労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  三一書房 
事件番号  東京地労委 平成11年(不)第67号 
申立人  三一書房労働組合 
被申立人  株式会社三一書房 
命令年月日  平成13年 8月 7日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  会社が、経営悪化に伴う会社再建のため組合に協力を求めていた中で、①一方的に労働協約を解除したこと、②組合員6名を暴行等を理由に懲戒解雇処分に、2名を停職処分に付したこと、③組合員10名に対し賃金を支払わなかったこと、④組合及び組合員を誹謗中傷する文書を配布したこと⑤交渉権現を弁護士に委任したとして団交に応じなかったことが争われた事件で、①組合員6名に対する懲戒解雇処分及び2名に対する停職処分がなかったものとしての取扱い、原職復帰及びバックペイ、②組合員10名に対する賃金相当額の支払、③労働協約の解除がなかったものとしての取扱い、④支配介入の禁止及び文書交付、履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人株式会社三一書房は、申立人三一書房労働組合所属の組合員X1、同
 X2、同X3、同X4、同X5、同X6に対する下表記載の処分がなかったものとして取
 り扱い、原職に復帰させ、当該処分を理由に支給しなかった賃金相当額を各人
 に支払わなければならない。
(表)
被処分者   処 分 年 月 日   処分内容
 X1    10年11月14日   懲戒解雇
 X2    10年11月14日   懲戒解雇
 X3    10年11月14日   懲戒解雇
 X4    11年 3月 6日   懲戒解雇
 X5    10年11月20日   停職処分
       11年 3月16日   懲戒解雇
 X6    10年11月19日   停職処分
       12年 1月25日   懲戒解雇
2 被申立人会社は、平成10年10月11日以降、申立人組合組合員X7に対し
 ては11年4月13日までの、同X8に対しては11年5月31日までの、同X
 9に対しては11年6月4日までの、同X10に対しては本件命令履行の日まで
 の、X1、X2、X3、X4、X5、X6に対しては同人らを懲戒解雇した日ま
 での、各賃金相当額を支払わなければならない(ただし、X5、X6に関しては
 、前項により停職期間中の賃金相当額の支払いを命じているので、本項に基づく
 賃金相当額の算定にあたっては、両名の停職期間を除外する。)。
3 被申立人会社は、申立人組合に対して行った10年11月13日付労働協約
 の解除がなかったものとして取り扱わなければならない。
4 被申立人会社は、申立人組合と組合員を非難・中傷する文書を配布すること
 によって、申立人組合の運営に支配介入してはならない。
5 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記の内容の文書を
 申立人組合に交付しなければならない。

                 記
                            年  月  日
  三一書房労働組合
    執行委員長    X2    殿
                       株式会社三一書房
                         代表取締役   Y1
  当社が行った下記の行為は、東京都地方労働委員会において不当労働行為と
 認定されました。今後このような行為を繰り返さないよう留意します。
 (1)貴組合から平成10年10月18日以降同年11月13日までの間に申
   入れのあった団体交渉に応じなかったこと。
 (2)平成10年11月14日付で貴組合員X1氏、同X2氏、同X3氏を懲
   戒解雇し、同月19日付で同X6氏を、同月20日付で同X5氏を停職処分
   し、11年3月16日付で同X4氏、同X5氏を、12年1月25日付で同
   X6氏を懲戒解雇したこと。
 (3)平成10年11月13日付で労働協約を解除したこと。
 (4)平成10年10月11日以降、懲戒解雇した貴組合員X1氏、同X2氏、
   同X3氏、同X4氏、同X5氏、同X6氏に対しては、懲戒解雇するまでの
   賃金を支払わなかったこと、同X7氏に対しては11年4月13日までの、
   同X8氏に対しては11年5月31日までの、同X9氏に対しては11年6
   月4日までの、同X10氏に対しては現在までの賃金を支払わなかったこと。
 (5)「『刑法』に触れる違法行為」、「『労働協約』上の『権利』を乱用し
   、「『つるし上げ』型団交要求と大義名分のないストライキを繰り返し」
   、「『団交』の美名の下に・・社長に直接暴力をふるい・・暴力労組」、
   「日常的に暴力、暴言をふるい続ける『三一書房労働組合』に巣食う、モ
   ラルなき人々・・悪性腫瘍」、「労働条件と無関係な問題で安易に違法な
   ストライキを繰り返す社員諸氏・・団交という名の『暴言』、『暴力』・
   ・暴力事件を起こしたり、私利私欲のため、会社に損害を与えた者ら」、
   「X1(労組委員長で情報と金を一手に握る立場を悪用し、私利私欲に走
   った男)」、「三一書房紛争とは?すべては経理担当者(労組委員長)の
   不正経理“隠蔽工作”です。」、「三部長(取締役)に対して・・暴行、
   拉致、監禁による吊し上げ」、「業務上横領犯(X1経理責任者)」など
   と記載した文書を配布し、貴組合と組合員を非難・中傷したこと。
   (注:年月日は文書を交付した日を記載すること。)
6 被申立人会社は、第1項ないし第3項及び第5項を履行したときは、すみや
 かに当委員会に文書で報告しなければならない。
7 その余の申立てを棄却する。 
判定の要旨  2231 組合の不誠実
4505 その他
会社は、ロックアウトまでの間、組合が申し入れた団体交渉に一切応じず、交渉権現を委任したとされる弁護士も団体交渉に応じておらず、団体交渉に応じないことが正当であると認めるに足る疎明を行っておらず、会社の 団交拒否は、労組法7条2号に該当するが、組合は、Y2の代表取締役解任とY1の代表取締役就任の登記が行われた後も、Y1と団体交渉を行う等組合の対応は、Y1を団体交渉の相手とはしないと宣言したに等しい行為であることから、団体交渉の一方の当事者である会社に対してだけ団交応諾を命ずることは相当といえず、文書交付を命じることが相当であるとされた例。

