概要情報
事件名 |
尾道諸品物流センター |
事件番号 |
大阪地労委 平成11年(不)第79号
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申立人 |
全日本港湾労働組合関西地方中国支部 |
被申立人 |
尾道諸品物流センター |
命令年月日 |
平成14年 7月 9日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、(1)運行手当等を一方的に改定したこと、(2)支部共済会分担金等の支払いを拒否したこと、(3)会社の親善行事から分会員を除外したこと、(4)分会員に対し退職勧奨及び配車差別をしたこと、(5)団体交渉に組合の部会長が出席しないよう申し入れたことがそれぞれ不当労働行為であるとして争われた事件で、会社に対し、(1)平成11年5月及び同12年5月に実施した運行手当等の改定等がなかったものとして取り扱うこと及びバックペイ並びに支部共済会分担金の支払停止分の支払、(2)運行手当等の改定等に係る団体交渉において誠実に協議すること、(3)配車差別の禁止及びバックペイ並びに親善行事に関して組合分会員を他の従業員と差別することなく取り扱うこと、(4)文書手交を命じ、その余の申立ては棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人は、申立人及び申立人尾道諸品分会員に対し、(1)平成11年5 月に実施した長距離運行を行う際の運行手当等の改定、(2)同12年5月に 実施した長距離運行を行う際の運行手当等の改定等、がなかったものとして取 り扱うとともに、申立人尾道諸品分会員に対し、これら改定等について命令交 付日を終期として、これら改定等がなかったならば得られたであろう賃金相当 額を支払わなければならない。 また、被申立人は、申立人に対し、平成10年度以降の全日本港湾労働組合 関西地方大阪支部の支部共済会分担金の支払停止分を支払わなければならない 。 2 被申立人は、(1)平成11年5月に実施した長距離運行を行う際の運行手 当等の改定、(2)同12年5月に実施した長距離運行を行う際の運行手当等 の改定等について、申立人と団体交渉において誠実に協議しなければならない 。 3 被申立人は、各種貨物自動車を用いた運送業務への従業員の振り分けに関し て、申立人尾道諸品分会員を同分会員以外の従業員と差別することなく取り扱 うとともに、同分会員に対し、分会員と別組合員のそれぞれの平均値を考慮す るなどして、差別することなく振り分けたならば得られたであろう賃金相当額 を支払わなければならない。 また、被申立人は、顧客企業とのソフトボール大会及び懇親会への参加に関 して、申立人尾道諸品分会員を同分会員以外の従業員と差別することなく取り 扱わなければならない。 4 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない 。 記 年 月 日 全日本港湾労働組合関西地方中国支部 代表者 支部執行委員長 X1 殿
尾道諸品物流センター株式会社 代表取締役 Y1
当社が行った下記の行為は、大阪府地方労働委員会において、労働組合法第 七条第一号、第二号及び第三号に該当する不当労働行為であると認められまし た。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 (1)平成11年5月に長距離運行を行う際の運行手当等の改定について、団体 交渉に誠実に応じないまま一方的に実施したこと。 (2)平成12年5月に実施した長距離運行を行う際の運行手当等の改定等につ いて、団体交渉に誠実に応じないまま一方的に実施したこと。 (3)平成10年度以降、全日本港湾労働組合関西地方大阪支部の支部共済会分 担金のうち1か月分につき、団体交渉に誠実に応じないまま一方的にその支 払を停止したこと。 (4)全日本港湾労働組合関西地方大阪支部の平成10年ないし12年分の安全 衛生分担金の支払につき、団体交渉に誠実に応じないまま一方的に遅延させ たこと。 (5)各種貨物自動車を用いた運送業務への従業員の振り分け並びに顧客企業と のソフトボール大会及び懇親会への参加に関して、貴組合尾道諸品分会員を 差別的に取り扱ったこと。 (6)貴組合X1中国支部執行委員長が団体交渉に同席しないよう文書で申し入 れたこと。 5 申立人のその他の申立ては棄却する。 |
判定の要旨 |
2240 説明・説得の程度
会社は平成11年の運行手当等の改定に関して1回団交に応じたのみで、同11年7月5日以降組合からの団交申し入れに応諾しておらず、こうした会社の行為は、誠実な団交態度とはいえないばかりか正当な理由なく団交を拒否するものであり、労組法第七条第二号に該当する不当労働行為であるとされた例
2700 威嚇・暴力行為
2901 組合無視
平成11年の運行手当等の改定に係る会社の行為は、別組合との間で合意した内容を、長距離運行には分会員を従事させないとの威嚇を伴いつつ、組合に対して正当な理由なく一方的に押し付けるものであって、これはその存在を無視し、自主性を否定することによって組合の弱体化を企図した支配介入に当たるというべきで、労組法第七条第三号に該当する不当労働行為であるとされた例
2251 一方的決定・実施
2901 組合無視
2902 労組法7条2号(団交拒否)と競合
会社は平成12年の運行手当等の改定に至る経過において、事前協議を申し入れてはいるものの、別組合と妥結した内容で実施したいとのみ述べ、同改定を実施しており、組合と十分な協議もなく、一方的に同改定を実施したと判断せざるを得ず、会社の行為は誠実な団交とはいえず、また、組合の弱体化を企図した支配介入に当たり、労組法第七条第二号及び第三号に該当する不当労働行為であるとされた例
1302 就業上の差別
2901 組合無視
分会員に対して普通車の長距離運行乗務及びタンクローリー車への乗務を差別的に取り扱ったことは、会社が分会員を不利益に取り扱い、もって組合の弱体化を企図した支配介入といわざるを得ず、労組法第七条第一号及び第三号に該当する不当労働行為であるとされた例
1601 福利厚生上の差別
2901 組合無視
会社が平成10年以降の親善行事に分会員を参加させなかった行為は、分会員を分会員であるがゆえに不利益に取り扱うとともに、組合に所属すれば不利益を被る恐れがあることを分会員を含む従業員に知らしめることにより、組合の弱体化を企図した支配介入であって、労組法第七条第一号及び第三号に該当する不当労働行為であるとされた例
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
安全衛生分担金及び支部共済会分担金について、会社は事前協議や組合との合意もなく支払を停止しており、かかる会社の行為は、組合を敵視し、経済的不利益を与えることを企図したものとみることができ、組合に対する支配介入に当たるというべきで、労組法第七条第三号に該当する不当労働行為であるとされた例
2306 便宜供与
会社は、平成11年7月5日以降、分担金等の支払に関する組合からの団交申入れに応諾しておらず、当該申入れに応じないことに特別な理由も見当たらないことから、会社の対応は正当な理由のない団交拒否に当たり、労組法第七条第二号に該当する不当労働行為であるとされた例
2620 反組合的言動
会社が組合に対して、今後団交にX1部会長が同席しないよう文書により申入れたことは、組合側団交出席者の人選干渉に当たるだけでなく、団交にX1部会長を同席させないことにより、会社に有利に交渉を進めることを企図したものと判断せざるを得ないのであって、こうした会社の行為は組合に対する支配介入に当たり、労組法第七条第三号に該当する不当労働行為であるとされた例
2620 反組合的言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
Y1社長がX2分会長に対し、「お前ら、やめる気はないか」と述べたことが認められるが、これ以外に組合からX2分会長らに対する退職勧奨というべき事例についての疎明はなく、Y1社長の発言も、その状況から考えて事件の申立ての取下げを求めたものとみるのが自然であって、同分会長に対する退職勧奨を企図した発言とみることはできず、不当労働行為にはあたらないとされた例
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業種・規模 |
道路貨物運送業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集123集245頁 |
評釈等情報 |
 
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