労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  中央自動車教習所 
事件番号  石川地労委 平成13年(不)第3号 
申立人  全国一般労働組合石川地方本部 
被申立人  株式会社中央自動車教習所 
命令年月日  平成14年12月 3日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  会社が、(1)春季賃金改定要求等についての組合との団体交渉に誠意をもって応じなかったこと、(2)組合との協議を行わず労働協約を一方的に解約したこと、(3)新就業規則を一方的に実施して就業時間不就労等を理由に組合員に対し賃金カット等を行ったこと、(4)組合員の組合活動を誹謗中傷したり組合員に対して脱退慫慂を行ったりして組合の運営に支配介入したことが争われた事件で、(1)春季賃金改定要求事項についての誠実団体交渉応諾、(2)労働協約解約通告の撤回、(3)組合員の就業時間不就労に係る賃金カットの撤回及びバック・ペイ、(4)時間外労働手当の再計算及びバック・ペイ、(5)ストライキ実施時の賃金カット分の差額のバック・ペイ、(6)組合活動を誹謗中傷すること等による支配介入の禁止、(7)文書掲示及び文書手交、(8)履行報告を命じ、その余の申立ては棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人の平成13年2月28日付け要求書における春季賃金改
 定要求事項について、「冬時間制」及び査定給の導入に固執することなく、回
 答の根拠となる資料を提示のうえ、具体的かつ十分な説明を行うなどして、速
 やかに誠意をもって団体交渉を行わなければならない。
2 被申立人は、申立人に対して平成13年7月2日付け「労働協約一部破棄通
 告書」及び同年9月20日付け「労働協約全部解約通告書」による、労働協約
 の解約の各通告を撤回しなければならない。
3 被申立人は、申立人組合員X2ら19名に対して行った就業時間不就労に係
 る賃金カット(平成13年10月分、11月分、12月分、同14年1月分及
 び4月分)を撤回し、同人らに対して上記賃金カット相当分として、別表(I)
 に掲げる金額及びこれに対する各控除日の翌日から支払済まで年率5分を乗じ
 た額を支払わなければならない。ただし、支払に際しては、賃金カットを受け
 たそれぞれの労働日の朝の就労について、同人らに新就業規則等に基づき支給
 されている時間外労働手当を控除したうえで、差額分について行わなければな
 らない。
4 被申立人は、申立人組合員の時間外労働手当ての支給に際して、新就業規則
 等を適用して2割5分の乗率で計算した部分を、労働協約に定める3割の乗率
 で計算し直したうえで、その差額分及びこれに対する各支払日の翌日から支払
 済まで年率5分を乗じた額を当該組合員に支給しなければならない。ただし、
 上記差額分の支給に当たっては、所定内賃金を算定基礎としたうえで行わなけ
 ればならない。
5 被申立人は、申立人組合員に対し、平成13年9月分及び10月分の賃金支
 給の際の、ストライキ実施時の賃金カット分のうち、通勤手当を除く所定内賃
 金と基本給との差額として、別表(II)に掲げる金額及びこれに対する各控
 除日の翌日から支払済まで年率5分を乗じた額を支払わなければならない。
6 被申立人は、朝礼の場等で、組合活動を非難、誹謗中傷したり、また、組合
 集会のための指導員室等の使用及び組合オルグに対する会社構内への立入りを
 禁止するなどして、組合活動に制限を加え、組合の運営に介入してはならない。
7 被申立人は、本命令書(写)受領後速やかに、下記文書を申立人に手交する
 とともに、縦1.5メートル・横1メートルの大きさの白紙に、楷書で明瞭に
 記載して、被申立人中央自動車学校指導員室の従業員の見やすい場所に、10
 日間棄損することなく掲示しなければならない(文書に記載する日付は、被申
 立人が申立人に対して本文書を手交・掲示した日とすること)。
                 記
                              年 月 日
  全国一般労働組合石川地方本部
   執行委員長  X1  様
                    株式会社中央自動車教習所
                     代表取締役  Y1
   当社が貴組合に対して行った下記の行為は、石川県地方労働委員会におい
  て労働組合法第七条に該当する不当労働行為であると認定されました。
   今後このような行為を行わないようにします。
                 記
 1 平成13年2月28日付けで貴組合から申し入れのあった平成13年春季
  賃金改定要求に対して、7ヶ月もの間、回答を先延ばしたうえ、団体交渉を
  尽くさないまま賃金を改定し、かつ、10月実施を強行したこと。
 2 貴組合に対して平成13年7月2日付け「労働協約一部破棄通告書」及び
  同年9月20日付け「労働協約全部解約通告書」により、団体交渉を尽くさ
  ないまま、一方的に労働協約を解約したこと。
 3 貴組合員が隔日で9限及び10限に就労しなかったことに対して、平成1
  3年10月3日以降、新就業規則等を適用して賃金カットを行ったこと。
 4 貴組合員の時間外労働手当について、平成13年10月3日以降、割増率
  を労働協約に定められた3割によらずに新就業規則等を適用して2割5分と
  して支給を行ったこと。
 5 貴組合が平成13年9月及び10月に行ったストライキに対する賃金カッ
  トの対象について、団体交渉を尽くさないまま従来の基本給から通勤手当を
  除く所定内賃金に変更したこと。
 6 貴組合の活動に対して、平成13年9月のストライキ以降、会社施設の使
  用を制限したこと並びに同年9月6日及び10月19日の朝礼の場等で貴組
  合を非難、誹謗中傷したことなど、貴組合の運営に支配介入を行ったこと。
8 被申立人は、前各項(ただし、第6項を除く。)を履行したときは、当委員
 会に対して、速やかに文書で報告しなければならない。
9 申立人のその余の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  2245 引き延ばし
2251 一方的決定・実施
2300 賃金・労働時間
会社が春季賃金改定において、形式的には16回の団体交渉を重ねてきたものの、7か月もの間、回答を先延ばしたうえ、一方的に賃金を改定し、かつ、10月実施としてこれを強行したことは、誠意をもって交渉したものとはいいがたく、団体交渉拒否の不当労働行為であるとされた例。