3103 労働協約締結をめぐる行為
本件労働協約解除は、会社が団交の場で、改定申入れを撤回する旨合意したいにもかかわらず、わずか2日後に再び一方的に撤回し、突然、長年続いた労働協約上の権利を奪うものであり、組合活動に打撃を与える目的で行われたものであって、労組法第7条第3号に該当するとされた例。

1201 支払い遅延・給付差別
本件の場合、会社は対抗防衛手段としてロックアウトを行わざる得ないほど、組合活動の正当性の範囲を逸脱した組合の行為が存在していたと判断できず、かえって、本件ロックアウトは、会社の再建を進める上で組合の存在が障害になることから、組合の活動の拠点である本社から閉め出し、かつ、賃金不払措置によって組合員の生活を困窮させ、もって組合を動揺させることを企図して行われたものと判断せざるを得ないから、本件ロックアウトを理由とした賃金不払措置は、労組法第7条第1号に該当するとされた例。

2620 反組合的言動
会社配布文書には、組合と組合員に対し、「「刑法」に触れる違法行為」、「「労働協約」上の「権利」を乱用し」等と書かれ、このような表現は全体的に不穏当で、ことさら組合や組合員を誹謗・中傷するものであり、しかも、これら文章には、組合が取締役に対しつるし上げなど暴力行為を行った旨や執行委員長が不正経理を行った旨が記載されているが、会社は具体的主張も疎明も行っていないのであるから、会社がこれら文書を配布したことは、労組号第7条第3号に該当するとされた例。

3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
暴力等を理由とする組合員6名に対する懲戒解雇処分、2名に対する停職処分は、会社が各人に対する処分であると判断することは困難であり、かえって本件紛争発生の経緯に照らせば、会社の再建を進めるうえで障害となる組合の闘争力を減殺するため行ったと判断せざるを得ず、いずれも労組法第7条第1号に該当するとされた例。

2216 その他
会社は組合は会社の正式な代表取締役Y2であると主張していることから、本件は既に撤回された、または有効に存在しないと主張する事項について救済を求めるもので却下すべきであると主張するが、臨時株主総会にあいて取締役に選任され、代表取締役になったY2は、組合役員らに対する懲戒処分撤回や労働協約の解除通告等の撤回を通知したが、Y1は、会社代表取締役社長の名をもってY2が肩書を僭称して行った行為は無効である旨組合員らに通知し、その後Y2を解任するなどして改めて代表取締役の登記手続きを済ませて以降会社代表たる立場において、Y2の撤回行為を否定する態度を取り、さらに新たな懲戒処分を行っているのであるから、組合はこれから会社の行為の対し救済を求める利益を失わないものとされた例。

業種・規模  出版・印刷・同関連産業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集120集344頁 
評釈等情報   

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