概要情報
事件名 |
日本サイロ |
事件番号 |
千葉地労委 平成11年(不)第4号
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申立人 |
日本サイロ労働組合 |
申立人 |
全日本倉庫運輸労働組合同盟 |
被申立人 |
日本サイロ株式会社 |
命令年月日 |
平成13年 3月30日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、①組合員に対し降格処分、職場待機処分及び自宅待機処分を行ったこと、②交渉員を制限するなどして不誠実な団体交渉を行ったこと、③組合員に対し脱退勧奨を行ったこと、④組合員を36協定の代表者選任手続きに関与させなかったこと、⑤チェックオフを一方的に廃止したことが、争われた事件で、①組合員6名に対する降格処分の撤回、原職復帰及びバックペイ、②組合員2名に対する職場待機処分、自宅待機処分の撤回、復帰業務についての誠実協議、③36協定締結に際しての支配介入の禁止、④文書手交及び文書掲示を命じ、組合員2名に対する降格処分については却下し、その余の申立は棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人は、平成10年7月1日付けでしたX1に対する参与への降格処分 並びにX2、X3、X4、X5及びX6に対する参事への降格処分を撤回し、 それぞれに原職に復帰させるとともに、平成10年7月1日から原職に復帰す るまでの間の賃金、夏期・年末手当の各支給時に同人らが受けるはずであった 金員と既に支払った金員との差額分を支払わなければならない。 2 被申立人は、X1及びX2に対する職場待機処分及び自宅待機処分を撤回す るとともに同人らの復帰させるべき業務について直ちに申立人らと誠実に協議 しなければならない。 3 被申立人は、いわゆる36協定の締結における、被申立人会社の労働者の過 半数を代表するものの選出にあたって、申立人日本サイロ労働組合の組合員を 除外することにより、申立人らの労働組合の組織運営に支配介入してはならな い。 4 被申立人は、本命令書受領の日から1週間以内に、申立人らに対して、下記 の内容を記載した書面を手交するとともに、縦90センチメートル以上、横8 0センチメートル以上の白紙の全面に下記の内容を墨書し、被申立人会社本社 内及び千葉事業所内のそれぞれ見やすい場所に、10日間以上掲示しなければ ならない。 記 声 明 書 日本サイロ労働組合 執行委員長 X1 様 全日本倉庫運輸労働組合同盟 中央執行委員長 X7 様 年 月 日 日本サイロ株式会社 代表取締役 Y1 当社が行った以下の行為は、千葉県地方労働委員会によって、労働組合法第 7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると認定されました。 当社は、この命令書主文に従い、その内容を誠実に履行するとともに、今後 このような行為をしないことを誓約します。
(1)平成10年7月1日付けでした貴組合所属の組合員であるX1に対する参 与への降格処分並びにX2、X3、X4、x5、X6に対する参事への降格 処分 (2)貴組合所属の組合員であるX1及びX2に対する職場待機処分及び自宅待 機処分 (3)いわゆる36協定の過半数代表者を選出する際の貴組合所属の組合員に対 する差別 (注:年月日は手交又は掲示した日を記入すること) 5 平成8年10月1日付けでしたX3及びX4に対する降格処分に係る申立は 却下する。 6 その余の申立は棄却する。 |
判定の要旨 |
5141 補正されない申立て・要件不備
本件申立ては、申立て時点において、申立人らの記名がなされていたものの、その押印がなされていなかったものであるが、その後、申立書中、申立人らの代理人の住所及び氏名等を削除したうえで、申立人らの印を押し補正したものであるから、申立て時に遡って申立ての要件を具備したものと認められるとされた例。
5200 除斥期間
組合員2名の降格処分については、降格処分から1年を経過した後に申し立てられたものであるから、労働組合法第27条第2項により却下するのが相当であるとされた例。
1200 降格・不昇格
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
組合員6名を参与あるいは参事に降格させたのは、会社の管理職の処遇に関する方針等に反対し、労基署への申告活動をはじめとして活発な組合活動を行う組合を嫌悪して、組合員に人事上、経済上の不利益を課するとともに、組合の弱体化を企図したものであると認めるのが相当であり、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるとされた例。
1302 就業上の差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
組合員2名に対する具体的な労務指示を行わない職場待機処分に合理性、相当性があったとは認められず、同処分は、同人らに対し不利益な取扱いをするとともに、組合の影響力を減殺し、その弱体化を企図したものと認めるのが相当であり、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為であるとされた例。
1401 労務の受領拒否
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
組合員2名に対する担当業務がないことを理由とする自宅待機処分に合理的な理由はなく、同人らを就業時間中自宅で待機させ、他の従業員から完全に隔離し排除することを目的として職場待機に引き続き行ったものと認められるから、これは同人らを不利益に取り扱うとともに組合を嫌悪し、これを弱体化させる意思をもって行われたものと認めるのが相当であり、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるとされた例。
2212 交渉の場所・時間
2213 交渉人数
団体交渉において組合側の出席者は8名が参加することが労使で確認され、かつ実際に実施されていること等が認められ、一方で会社側の出席者が4名であることとを比較してみても、会社が交渉人数や交渉時間を不当に制限しているとまでは言えないとされた例。
5200 除斥期間
脱退勧奨については、申立て時既に1年以上経過しているため、取り上げることはできず、その他は事実であると認めるに足る疎明がないとされた例。
2900 非組合員の優遇
会社は36協定の更新に当たって、組合員を36協定手続にことさら参加させず、非組合員と差別し、弱体化を図るため行ったものであると認められ、労組法第7条第3号の支配介入に当たると判断された例。
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
組合員のチェック・オフの中止については、どのような経緯によりチェックオフの廃止に至ったか疎明がないので、廃止の是非についての判断をすることはできないとされた例。
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業種・規模 |
倉庫業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集119集582頁 |
評釈等情報 |
 
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