 精神・生活上の不利益
会社管理職らが嫌がらせをしたり、本人の意に反する退職を強要・勧奨する言動をしたりしたことは、X1の組合加入を理由としたものであり、そのことによって、X1だけが日常的に平穏な就労を妨げられ、著しい精神的苦痛を受けているという意味において不利益な取扱いにあたるとされた例。
2220 共同交渉
上部下部の関係に立つT労組とJユニオンは、互いにX1をめぐる問題について放置することはできないと認識し、共同して解決にあたることが必要であると考え、その結果、連名で会社に団体交渉を申し入れたものであると解されるから、両組合が何らの意思疎通もなく共同で団体交渉を申し入れた場合と異なり、団体交渉権の所在を巡る混乱が生じるとは考え難く、会社に対し、重複した交渉を強いることにはならないとされた例。
2242 回答なし
2307 その他
会社が、組合の団体交渉申入書に記載されている「退職強要」の文言をとらえ、この問題に対する会社の認識を団体交渉の席上で説明することもせずに、退職強要にあたる事実は存在しないとして一方的に決めつけたうえで、協議事項は存在しないとして団体交渉を拒否したことは正当な理由のない団体交渉拒否に当たるとされた例。
2242 回答なし
2307 その他
組合は、X1の組合加入後、会社のX1に対する嫌がらせや退職強要、勧奨が執拗になされていることから、これを防止するために、団体交渉議題をより具体化し、会社に対し、実際に平穏な就労が妨げられているX1の労働条件について団体交渉を申し入れていることは明らかであるから、この点からみても会社の行った団体交渉拒否は、正当な理由のない団体交渉拒否にあたるとされた例。
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業種・規模 |
卸売業、小売業、飲食店 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集116集477頁 |
評釈等情報 |
 
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