概要情報
事件名 |
網中 |
事件番号 |
福岡地労委 平成12年(不)第12号
|
申立人 |
福岡地区合同労働組合 |
被申立人 |
株式会社網中 |
被申立人 |
Y2 |
命令年月日 |
平成14年12月20日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) |
重要度 |
|
事件概要 |
会社が、(1)組合に加入した組合員X2にフォークリフトの運転等の仕事をさせないようになり、その後取締役経理本部長Y2を威嚇したこと等を理由にX2を解雇したこと、(2)X2の労働条件等について組合と調印した確認書を氏名の誤記を理由として反故にしようとし、団体交渉においても協議を尽くさなかったこと、(3)取締役経理本部長が組合をことさら無視する発言を行い、X2及び組合に対して損害賠償請求訴訟を提起したことが不当労働行為であるとして申立てのあった事件で、地労委は、(1)X2に対する解雇撤回、原職復帰、(2)X2に対するバックペイ、(3)確認書記載事項に関する団体交渉への誠実な応諾を命じ、会社に対するその余の申立ては棄却し、取締役経理本部長に対する申立ては却下した。 |
命令主文 |
1 被申立人株式会社網中は、申立人X2に対する平成12年9月27日付解雇を撤回し、原職に復帰させなければならない。 2 被申立人株式会社網中は、申立人X2に対し、平成12年9月28日から原職に復帰するまでの間に同人の解雇がなければられたであろう賃金相当額(仮処分決定により支払った金員を差引く。)を支払わなければならない。 3 被申立人株式会社網中は、申立人福岡地区合同労働組合が申し入れる平成12年9月11日付確認書記載事項に関する団体交渉に、誠実に応じなければならない。 4 被申立人株式会社網中に対するその余の申立てを棄却する。 5 被申立人Y2に対する申立てを却下する。 |
判定の要旨 |
4905 経営補助者
不当労働行為の行政救済制度は、組合活動に損害を与えた者に対し個別に責任追求することを目的とするものではなく、Y2本部長本人に対して不当労働行為の責任追及をなすことは同制度の予定するところではないから、Y2本部長を被申立人とする申立ては却下。
1302 就業上の差別
X2に対する紙の断裁及びフォークリフト作業からの仕事外しは比較的短期間になされたに過ぎず、組合がX2の裁断及びフォークリフト作業に関わる要求を行ったことから、会社が争点となっている作業からX2をいったん引き離して事態に対処しようと考えたとしてもそれ自体無理からぬものであること、X2の被った現実の不利益はさほど重大なものとは認められないことから、X2に対する仕事外しは不当労働行為には当たらないとされた例。
0600 暴力行為
0700 職場規律違反
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
Y2本部長とX2との間に何らかの感情的ないさかいがあったことは認められるが、会社が主張するほどの暴行脅迫をX2が行ったとの事実は認められず、X2の上司に対する反抗的態度があったとしても、懲戒解雇理由としては不十分であり、また、X2が会社の事情聴取を拒否した言動が就業規則の懲戒解雇理由に該当するとまでは言えないこと、さらに、組合との団交における会社の態度等を併せ考えると、本件解雇は、反組合的意思を持ち会社内で組合の影響力を除去しようとしたもので、労組法7条1号及び3号の不当労働行為とされた例。
2249 その他使用者の態度
X2の労働条件等について調印した確認書をX2の苗字が誤記されていたことの一事を理由に、確認事項の確認を拒否したことは、交渉結果を誤記にかこつけて無に帰せしめようとする意図によるものであって、団体交渉を軽視する労組法7条2号に該当する不当労働行為とされた例。
2250 未妥結・打切り・決裂
9月26日の組合と会社の話合いについて、会社は協議であった旨主張するが、労使の交渉委員、交渉事項からみると団体交渉にほかならず、その中で会社は真摯に話し合うことなく、突如X2の懲戒解雇を告げて交渉を終了させていること等からすれば、会社の当日の態度は団体交渉に誠実に応じたとは言い難いとされた例。
2610 職制上の地位にある者の言動
何人も民事事件において裁判所に訴えを起こす権利は否定されず、会社役員であるY2本部長がX2及び組合の行為により精神的損害を被ったとして不法行為に基づく損害賠償の訴えを提起することもまた権利の行使として尊重され、労働委員会が公的判断をもってこれを制限することは慎重であるべきであり、また、Y2本部長が訴えを提起することの原因となった事実自体は否定できず、本件訴訟の提起を不当労働行為ということはできないとされた例。
4407 バックペイの支払い方法
解雇されたX2に対するバックペイは、同人の得べかりし賃金相当額から仮処分によって支給された金額を控除するのが相当とされた例
|
業種・規模 |
卸売業、小売業、飲食店 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集124集553頁 |
評釈等情報 |
 
|