事件名 |
兼誠会 |
事件番号 |
兵庫地労委 平成11年(不)第3号
|
申立人 |
全国一般労働組合兵庫地方本部 |
被申立人 |
医療法人 社団 兼誠会 |
命令年月日 |
平成13年 2月20日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含
む) |
重要度 |
|
事件概要 |
病院が、(1)組合と協議することなく組合員に対し一方的に一時金
の額を決定して支給したこと、(2)組合役員を誹謗・中傷する文書を掲示板に掲示したこと、(3)支部ニュースを組合掲示板
から取り外すよう要求したこと、(4)組合と締結した協定書及び謝罪文は、組合の脅迫・恐喝により作成されたものであるとし
て、組合に対し謝罪文の提出を求めたこと、(5)組合否定、組合嫌悪の発言を行ったことが不当労働行為であるとして争われた
事件で、(1)病院は、組合と協議することなく組合員に対して、一時金を一方的に決定して支給する等、組合の運営に支配介入
してはならないこと、(2)謝罪文の掲示を命じ、(3)その余の申立については棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人は、申立人と協議することなく組合員に対し一時金を一
方的に決定
して支給したり、申立人及び申立人杉安病院支部役員を誹謗中傷する文書を杉
安病院に掲示したり、申立人杉安病院支部の支部ニュースを組合掲示板から取
り外すよう要求したり、あるいは、申立人が当事者間の協定書及び謝罪文を脅
し取ったとして申立人に謝罪を要求したりするなどの方法で、申立人の運営に
支配介入してはならない。
2 被申立人は、本命令書写し交付の日から7日以内に、縦55センチメートル
、横80センチメートルの白紙に下記の文を楷書で明瞭に墨書して、被申立人
の経営する杉安病院の従業員の見やすい場所に10日間掲示しなければならな
い。
記
平成 年 月 日
全国一般労働組合兵庫地方本部
執行委員長 X1 殿
全国一般労働組合兵庫地方本部杉安病院支部
委員長 X2 殿
医療法人社団兼誠会
理事長 Y1
当社団が、貴組合と協議することなく組合員に対し平成11年度夏季一時金
を一方的に支給したこと、貴組合及び貴組合杉安病院支部役員を誹謗中傷する
内容の文書を病院内に掲示したこと、貴組合杉安病院支部ニュースを組合掲示
板から取り外すよう要求したこと、平成8年6月1日付け協定書及び同月3日
付け謝罪文を貴組合が脅し取ったとして貴組合に対し謝罪を要求したことは、
労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると兵庫県地方労働委員
会によって認定されました。
よって、今後このような行為を繰り返さないことを誓約します。
3 申立人のその余の申立ては、棄却する。 |
判定の要旨 |
2901 組合無視
病院が夏季一時金を一方的に支給した行為は、団体交渉の機能をないがしろにするものであり、組合の存在を無視し、組合員に不
安と動揺を生じさせたものといえ、組合員が夏季一時金を受領したとしても、それは病院に同意を与えたものとは認められず、組
合の運営に対する支配介入に該当する。
2620 反組合的言動
「職員のみなさまへ」と題する事務局長名の掲示文書は、その内容自体、組合及び支部役員をいわれなく誹謗中傷し、その名誉を
著しく傷つけるものであり、組合活動に対する萎縮的な効果を与えたものと認めざるを得ない。特に支部結成の経緯や支部役員の
活動に関する誹謗は、病院が組合を敵視し嫌悪していることを端的に表しているものということができ、組合の運営に対する支配
介入に該当する。
2620 反組合的言動
支部ニュースの内容の趣旨は病院の労務政策に関する批判攻撃であり、格別虚偽の事実を記載したと認めるべき表現もなく、ま
た、事実関係についての組合の批判ないし評価を記載した部分も幾分かの誇張があるにしても、ことさらに使用者及び事務局長の
信用名誉を毀損する表現ではなかったものと認められるので、同ニュースの掲示は正当な組合活動であって、病院が組合に対し同
ニュースの取り外しを要求したことは、組合活動に対する介入であって許されない。
2700 威嚇・暴力行為
当事者のトップ会談の協定事項を確認するために作成された協定書等に関して、病院は、組合が協定書等を脅迫・恐喝によって取
得したと非難するだけで、脅迫・恐喝に該当する具体的事実を主張することなく、また、それを裏付けるに足りる証拠を提示する
でもなく、非難を繰り返し、謝罪を要求していただけであるから、病院の行為は組合の弱体化を意図した嫌がらせであるとみるほ
かはなく、組合の運営に対する支配介入に該当する。
|
業種・規模 |
|
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集119集399頁 |
評釈等情報 |
|