3103 労働協約締結をめぐる行為
冬時間制の内容が従業員中指導員のみに適用されるもので分会員が指導員のみで構成されていたこと、労使慣行の破棄が労働協約に規定された労使協議を無視したまま冬時間制を実施する目的で行われたこと等を勘案すると、会社が行った労働協約一部破棄通告は、組合の存在を軽視し弱体化を図った行為であり、支配介入の不当労働行為であるとされた例。

2305 労働協約との関係
3103 労働協約締結をめぐる行為
労働協約の全部解約という重大な内容をわずか2週間あまりの期間で実施しようとした会社の行為は理解しがたいものであり、当時組合が春闘要求などを掲げてストライキを実施していたことを勘案すれば、会社が行った労働協約の全部解約は、組合軽視であることはもとより、ストライキ等を行った組合への報復措置としてなされたものであり、組合との交渉のなかで問題を解決していこうとする姿勢が全く欠如しているのであって、団体交渉拒否及び支配介入の不当労働行為であるとされた例。

3103 労働協約締結をめぐる行為
労働協約の一部破棄通告については不当労働行為であるから、会社が賃金カットの対象とした時間帯については労使慣行上は勤務時間外であるので、元来就労の義務はなく、就業時間不就労として行われた賃金カットは組合の存在を軽視し弱体化を図った行為であり、支配介入の不当労働行為であるとされた例。

3103 労働協約締結をめぐる行為
労働協約の全部解約は不当労働行為であるので、会社が割増率を労働協約に定められた3割によらずに新就業規則等を適用して2割5分として時間外労働手当の支給を行ったことも、組合軽視であることはもとより、ストライキ等を行った組合への報復措置としてなされたものであり、支配介入の不当労働行為であるとされた例。

1204 スト・カット
2901 組合無視
ストライキの賃金カットの対象変更については、会社としてもそのことが長年労使慣行として行われ、組合員に不利益をもたらすものであることを認識していながら、組合との話合いを十分にしないまま一方的に自己の考えを強行したものであり、会社の姿勢には著しい組合軽視の念が認められ、会社がストライキを実施する組合員を特に不利益に取り扱おうとする頑な強い意思をもって臨んだことが認められ、不利益取扱い及び支配介入の不当労働行為であるとされた例。

3020 組合活動への制約
会社は組合の活動に対し従来より会社施設の利用を認めていたにもかかわらず、時限ストライキが実施されるや組合の施設利用を事前の届出によるものとし、わずか2か月後に突如組合の利用を全面的に禁止し、組合オルグの施設立入りも禁止したことは、組合のストライキを嫌悪し、その報復的措置として組合活動に制約を加えることを目的とした支配介入の不当労働行為であるとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
春闘交渉が長期化するなかで組合の抗議行動が活発化し、新就業規則等の実施を巡って労使関係が極度に緊迫していた状況を勘案すれば、社長や校長が非組合員を含む全指導員を前にして公然と組合批判を行ったことは、組合員を誹謗し組合軽視の姿勢をあらわにしたものであり、ひいては組合員を威嚇し動揺させ萎縮させるものと認められることから、支配介入の不当労働行為であるとされた例。

2621 個別的示唆・説得・非難等
組合は会社が組合員への脱退慫慂を行ったと主張するが、組合の提出した書証等によっては未だ脱退慫慂の具体的事実が存在したと認めることはできず、不当労働行為とは認められないとされた例。

業種・規模  教育(自動車教習所を含む) 
掲載文献  不当労働行為事件命令集124集379頁 
評釈等情報   

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