概要情報
事件名 |
甲府月星商事外2社 |
事件番号 |
山梨地労委 平成12年(不)第1号
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申立人 |
X1 |
申立人 |
山梨ユニオン |
申立人 |
全国一般・山梨県中小企業労働組合評議会 |
被申立人 |
月星化星株式会社 |
被申立人 |
甲府月星商事株式会社清算人 |
被申立人 |
東京月星商事株式会社 |
命令年月日 |
平成13年 7月23日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、(1)甲府月星及び東京月星が営業譲渡を行うに際し、組合員の雇用の保障を求める組合の団交に誠実に応じなかったこと、(2)交渉の過程で組合員に対し退職願の提出を働きかけたこと及び退職金の特別加算金を支給しなかったこと、(3)東京月星及び親会社の月星化成が、組合員の東京月星への雇用の継続を求める団交を拒否したことが、不当労働行為であるとして争われた事件で、甲府月星に対し、(1)退職金の特別加算金についての不利益取扱いの是正、(2)退職金の特別加算金に係る誠実団交及び文書手交を命じ、東京月星に対しては、団交を拒否したことに関する文書交付を命じ、その余の申立ては棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人甲府月星商事株式会社は、退職金の特別加算金について、申立人X1 に対する不利益取扱いを是正しなければならない。 2 被申立人甲府月星商事株式会社は、申立人山梨ユニオンから申立人X1の退職 金の特別加算金に係る団体交渉を申し入れられた場合には、誠実に団体交渉を 行わなければならない。 3 被申立人甲府月星商事株式会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、次 の内容の文書を申立人山梨ユニオンに交付しなければならない。
年 月 日 山梨ユニオン 執行委員長 X2 殿 甲府月星商事株式会社 清算人 Y1 当社が行った次の行為は、山梨県地方労働委員会において不当労働行為であ ると認定されました。 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。 1 貴組合との団体交渉を誠実に行わなかったこと 2 貴組合が組合員の雇用継続を求め、当社と団体交渉等を行っている中で、 退職願の提出を退職金の特別加算金の支給条件としたこと及び貴組合の組合 員に退職願の提出を働きかけたこと 3 貴組合の組合員に対して、退職金の特別加算金を支給しなかったこと (注:年月日は文書を交付した日を記載すること)
4 被申立人東京月星商事株式会社は、本命令受領の日から1週間以内に、次の 内容の文書を申立人山梨ユニオンに交付しなければならない。
年 月 日 山梨ユニオン 執行委員長 X2 殿 東京月星商事株式会社 代表取締役 Y1 当社が貴組合の団体交渉の申し入れを拒否したことは、山梨県地方労働委員 会において不当労働行為であると認定されました。 今後このような行為を繰り返さないよう留意します。 (注:年月日は文書を交付した日を記載すること)
5 申立人らのその余の申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
4915 親会社
甲府月星の解散及び東京月星への営業譲渡においても、月星化成の常務が相談を受けたものの、その関与は少なく、基本的には社長の判断により決定され、月星化成は株主として了承していたに過ぎないものと認められ、また、月星化成が経営上の支配力を具体的に行使し、解散せざるを得ないような状況に甲府月星を追い込んだという疎明はなく、組合員に対する甲府月星による解雇及び東京月星による不採用に月星化成が具体的に関与していたという疎明もないことから、月星化成に甲府月星の労使問題の解決についての使用者性があるとまでは言えず、組合員の解雇及び不採用についての使用者性を認めることはできないとされた例。
2300 賃金・労働時間
2301 人事事項
団体交渉の協議事項であると考えにくい組合員個人の雇用継続が要求事項になったのは、甲府月星にはユニオンの組合員が一名しかいないためであり、東京月星は組合員の採用を団体交渉で協議して決める必要はないが、組合員の雇用継続に関連して、採用基準、4名しか採用できない理由等について団体交渉で誠実に説明する義務があり、団体交渉の中でユニオンからの求めがあれば、採用された場合の労働条件等についても誠実に交渉を行う義務があったと解するのが相当であり、団体交渉を拒否する正当な理由ではないので、東京月星の団体交渉拒否は不当労働行為に当たるとした。
2240 説明・説得の程度
組合員の雇用問題の前提として、甲府月星の経営状況など解散の必要性や月星化成の販売子会社の統廃合の内容について、甲府月星がまず説明する必要があるが、甲府月星の説明が不十分な場合には、具体的に決算書等の配布を要求したり、正確に把握するための設問をするなどの対応がユニオンにも必要であったことが認められるので、甲府月星が解散等を一方的に進めたとは言えないが、解散及びそれに伴う営業譲渡の決定、その理由及び内容、スケジュール等について、ユニオンに対する説明等が適切な時機に、具体的に、明確に行われていないことから、団体交渉は不誠実であったとされた例。
1500 不採用
甲府月星は経営不振により解散し、組合員の解雇は会社解散に伴うものであり、解散に至るまでの過程で問題があったとしても、甲府月星が組合員であること又は組合活動を行ったことを理由に組合員を解雇したものと認められず、また、東京月星は、組合員の不採用の理由について、組合員が物流担当者であり、営業の即戦力を採用したいという意向に沿わなかったことなどの合理的な理由が認められるので、東京月星による組合員の不採用が団体交渉の拒否の中で行われたとしても、東京月星が組合員であること又は組合活動を行っていたことを理由に組合員を不採用にしたとは認められず、甲府月星が組合員を解雇したこと及び東京月星が組合員を不採用としたことは、いずれも不当労働行為に当たらないとした。
2621 個別的示唆・説得・非難等
ユニオンが組合員の雇用継続等を求め、甲府月星と団体交渉等を行い、交渉が尽くされていない状況の中で、退職願の提出を特別加算金の支給条件としたこと、組合員に対して退職願の提出を働きかけたこと及び退職願を提出しない組合員に対して特別加算金を支給しなかったことについて、社長の不当労働行為意思を推認せざるを得ないことから、退職願の提出を特別加算金の支給条件としたこと及び組合員に対して退職願の提出を働きかけたことは、ユニオンに対する支配介入であり、退職願を提出しない組合員に対して特別加算金を支給しなかったことは、組合員であることを理由とした不利益取扱に当たるとした。
4421 文書掲示等を命じた例
組合は文書交付及び文書掲示を求めているが、本件団体交渉の当事者はユニオンであったので、ユニオンに対する文書で足り、また、東京月星にはユニオンの組合員はおらず、文書掲示を命じる実益は乏しいので、文書交付を命ずるにとどめた例。
4421 文書掲示等を命じた例
団体交渉の当事者はユニオンであり、支配介入はユニオンに対して行われ、本件不利益取扱いはユニオンの組合員に対して行われたので、ユニオンに対する文書であり、また、甲府月星は解散し、財産を含めた営業は東京月星に譲渡されており、文書掲示を命じる実益は乏しいので、文書交付を命ずるにとどめた。
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業種・規模 |
ゴム製品製造業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集120集162頁 |
評釈等情報 |
 
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