事件名 |
南海観光バス |
事件番号 |
中労委 平成12年(不再)第64号
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再審査申立人 |
全日本建設交運一般労働組合関西支部(平成13年第2
号) |
再審査申立人 |
南海観光バス(平成12年第64号) |
再審査被申立人 |
全日本建設交運一般労働組合関西支部(平成12年第64
号) |
再審査被申立人 |
南海観光バス(平成13年第2号) |
命令年月日 |
平成14年 4月 3日 |
命令区分 |
一部変更(初審命令を一部取消し) |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、(1)平成10年12月1日施行の新就業基準に同意しな
かった組合の組合員である運転手に対して、〈1〉予備勤務扱いとしたこと、〈2〉平成10年度冬季一時金或いは協力一時金を
支払わなかったこと、〈3〉平成11年度住宅補助金を支払わなかったこと、及び(2)別組合に貸与している事務所及び掲示板
を組合には貸与しなかったことがそれぞれ不当労働行為に当たるとして大阪地労委に申立てのあった事件で、同地労委は、〈1〉
予備勤務に伴う減収分(年率5分の加算金)の支払、〈2〉住宅補助金の従前の金額(年率5分の加算金)の支払、〈3〉予備勤
務扱い、住宅補助金の不払い、掲示板を貸与しなかったことについての文書手交、を命じ、その余の申立てを棄却したところ、会
社及び組合はこれを不服として再審査を申し立て、中労委は、初審命令の一部を変更し、その余の申立を棄却した。 |
命令主文 |
I 初審命令主文第1項を次のとおり変更する。
1 南海観光バス株式会社は、平成10年12月1日から平成11年5月31日までの間の予備勤務に伴う減収分として、全日
本建設交運一般労働組合関西支部の組合員であるX1、X2、X3及びX4に対し、別表により計算した金額及びこれに年率5分
を乗じた金額を支払わなければならない。
II 初審命令主文第2項を取り消し、第3項を第2項とする。
III 前記IIで改めた初審命令主文第2項中「被申立人」を「南海観光バス株式会社」に、「申立人」を「全日本建設交運一
般労働組合関西支部」に、「大阪府地方労働委員会」を「中央労働委員会」にそれぞれ改め、、手交文書の(2)を削り、(3)
を(2)とする。
IV 初審命令主文第4項を第3項とする。
V その余の本件各再審査申立を棄却する。 |
判定の要旨 |
1302 就業上の差別
2901 組合無視
4407 バックペイの支払い方法
4614 文書手交のみを命じた例
会社が、運転手である組合員を予備勤務とし続けた行為は、会社が会社再建のための新就業基準に同意しない組合を嫌悪し、組
合員に経済的な損失を与える為に行った不利益取扱いであり、組合を弱体化させる行為といわざるを得ず、労働組合法第七条第一
号及び第三号に該当する不当労働行為に当たるとした初審判断は相当であるとされた例。
3604 労働者に落度がある場合
4406 バックペイに利子・付加金を付したもの
4407 バックペイの支払い方法
(1)救済期間 平成11年5月25日、組合らは、組合員が同意書の提出により乗務勤務に就くことに同意する旨の確認書を会
社に提出しながら、組合員が同意書を提出したのは同年6月28日であり、同意書の提出を待って常務勤務させようとした会社の
対応はこの限りで非があるとは言えず、その責任は組合ないし組合員にあると言うべきであり減収が補填されるべき期間は確認書
と同意書が同時に提出されておれば乗務勤務できたであろう平成11年6月1日の前日までとした初審判断は相当であるとされた
例。(2)救済額 寸志・紹介料が賃金と同様の機能を果たしていたものと考えるのが相当であり、寸志・紹介料相当額を会社に
支給させることによって初めて救済の実を挙げうるのであり、同相当額の支払いを命じることが労働委員会の裁量の範囲に属する
ものとされた例。
1201 支払い遅延・給付差別
一時金及び住宅補助金は新就業基準の受諾を条件として支給されるものであり、新就業基準を受諾していない組合の組合員にこ
れらを支給しなかったことをもって不当労働行為とは認められないとし、住宅補助金の支払(年率5分の加算金)を命じた初審命
令主文第2項及び同第3項の手交文中の住宅補助金に係る部分は取消さざるを得ないとされた例。
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
2900 非組合員の優遇
4614 文書手交のみを命じた例
会社運営の先行きは未だ不透明であり、会社施設の明け渡しの問題が生じることなどを考慮し、会社が組合事務所の貸与につい
て慎重に対処したことについてやむを得ない理由があったというべきであり、別組合には事務所を貸与していたことなどを考慮し
たとしても不当労働行為があったと言うことはできず、この点について組合の申立てを棄却した初審判断は相当であるとされた
例。
組合掲示板については、貸与を認めたとしても会社にとってさほどの問題が生じるとは言えず、貸与しなかった会社の行為は合
理的理由なく別組合と取扱いを異にするもので、労働組合法第七条第三号に該当する不当労働行為であるとした初審判断は相当で
あるとされた例。
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業種・規模 |
道路旅客運送業(バス専業) |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集122集945頁 |
評釈等情報 |
中央労働時報 2002年7月10日 1000号 24頁
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