労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  岳南朝日新聞社(解雇等) 
事件番号  静岡地労委 平成 6年(不)第5号-2 
静岡地労委 平成 8年(不)第3号 
静岡地労委 平成 9年(不)第2号 
申立人  日本新聞労働組合連合関東地方連合会 
申立人  新聞労連岳南朝日新聞労働組合 
申立人  日本新聞労働組合連合 
被申立人  株式会社岳南朝日新聞社 
命令年月日  平成11年 4月28日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  本件は、会社が、経営建て直しを口実に(1)平成6年7月、10月及び同8年9月に組合員4名に対して人事異動を行ったこと、(2)経歴詐称等を理由に組合員X1を、勤務成績不良等を理由に同X2、X3をそれぞれ解雇処分にしたこと、(3)勤務時間中の組合活動等を理由にX6ら6名を譴責処分・出勤停止処分にしたこと、(4)勤務成績不良を理由にX2に対する拡張手当を支給停止とし、また、X3に対する夏季一時金を減額支給したことが不当労働行為であるとして申立てのあった事件で、X1、X2、X3の解雇撤回、X1の相続人及びX2、X3に対するバックペイ、出勤停止処分及び譴責処分の一部についての撤回、バックペイ等を命じ、譴責処分の一部について却下、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  主        文
1 被申立人は、申立人新聞労連岳南朝日新聞労働組合の執行委員であったX1に
対する平成6年7月21日発令の人事異動及び同年9月13日付け解雇を撤回し
、同年9月13日以降、同人が死亡した平成9年11月19日までに同人が受け
取るはずであった賃金相当額を同人の相続人に支払わなければならない。
2 被申立人は、申立人新聞労連岳南朝日新聞労働組合の書記長X2に対し、
(1)平成7年3月11日付けの「同月26日より室長を解く」とする処分を撤
回し、同年4月分以降同人が解雇されるまでの間に受け取るはずであった月々の
室長手当相当額を同人に支払わなければならない。
(2)平成7年5月18日付けの「同月分以後の拡張手当支給を停止する」とす
る処分を撤回し、同年5月分以降同人が解雇されるまでの間に受け取るはずであ
った月々の拡張手当相当額を同人に支払わなければならない。
(3)平成6年10月12日発令の人事異動及び平成7年10月13日付け解雇
を撤回し、同人を整理部次長または整理部次長相当職に復帰させるとともに、平
成7年10月13日以降同人が整理部次長または整理部次長相当職に復帰するま
での間に受け取るはずであった賃金相当額を同人に支払わなければならない。
3 被申立人は、申立人新聞労連岳南朝日新聞労働組合の組合員X3に対し、
(1)平成7年3月11日付けの「同月14日から同月18日までの出勤停止」
とする処分を撤回し、同処分により減額した日数分の賃金相当額を同人に支払わ
なければならない。
(2)平成8年3月1日付け及び同月5日付けの「1日20件以上の新聞拡張訪
問指示命令に対する業務命令違反」、「作業日報の虚偽記載」及び「営業室にお
いて取締役営業部長ら営業部員全員に対して『カス頭』と暴言を発し、職場内の
風紀を乱したこと」をそれぞれ理由とする3件の譴責処分を撤回しなければなら
ない。
(3)平成8年3月21日付けの「同月22日、同月23日及び同月25日の出
勤停止」とする処分を撤回し、同処分により減額した日数分の賃金相当額を同人
に支払わなければならない。
(4)平成8年8月13日支給の夏季一時金について、上記(2)及び(3)の
処分がなかったものとして再査定し、支給額を是正し、既に支給した額との差額
を同人に支払わなければならない。
(5)平成8年12月6日付け解雇を撤回し、同人を富士編集担当に復帰させる
とともに、同人が富士編集担当に復帰するまでの間に受け取るはずであった賃金
相当額を同人に支払わなければならない。
4 被申立人は、申立人新聞労連岳南朝日新聞労働組合の書記次長X4に対し、
(1)平成8年3月16日付けの「同月18日から同月19日までの出勤停止」
とする処分を撤回し、同処分により減額した日数分の賃金相当額を同人に支払わ
なければならない。
(2)平成8年9月20日発令の人事異動を撤回し、同人を異動前の原職に復帰
させるとともに、同年10月以降同人が受け取るはずであった月々の打切手当相
当額を同人に支払わなければならない。
5 被申立人は、申立人新聞労連岳南朝日新聞労働組合の組合員X5に対する平成
8年3月21日付けの譴責処分を撤回しなければならない。
6 被申立人は、申立人新聞労連岳南朝日新聞労働組合の執行委員長X6に対する
平成8年9月20日発令の人事異動を撤回し、同人を異動前の原職または原職相
当職に復帰させなければならない。
7 被申立人は、申立人新聞労連岳南朝日新聞労働組合に対し、次の文書を速や
かに交付しなければならない。

