概要情報
事件名 |
友愛病院 |
事件番号 |
富山地労委 平成12年(不)第2号
|
申立人 |
全国一般労働組合富山地方本部 |
被申立人 |
医療法人社団友愛病院会 |
命令年月日 |
平成13年 9月20日 |
命令区分 |
全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) |
重要度 |
|
事件概要 |
病院会が、①組合員に対し退職強要をしたこと、②組合の病院施設の利用を拒否したこと、③組合加入に関する文書を掲示したこと、④組合活動を理由に外来診療を休止したこと、⑤組合の動向を探知のため、支部委員長の職場と組合員が出入りする診療室に盗聴器を設置したことが争われた事件で、①組合員に対する退職強要による支配介入の禁止、②合理的理由のない施設利用拒否の禁止、③組合員の組合加入を問題とする文書掲示による支配介入の禁止、④盗聴器を使用した組合動向を探知による支配介入の禁止、⑤文書掲示を命じた。 |
命令主文 |
主 文 1 被申立人医療法人社団友愛病院会は、申立人全国一般労働組合富山地方本部 新立山温泉クリニック支部組合員に対し、組合員であることを理由に退職を勧 奨して、申立人組合の運営に支配介入してはならない。 2 被申立人病院会は、申立人組合が組合活動のために、その施設の利用を求め た場合、合理的な理由なしに、これを拒否してはならない。 3 被申立人病院会は、申立人組合員の組合加盟を問題とする文書を掲示して、 申立人組合の運営に支配介入してはならない。 4 被申立人病院会は、盗聴器を使用して申立人組合の動向を探知することによ り、申立人組合の運営に支配介入してはならない。 5 被申立人病院会は、本命令書写し交付の日から1週間以内に、下記の文書を 申立人組合に手交するとともに、日本工業規格B列1番の大きさの白紙に同文 を楷書にて明瞭に記載し、被申立人病院会の友愛温泉病院(富山県婦負郡婦中 町新町2131番地)の従業員が常時出入りする入口に毀損することなく2週 間掲示しなければならない。 (手交文の大きさはA4版とし、年月日は手交する日又は掲示する日を記入 すること。) 記 平成 年 月 日 全国一般労働組合富山地方本部 執行委員長 X1 殿 医療法人社団友愛病院会 理事長 Y1 当病院会が行った次の行為は、富山県地方労働委員会において労働組合法第 7条第3号に該当する不当労働行為であると認定されましたので、今後このよ うな行為を繰り返さないようにします。 1 平成12年2月2日、貴組合の組合員に対して、組合員であることを理 由に退職勧奨したこと。 2 平成12年2月4日、貴組合からの施設利用の申入れを合理的な理由な く拒否したこと。 3 平成12年2月5日、貴組合への加盟を問題とする文書を掲示したこと 。 4 平成12年3月31日、貴組合と十分に協議することなく、新立山温泉 クリニックの外来業務を休止したこと。 5 平成12年10月19日及び同年11月16日に貴組合により発見され た盗聴器を使用して、貴組合の動向を探知していたこと。 |
判定の要旨 |
2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
理事長らが組合員らに対し、「病院に組合というのはおかしい」等として退職を求めた発言は、病院会が組合を嫌悪してなされたものと認められ、支配介入に当たるとされた例。
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
使用者は組合の求めるままに便宜を供する義務を負うものではないが、病院会は、会合のための施設利用は認めていきたいと回答していたこと、また、従前どおりの利用申請であり、組合の最小限の要求であったことが認められることからすると、病院会が合理的な理由を示すことなく組合の施設利用を拒否したことは、組合活動を阻害する支配介入であるとされた例。
2620 反組合的言動
「診療所への出入りに院長の許可を得ること」等との文書掲示をすることは、施設所有者には施設管理権があることから、医療施設の管理上是認されることと認められ、支配介入に当たるとはいえないが、「組合に加入しないからといって解雇・不利な取扱いはいたしません」との文書は、病院会が組合とのユニオンショップ協定の締結を拒否していたこと、また、クリニック職員で組合に加入していない一般職員は1名であったことからすると、通告の対象は事実上組合員であって、一般職員に対する呼びかけであったとは認められないことから、組合に加入している者に対して牽制する意図で行われたもので、組合運営に対する支配介入であるとされた例。
3105 事業廃止、工場移転・売却
病院会が組合に何ら協議することなくクリニックの休止を発表し、外来診療を休止したことは、クリニックが赤字であるという面を考慮しても、組合排除、組合の弱体化を目的として行われたものと認められ、支配介入に当たるとされた例。
3100 スパイ
病院会が盗聴器を使用して組合活動を監視あるいは探知したことは、手段として極めて過剰であり、余程の事情が認められない限り私人である使用者の行為として是認する余地はなく、支配介入に当たるとされた例。
|
業種・規模 |
医療業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集121集171頁 |
評釈等情報 |
 
|