概要情報
事件名 |
睦機工 |
事件番号 |
東京地労委 平成12年(不)第123号
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申立人 |
全労協全国一般東京労働組合 |
被申立人 |
株式会社 睦機工 |
命令年月日 |
平成14年 7月16日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、(1)組合員2名の解雇問題、会社解散に係る問題等をめぐる団交について、組合規約・組合員名簿不提出等を理由に拒否したこと、(2)損害賠償や刑事告訴等を匂わせたり、業務妨害の禁止等を求めて裁判所へ申立てをしたこと、(3)会社指定休日に組合員に仕事の配分を拒絶したこと、(4)ストライキを行ったことを理由に組合員2名を出勤停止処分、懲戒解雇処分にしたことが不当労働行為であるとして争われた事件で、東京地労委は、(1)解雇問題等に関する誠実団交応諾、(2)組合員2名の出勤停止処分、懲戒解雇がなかったものとしての取扱い及び懲戒処分等によって減額された賃金相当分の支払い、(3)文書交付を命じ、その余の申立ては棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人株式会社睦機工は、申立人全労協全国一般東京労働組合が(1)申 立人組合の組合員X1及びX2の解雇問題、(2)深夜労働手当・休日労働手 当・時間外手当等の未払い問題、(3)会社の解散に係る問題に関する団体交 渉を申し入れたときは、会社の交渉窓口である代理人あての申入れでないこと や組合規約・組合員名簿の提出がないことを理由に拒否してはならず、就業規 則、賃金・休暇に関する規程、タイムカード・就業時間を記載した書面等の資 料を提示し、それらについての具体的な説明をするなどして、誠実に交渉しな ければならない。 2 被申立人会社は、(1)申立人組合の組合員X3に対する平成13年7月2 7日付出勤停止処分及びX4に対する同月28日付懲戒解雇処分をなかったも のとして取り扱い、(2)上記出勤停止処分及び懲戒解雇処分並びに特定日導 入等によって減額された賃金に相当する額として、X3に対し金276,97 5円を、X4に対し金439,000円を支払わなければならない。 3 被申立人会社は、本命令受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立 人組合に交付しなければならない。
記
平成 年 月 日 全労協全国一般東京労働組合 執行委員長 X5 殿
株式会社 睦機工 清算人 Y1
当社が貴組合から提出された団体交渉申入書等の文書を受理せず、組合規約 及び組合員名簿の提出を前提条件とするなどして団体交渉に応じなかったこと 、貴組合の組合員に対して特定日や待機業務等において差別取扱いを行ったこ と、平成13年7月27日付で貴組合員X3氏らを出勤停止処分としたこと、 及び同月28日付で同X4氏を懲戒解雇処分としたことは、東京都地方労働委 員会においていずれも不当労働行為であると認定されました。今後、このよう な行為を繰り返さないよう留意します。 (注:年月日は文書を交付した日を記載すること。) 4 被申立人会社は、第2項及び第3項を履行したときは、速やかに当委員会に 文書で報告しなければならない。 5 その余の申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
2123 その他交渉出席者
2234 団交の場以外での違法・不当行為
会社が団体交渉担当者として代理人弁護士を選任したとしても、会社が交渉当事者であることに変わりがないこと、組合の会社への「直接交渉」が会社に損害を与えたとも認められないこと、組合が会社の元請業者に示威行為を行い、会社の営業を妨害したとも認められないこと等から、組合との団体交渉に応じない理由には正当性が認められないとして、会社の対応は団体交渉拒否に当たるとされた例。
2901 組合無視
団体交渉は開けないとの取締役の発言及び代理人弁護士が団体交渉申入書を受け取らなかったこと等からすれば、会社には組合を交渉相手とする意思がなかったものと推認されること、更に、組合の要求した労働条件に係る問題に関し、会社が組合を通さずに直接従業員に提案を持ちかけていたことを考え併せれば、会社のこれら対応は組合の存在を殊更に無視するものであり、会社が組合から提出された団体交渉申入書等の文書を一切受理せず、組合規約及び組合員名簿の提出を前提条件とするなどして団体交渉に応じなかったことは、組合活動を弱体化した支配介入に当たるとされた例。
