労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件名  京浜特殊印刷 
事件番号  神奈川地労委 平成12年(不)第4号 
申立人  全国印刷出版産業労働組合総連合会神奈川地方連合会 
申立人  全国印刷出版産業労働組合総連合会神奈川地方連合会京浜特殊印刷分会 
申立人  X1 
被申立人  株式会社京浜特殊印刷 
命令年月日  平成13年 8月10日 
命令区分  全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) 
重要度   
事件概要  会社が、(1)X1を夜勤から本人の望んでいない昼勤に配置転換したこと、(2)「従業員のみなさんへ」と題する書面を掲示し、X1を誹謗中傷するとともに従業員を威嚇し組合に対する反感を煽ろうとしたこと、(3)組合員のいない夜勤の勤務者に対してのみ社長が一時金に加算して特別の金員を支給したこと、(4)管理職らをして従業員に対して組合活動を批判する内容を含む「労働形態を現状維持にする為の提案」と題する書面に署名させたこと、(5)X1に対して業務命令及び服務規則違反として自宅待機を命じたこと、(6)賞与の支給等に関する団体交渉の申入れを分会員が既に賞与を受け取っていることを理由に拒否したことが、それぞれ不当労働行為であるとして争われた事件で、(1)X1の配置転換命令及び自宅待機命令がなかったものとしての取扱い並びに現職復帰及びバックペイ、(2)X1の誹謗中傷等を内容とする書面掲示による支配介入の禁止、(3)団体交渉の申入れに対する誠実な応諾、(4)ポスト・ノーティスを命じた。 
命令主文  1 被申立人は、申立人X1に対する平成11年11月15日付け配置転換命令及
 び平成12年8月8日付け自宅待機命令がなかったものとして取り扱い、同人
 を上記配置転換命令前の業務に復帰させるとともに、同人に対し、上記配置転
 換及び自宅待機命令がなかったならば支給されるべきであった賃金相当額と現
 に支払った賃金の額との差額に相当する額に、年率5分相当額を加算した額の
 金員を支払わなければならない。
2 被申立人は、申立人X1を誹謗中傷した上、申立人ら組合の活動により不利な
 結果が招来されるなどと記述した書面を掲示するなどして、申立人ら組合の運
 営に介入してはならない。
3 被申立人は、申立人ら組合からの団体交渉申入れに対し、その組合員が賞与
 を受領済みであることなどを理由に拒否することなく、誠実に応じなければな
 らない。
4 被申立人は、本命令受領後、速やかに下記の文書を縦1メートル、横1.5
 メートルの白紙に楷書で明瞭に記載し、被申立人の食堂掲示板、あるいはその
 付近の従業員の見やすい場所に、毀損することなく10日間掲示しなければな
 らない。

                 記
  当社が、貴組合員のX1に対して平成11年11月15日付けで配置転換を命
 じたこと及び平成12年8月8日付けで自宅待機を命じたことは労働組合法第
 七条第一号及び第三号に該当する不当労働行為であり、X1を誹謗中傷した上、
 貴組合の活動により不利な結果が招来されるなどと記述した書面を掲示すると
 ともに、同趣旨の書面に管理職らを通して従業員に署名を求め、あるいは一部
 の従業員に特別に金員を支給するなどしたことは労働組合法第7条第3号に該
 当する不当労働行為であり、貴組合が申し入れた団体交渉について貴組合員ら
 が賞与を受領済みであることなどを理由に拒否したことは労働組合法第7条第
 2号及び第3号に該当する不当労働行為であると神奈川県地方労働委員会にお
 いて認定されました。
  今後このような行為を繰り返さないようにいたします。
   平成 年 月 日
  全国印刷出版産業労働組合総連合会神奈川地方連合会
   執行委員長    X3    殿
  全国印刷出版産業労働組合総連合会神奈川地方連合会京浜特殊印刷分会
   分会長    X1    殿

                        株式会社京浜特殊印刷
                         代表取締役 Y1 
判定の要旨  4820 単一組織の支部・分会等
4833 組織の消滅(含1人組合となった場合)
5147 その他
分会は、労組法第2条及び同法第5条第2項の規定に適合していることが決定されており、また、X1らは組合及び分会それぞれの組合員であることから、申立人としていずれも被救済利益を有しており、連名による申立てを二重申立てとするのは当たらないとされた例。

1300 転勤・配転
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
3501 労働者の行為と不利益取扱の時期との関連
4401 原職復帰と他の措置を併せて命じたもの
4406 バックペイに利子・付加金を付したもの
X1を夜勤から昼勤へ配置転換したことは、分会が結成され、会社が分会との団体交渉等や協議が必要となることを危惧し、分会の中心的存在であるX1を嫌悪するとともに、分会を弱体化することを企図して行ったものと推認され、他に同配置転換に合理性が認められず、X1に対する不利益取扱いであって、同時に組合及び分会に対する介入であるとして労働組合法第7条第1号及び同第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

2620 反組合的言動
「従業員のみなさんへ」と題する書面の掲示は、分会の活動に危機感を抱いた会社が、X1を誹謗中傷し、組合活動により不利な結果が招来されるとして従業員を威嚇することによって分会に対する反感を煽ろうとするものであり、組合運営への介入として労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

2900 非組合員の優遇
社長が一部従業員に対して個人的に金員を配ることは、組合活動に危機感を抱き、従業員の懐柔を図ろうとしたものといわざるを得ず、組合運営への介入として労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
3410 職制上の地位にある者の言動
管理職らが夜勤の勤務時間中に従業員に対して、社長が掲示した文書に沿った賛同文書への署名活動を行ったことは、従業員の分会への加入を阻止することを企図した社長の指示の下になされたものと見ざるを得ず、組合運営への介入として労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

1401 労務の受領拒否
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
4401 原職復帰と他の措置を併せて命じたもの
4406 バックペイに利子・付加金を付したもの
X1の就業時間中に業務以外の会話及びこのことについてのX1と社長とのやりとりを捉えて、X1に対して業務命令及び服務規則違反を理由とする自宅待機を命じたことは、会社がX1を嫌悪し、その活動を封じ込めることにより分会を一層弱体化させることを企図して行ったものと推認され、かつ、その理由に合理性が認められない不利益取扱いであって、同時に組合及び分会に対する介入として労働組合法第7条第1号及び同第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

2242 回答なし
2902 労組法7条2号(団交拒否)と競合
4500 交渉拒否理由または交渉条件に関する指示に触れた例
会社が、年末賞与の支給等に係る要求書等を議題とする団体交渉の申入れに対して、分会員が賞与を受け取ったことを理由として一切拒否し続けていることは、正当な理由のない団体交渉拒否であり、また、組合及び分会の存在を無視するものであって、労働組合法第7条第2号及び同第3号に該当する不当労働行為に該当するとされた例。

4611 P.Nの掲示の場所を配慮した例
X1に対する配置転換及び自宅待機命令、組合活動を批判する文書の掲示及び署名活動、一部従業員に対する金員の支給並びに団体交渉拒否が、明らかに分会員の排除、分会の弱体化を企図してなされたものであることを他の従業員にも周知させることが相当であり、かつ、今後同様の行為が繰り返されるおそれがないとはいえないとして、これらの会社の行為が不当労働行為であると認定された旨の文書を会社の食堂掲示板又はその付近の見やすい場所に掲示することを命じた例。

業種・規模  出版・印刷・同関連産業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集120集379頁 
評釈等情報   

[先頭に戻る]
 
[全文情報] この事件の全文情報は約453KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。