概要情報
事件名 |
笹木運輸 |
事件番号 |
福井地労委 平成10年(不)第2号
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申立人 |
全国一般労働組合福井地方本部 |
被申立人 |
株式会社笹木運輸 |
命令年月日 |
平成12年 3月 1日 |
命令区分 |
全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、(1)脱退慫慂を行ったこと、(2)配車について差別的な取扱いをしたこと、(3)賃金支給について差別したこと、(4)夏季及び冬季一時金の支給について差別したことが争われた事件で、福井地労委は、(1)脱退慫慂により組合運営に支配介入しないこと、(2)配車について、組合員と組合員以外の運転手との間において差別しないこと、(3)平成10年2月分以降配車差別が是正されるまでの間、毎月の給与総支給額を55万円として既支給額との差額を支払うこと、(4)一時金について、組合員と組合員以外の運転手を同様に扱い、既支給額との差額を支払うこと、(5)文書手交を命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人は、その雇用する申立人組合員に対し、脱退慫慂などを行って、申 立人組合の運営に支配介入してはならない。 2 被申立人は、その雇用する申立人組合員に対し、その組合員であることを理 由として、配車について、被申立人敦賀支店の申立人組合員以外の運転手との 間において差別してはならない。 3 被申立人は、その雇用する申立人組合員に対し、平成10年2月分以降配車 差別が是正されるまでの間、毎月の給与総支給額を55万円として既支給額と の差額をを支払わなければならない。 4 被申立人は、その雇用する申立人組合員に対し、平成10年夏季一時金、冬 季一時金および平成11年夏季一時金について、被申立人敦賀支店の申立人組 合員以外の運転手と同様に扱うこととし、既支給額との差額として、X1に対 し83万円を、X1、X2、X3に対しそれぞれ53万円を支払わなければな らない。 また、被申立人は、その雇用する申立人組合員に対し、平成11年冬季以降 の一時金についても、被申立人敦賀支店の申立人組合員以外の運転手と同様に 扱わなければならない。 5 被申立人は、申立人に対し、本命令書を受領した日から1週間以内に、下記 の文書を交付しなければならない。 記 年 月 日 全国一般労働組合福井地方本部 執行委員長 X4 殿 株式会社笹木運輸 代表取締役 Y1 当社は、当社に勤務する貴組合の組合員に対し、脱退慫慂などを行い、また、 配車を減らすなどして賃金で差別し、一時金の支給についても差別したことが、 労働組合法第七条第一号および第三号に該当する不当労働行為であると福井県 地方労働委員会において認定されました。 今後このような行為を繰り返さないことを誓約します。 (注)年月日は交付の日を記載すること。 |
判定の要旨 |
2610 職制上の地位にある者の言動
(1)社長が支部組合員を自宅に呼び出すなどして、組合支部及び支部幹部に対する非難、誹謗や、支部組合員に対する不利益取扱いを示唆する発言を行ったことは、その後現実に格差としてあらわれていること、また、支部組合員2名が実際に組合を脱退したこと等が認められることから、これらの行為は脱退慫慂にあたると認めるのが相当であり、労働組合法第七条第三号に該当する支配介入である。
0123 経営干渉的行為
0205 第三者・取引先等への働きかけ
(2)組合が、敦賀セメントに対し、組合員が雇用されている別会社の仕事が確保されるように要請活動を行ったことは、これによって会社の営業活動を結果的に制約することになったとしても、同一労働組合の組合員として、別会社の組合員の雇用が危機に瀕している状況のもとでは、その苦境を救う目的のもとに万やむを得ざるものがあったと認められ、その正当性が首肯される。
1302 就業上の差別
(3)支部組合員とそれ以外の運転手の間の配車差別について、敦賀セメントからの配車を巡る東部物流との紛争を背景に、会社が申立人組合支部及びその活動を嫌悪し、同組合員であることから、それ以外の運転手と比較して差別し、もって同支部の弱体化を図ったことが認められ、労働組合法第七条第一号および第三号に該当する不当労働行為である。
1201 支払い遅延・給付差別
(4)平成10年2月以降の賃金支給について、支部組合員以外の運転手と格差が生じたことについて、会社が主張する支部組合員に無断欠勤があったとの疎明はなく、また、3月分支給の賃金について他組合とは協議が行われたが申立人組合支部とは行われず、支部組合員以外の従業員に対して平成10年1月分以前と同様の賃金が支給されていることが推認されることから、これら賃金格差に合理的な理由があると認められず、労働組合法第七条第一号及び第三号に該当する不当労働行為である。
2620 反組合的言動
(5)平成9年冬期までは一時金の支給額は皆一律であったが、平成10年夏季、冬季及び平成11年夏季の一時金は、支部組合員と他の組合とで支給額に格差が生じており、その理由について、社長が会社をつぶそうとした組合と認識している旨証言していることから、これら一時金の支給差別は、組合支部を嫌悪し、同組合員であることをもって、それ以外の運転手と比較して差別し、もって同支部の弱体化を図ったものと認められ、労働組合法第七条第一号及び第三号に該当する不当労働行為である。
4413 給与上の不利益の場合
(6)申立人は、平成10年2月分から7月分までの賃金の総支給額を55万円とし、現実支給額との差額の支払いを求めているところ、会社は、組合支部への嫌悪を主たる動機として、配車差別を継続していることから、この期間中のみならず平成10年8月分以降の賃金差別についても、救済を与えるのが相当である。
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業種・規模 |
道路貨物運送業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集116集425頁 |
評釈等情報 |
 
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