事件名 |
市進 |
事件番号 |
東京地労委 平成 9年(不)第21号
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申立人 |
全国一般東京一般労働組合 |
被申立人 |
株式会社 市進 |
命令年月日 |
平成13年 2月 6日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含
む) |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、①組合結成準備活動等を行っていた組合員X1の契約更新を
拒否したこと、②契約更新拒否問題、報奨金・年次有給休暇等の労働条件、組合文書掲示スペース確保等を議題とする団交申入れ
に対し、不誠実な団交を行ったこと、③他団体には掲示物の社内掲示を認めながら組合には認めないことが争われた事件で、①組
合員X1に対する契約更新拒否の意思表示がなかったものとしての取扱い、原職復帰及びバックペイ、②年次有給休暇制度の適
用、報奨金及び便宜供与事項に関する誠実団交、③ポストノーティスを命じ、その余の申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人株式会社市進は、申立人全国一般労働組合の組合員X1
に対する平成
9年2月24日付の専任教務社員契約更新拒否の意思表示がなかったものとし
て取り扱い、同人を原職に復帰させるとともに、平成9年3月1日以降原職復
帰までの間に同人が受けるべき賃金相当額を支払わなければならない。
2 被申立人会社は、申立人組合が申し入れた、(1)非常勤講師に対する年次
有給休暇制度の適用、(2)専任教務社員の報奨金、(3)組合に対する便宜
供与事項を議題とする団体交渉について、関係資料を提示するなど回答の根拠
を具体的に明らかにして誠実に応じなければならない。
3 被申立人会社は、本命令書受領後1週間以内に、下記内容の文書を申立人組
合に交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートル×80センチメ
ートル(新聞紙2頁大)の白紙に楷書で明瞭に墨書して、本社内の従業員の見
やすい場所に10日間掲示しなければならない。
記
年 月 日
全国一般東京一般労働組合
執行委員長 X2 殿
株式会社市進
代表取締役 Y1
当社が、貴組合から申し入れのあった、(1)非常勤講師に対する年次有給
休暇制度の適用、(2)専任教務社員の報奨金、(3)組合に対する便宜供与
事項を議題とする団体交渉に誠実に応じなかったことは、東京都地方労働委員
会において不当労働行為であると認定されました。
今後、このような行為を繰り返さないように留意します。
(注:年月日は文書を交付または掲示した日を記載すること。)
4 被申立人会社は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告
しなければならない。
5 その余の申立を棄却する。 |
判定の要旨 |
1106 契約更新拒否
学院が分会長の契約更新拒否として挙げている理由は、いずれも妥当性を欠き、同人の雇用契約を更新しなかった真の理由は、学
院が組合結成ないし非公然活動の中心人物が同人であることを察知し、同人の活動を嫌悪したために学院外に放逐しようとしたた
めであり、不利益取扱いに当たるとされた例。
2235 その他組合の態度
組合は、分会長の契約更新拒否問題に関して、不当労働行為の救済を申し立てたことを契機として、第3回以降は同問題について
団交の議題とはしていないことから、同問題を団体交渉の場で解決しようとの方針・態度を中途で変更したものと解さざるを得
ず、交渉が進展しなかったことの原因が学院の態度のみにあるとみることはでず、会社の対応は須藤労働行為ではないとされた
例。
2240 説明・説得の程度
非常勤講師に対する年次有給休暇制度の適用に関する団体交渉について、学院は、組合の要求を真摯に検討して、自らの誤りを正
そうとする態度が全く見られず、また、最終的に是正されることにはなったが、組合から質された有給休暇の遡及適用の問題につ
いて具体的な説明を行っていないことから、本事項について、学院は誠意ある団交を尽くしていたものとは到底認めることはでき
ないとされた例。
2240 説明・説得の程度
専任教務社員の報奨金に関する団体交渉について、学院は、報奨金の決定システムを理解するために必要なデータを具体的な理由
も示さずに提供を拒んでおり、組合をはじめから交渉相手として認めないがごとき態度を表明していることからすれば、学院の交
渉態度は誠実性を欠くものであると判断された例。
2240 説明・説得の程度
組合事務所、組合掲示板の設置等便宜供与事項に関する団交について、学院は、具体的な検討結果を述べて組合の理解を求めるこ
となく形式的な話合いを行っただけで真摯に組合と合意達成を模索しようとする態度は微塵もうかがえないから、誠意ある団交を
尽くしたものとは到底認めることはできないとされた例。
2803 その他
社員会が親睦団体的な性格のものであることは明かであり、学院が社員会に対し、掲示物の貼付を認めていること及び労働条件に
ついて説明し意見を聴く機会を設けていることをもって、組合を差別していることにはならないから、当該学院の対応が不当労働
行為であるとはいえないとされた例。
2240 説明・説得の程度
専任教務社員の年、休日出勤に対する割増賃金問題等については、組合は学院の回答に対し、いずれも特段の追及や反論も行って
いないことから、これらの事項に関する交渉が中途のまま残っているとしても、その原因は学院のみにあるとみることはできず、
これをもって直ちに学院の対応は不誠実であるとはいえないとされた例。
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業種・規模 |
その他のサービス業(他に分類されないサービス業) |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集119集269頁 |
評釈等情報 |
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