労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  作陽学園 
事件番号  岡山地労委 平成11年(不)第3号 
申立人  日本音楽家ユニオン 
被申立人  学校法人作陽学園 
命令年月日  平成13年 8月 1日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  学園が、①非常勤講師の労働条件の変更に関する組合との団体交渉において、回答の根拠となる資料を提出するなどして誠実に対応しなかったこと、②組合掲示板の設置を拒否したこと、③組合員2名を高校音楽科の授業から外したことが争われた事件で、①労働条件の変更について事前に組合と団体を開催し、回答の根拠となる資料を提示するなどして誠意ある対応をすること、②組合掲示板設置場所の貸与を前提とし、速やかに組合と協議すること、③組合員1名を従前の高校音楽科の授業担当として処遇し、授業を担当していたら得られたであろう賃金相当額を支払うこと及び、④文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、労働条件の変更について事前に申立人と団体交渉を開催し、回
 答の根拠となる資料を提示の上、具体的かつ十分な説明を行い、申立人の理解
 を得るよう誠実な協議に努めるとともに、必要に応じて理事長など最終的な権
 限を持って回答をなし得る者が出席して誠意ある対応をしなければならない。
2 被申立人は、組合掲示板設置場所の貸与を前提とし、くらしき作陽大学内で
 の設置場所、貸与条件の合意形成に向けて申立人と速やかに協議を行わなけれ
 ばならない。
3 被申立人は、X1に対し平成10年4月以降も従前の作陽高等学校音楽科の授
 業担当として処遇し、授業を担当していたら得られたであろう賃金相当額を支
 払うとともに、今後の授業担当について申立人と協議しなければならない。
4 被申立人は、申立人に対して本件命令後速やかに、次の文書を手交しなけれ
 ばならない。
                 記
                            平成 年 月 日
  日本音楽家ユニオン
   代表運営委員    X2    殿
                    学校法人 作陽学園
                     理 事 長    Y1
  当学園が、貴組合からの団体交渉申入れに対し誠実に対応しなかったことは
 、岡山県地方労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労
 働行為であると認定されました。
  今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
5 申立人のその余の申立てを棄却する。 
判定の要旨  5201 継続する行為
団交交渉は断続的に開催されているが、第1回から第5回までの団交交渉は、申立期間を徒過しているうえ、第5回団交交渉において合意が成立し覚書を締結していることから一応完結していると評価でき、継続する行為とは解し難いので判断の対象から除外するが、第6回以降の団交交渉は、組合員2名の不利益取扱いに端を発した労働条件の変更に関する事項を内容とするものであり、独立した行為とみるのが相当であるから、判断の対象とするとされた例。

2240 説明・説得の程度
団体交渉における過去の非常勤講師の賃金、コマ数等の資料の開示について、学園が主張するプライバシーの問題に関しては、個々人の名前を伏せるとか記号で示すなどの方法でプライバシーの問題を防ぎ得るし、過去20年間にわたる点については、可能な範囲で提出すべきであったと思料され、学園は、いたずらに自己の主張に固執するのみで、組合の要求に耳を傾けようとする努力を怠り、真に理解を得ようとする態度が認められないこと、また、学園側の団交担当者には実質的な代表権限が付与されているとは認め難く、交渉の内容によっては理事長などの出席が誠意ある対応と認められる場合もあり得るから、理事長が団交に出席する必要はないとする学園の態度は誠意あるものとはいえないこと等を総合的に判断すると、学園の団体交渉への対応は不誠実なものと判断されるとされた例。

2248 実質的権限のない交渉担当者
学園側の団交担当者には実質的な代表権限が付与されているとは認め難く、特に理事長のみが知る事項については、理事長が出席しなければ納得のいく説明ができないのであるから、理事長が団交に出席する必要はないとする学園の態度は誠意あるものとはいえず、学園の団交への対応は不誠実なものと判断されるとされた例。(削除)

3020 組合活動への制約
複合組合が併存する場合、使用者は特段の合理的な理由がない限り中立かつ公正な立場を堅持し平等に取り扱わなければならないが、別組合の掲示板のみが設置されている状態に特段の合理的な理由はなく、また、施設管理権が各施設長にあるとする学園の主張は首肯し難しいこと、高校内の掲示板は黙認の姿勢をとり続け、地方で大学内への設置については教育的見地から認められないとの学園の態度は説得性を有しないことから、学園が大学内に掲示板の設置を認めないことは組合差別であり、組合活動に対する支配介入にあたるとされた例。

1302 就業上の差別
学園は、X3及びX4を高校から排除するための手段として、業務上の必要性に藉口して、X3らの担当している授業を意図的に担当させる目的でX5を高校に異動させ、X6を採用し意図的に授業を担当させたものと解するのが相当であり、X3らの授業担当外しにより給与が減少してX3らに経済的な不利益を与えたことは、組合嫌悪の不当労働行為意思によってもたらされたものと推認せざるを得ず、労組法第7条第1号に該当する不当労働行為であるとされた例。

4413 給与上の不利益の場合
X4については、学園からの給与は減少しているが、これは給与の算定方法が月給制となったことが大きく起因しており、高校給与に関しては増えているうえ、年間給与所得も増加傾向にあることから総合的に判断して、この程度の差額は通常甘受すべき範囲内であると思料されるとして、この点についての申立てを棄却するとされた例。

業種・規模  教育(自動車教習所を含む) 
掲載文献  不当労働行為事件命令集120集276頁 
評釈等情報   

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