2620 反組合的言動
組合の活動に対し自らの意見を表明することは、使用者にも許されることから、会社として、組合の活動が損害賠償や刑事事件に該当するものと考え、その旨文書で警告しても、本件「警告書」の表現をもって、文書の記載自体が支配介入に当たらないとされた例。
3106 その他の行為
組合は、会社の裁判所に対する申立てや提訴が虚偽の事実で構成され、組合活動を断念させることを目的とした濫訴であるとしているが、取引先に対する要請や会社役員の自宅訪問等の行為は現に行っており、会社の提訴等が、全く虚偽の事実に基づくとまではいい切れず、一概に組合活動に打撃を与えようとする濫訴であると認められないことから、支配介入に当たらないとされた例。
1302 就業上の差別
2900 非組合員の優遇
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
会社の特定日(会社が指定する休日)導入は、労働基準監督署への申告等により組合及び組合員を嫌悪した会社が、組合の休日及び有給休暇に関する要求を逆手にとって、報復的な意図も込めて行ったものであり、特定日導入に併せて、会社は、組合員を押さえつけ、組合を弱体化させるため、非組合員には特定日に仕事を配分し賃金を支払う一方、組合員は特定日を出勤扱いとせず、賃金を支給しないなど、特定日の運用において組合員を差別的に取り扱い、待機業務を命ずるなどして、賃金支給における不利益を与え、職場の処遇においても差別的に取扱ったもので、不当労働行為に当たるとされた例。
1604 その他
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
会社が、組合書記長と取引先のM建設の主任とのやり取りを問題としたのは、組合嫌悪の意思に基づくものであるとともに、組合書記長として活発な組合活動を行っている同人を特に会社が嫌悪し、組合がM建設へ会社への指導を要請する前日に、組合書記長の当該行為を捉えて、これを理由に処分を行い不利益を与えようとしたもので、不当労働行為に当たるとされた例。
4503 他の救済との関係で団交の必要性を認めなかった例
組合が団体交渉議題とする11項目の要求のうち、労働条件に係る交渉事項については、誠実に団体交渉に応じる必要があるが、「特定日による不利益分を支払うこと」及び「組合員に対する懲戒解雇処分を撤回すること」については、これを救済として命じていることから、団体交渉議題として命じることは相当でないとされた例。
4400 原職相当職への復帰を命じたもの
4411 配転・転勤・出勤停止・下車勤等の場合
4415 賃金是正を命じた例
組合員に対する出勤停止処分及び懲戒解雇処分については、処分がなかったものとし、同処分によって減額された賃金相当額及び特定日が導入された月以降の特定日・待機業務等によって減額された賃金相当額を支払うように命じるのが相当であるとされた例。
4415 賃金是正を命じた例
会社が特定日を導入した後の3か月間には、会社による特定日や待機業務等の不利益取扱いがあったものの、組合員らも会社に対抗してストライキや有給休暇の取得を行っていたことから、不利益取扱いにより減額された賃金に相当する金額は、特定日が導入される直近3か月の平均賃金を算出し、その平均額に、会社の特定日及び出勤停止処分又は懲戒解雇処分により組合員らが出勤できなかった日数を乗じた額にするのが相当であるとされた例。
5123 審査中の組合脱退・退職等の取扱い
組合は、組合員X6に関する「強制的休業及び休日出勤拒否、通常勤務拒否により発生した不利益金額を支払うこと」等を求めていたが、同人は本件結審時には組合を脱退しており、組合は最終陳述書において同人に関し何ら主張していないことから、同人に対する救済を命じる必要は認められないとされた例。
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業種・規模 |
建設業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集123集313頁 |
評釈等情報 |
 
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