                           平成 年 月 日
 新聞労連岳南朝日新聞労働組合
 執行委員長 X7 様
                      株式会社岳南朝日新聞社
                      代表取締役 Y1
 貴組合所属の組合員及び組合員であった者に対して行った下記の行為は、静岡
県地方労働委員会において、労働組合法第7条各号に該当する不当労働行為であ
ると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
                 記
1 平成6年7月21日発令のX1に対する人事異動
2 平成6年9月13日付けのX1に対する解雇処分
3 平成6年10月12日発令のX2に対する人事異動
4 平成7年3月11日付けのX2に対する「室長を解く」とする処分及び出勤停止(5日間)処分
5 平成7年5月18日付けのX2に対する「拡張手当支給を停止する」処分
6 平成7年10月13日付けのX2に対する解雇処分
7 平成8年3月1日付け及び同月5日付けのX3に対する「1日20件以上の新
聞拡張訪問指示命令に対する業務命令違反」、「作業日報の虚偽記載」及び「営
業室において取締役営業部長ら営業部員全員に対して『カス頭』と暴言を発し、
職場内の風紀を乱したこと」をそれぞれ理由とする譴責処分
8 平成8年3月16日付けのX4に対する出勤停止(2日間)処分
9 平成8年3月21日付けのX3に対する出勤停止(3日間)処分
10 平成8年3月21日付けのX5に対する譴責処分
11 平成8年8月13日支給のX3に対する夏季一時金の減額
12 平成8年9月20日発令のX6及びX4に対する人事異動
13 平成8年12月6日付けのX3に対する解雇処分

8 平成7年3月2日付けの申立人新聞労連岳南朝日新聞労働組合の組合員X5に
対する譴責処分並びに平成7年3月11日付けの同執行委員長X6、同書記長X2、
同書記次長X4及び同組合員X5に対する各譴責処分の撤回に係る申立ては、いずれ
も却下する。
9 申立人らのその余の申立ては、いずれも棄却する。 
判定の要旨  1300 転勤・配転
会社が、組合員X1に対して行った人事異動が、同人の今までの経験や能力を発揮し難い職種に強いたという職務上の不利益に加え、この異動が組合結成後まもなく行われたことから不当労働行為であると認められた例。

1300 転勤・配転
会社が、組合員X2に対して行った平成6年7月21日発令の人事異動は、X2の業務実績を買って行われたものであることが認められ、不当労働行為には当たらないとされた例。

0500 勤務成績不良
0800 経歴詐称
会社が、組合員X1を経歴詐称、勤務成績不良を理由に解雇したことは、X1の組合活動を好ましく思っていなかった会社が、X1に対し不利益な取扱をした不当労働行為であると認められた例。

1300 転勤・配転
会社が、組合員X2に対して行った平成6年10月12日発令の人事異動は、X2の今までの経験や能力を発揮し難い職種への転換であり、そのことにより会社は、X2に精神的不利益を与えるとともに、他の組合員に動揺を与え、組合組織の弱体化を意図したものである不当労働行為と認められた例。

5200 除斥期間
会社が、就業時間中に組合活動をしたこと等を理由とする平成7年3月2日及び同月11日の組合員らに対する譴責処分は、同人らに通告書が渡された同日の時点で完結したと解され、よって、本件処分にかかる申立は、行為の日から1年を経過したものとして却下された例。

5201 継続する行為
会社が、就業時間中に組合活動をしたこと等を理由とする平成7年3月2日及び同月11日の組合員らに対する処分のうち、同人らに通告書が渡された同日の時点以降に手当のカット等の実質的不利益が確認された日が、本件申立1年以内であったものは、申立期間を徒過したものではないとされた例。

0208 暴力・不穏当な言動を伴った組合活動
1200 降格・不昇格
会社が、集会において、会社を誹謗中傷したとして、組合員X3の室長を解いたことは、会社が、X3に対し、今後同様の抗議・要請行動を行わせないようにとの意図をもって、X3の挨拶の一部の発言を口実に不相当な不利益取扱行ったものと認められた例。

1401 労務の受領拒否
会社が、役員に対する暴力的反抗態度を理由に、組合員X3に出勤停止処分にしたことは、X3が、今まで組合活動理由に、会社から不利益取扱を受けていた経緯を勘案すると、役員に対するX3の発言が不適切であったにしろ、その発言のみをとらえて処分を行ったことは不当労働行為であると認められた例。

1602 精神・生活上の不利益
2622 組合員調査
会社が、組合員X2に対して、職務怠慢を理由に尾行調査を行った事実のみをとらえて、不当労働行為であるとまでは言えないとされた例。

1203 その他給与決定上の取扱い
2622 組合員調査
会社が、組合員X2に対し、尾行調査の結果をもとに拡張手当支給を停止したことは、当時の会社と組合間の対立状況等を総合して考えると、会社は、組合書記長であったX2に対して不利益取扱を意図して行った不当労働行為であると認められた例。

1602 精神・生活上の不利益
2621 個別的示唆・説得・非難等
会社が、組合員X2の腰痛を理由に休職を命じたこと等は、結果的に休職は実施されなかったこと、また、会社がBに執拗に休職をせまっていたことを認めるに足る疎明もなかったことから、不当労働行為であるとは言えないとされた例。

2621 個別的示唆・説得・非難等
2622 組合員調査
会社が、組合員X2に対して、業務の追跡調査を行った上で、業務に対する質問書を発したことは、その後のX2への処分を意図して行われたものであることが窺えるが、X2への不利益取扱い及び組合運営に対する支配介入があったと断定するに足る疎明は認められず、不当労働行為とは言えないとされた例。

0500 勤務成績不良
0700 職場規律違反
1102 業務命令違反
会社が、組合員X2を勤務成績不良等3項目を理由に解雇したことは、会社が、X2の組合活動を嫌悪を、組合の弱体化を諮った不当労働行為であるとされた例。

1302 就業上の差別
会社が、新聞拡張室の電話を独立回線とし、また、同室のドアを素通しガラスに替えたことについて、組合員X3及び組合が具体的な不利益を受けたと認めるに足る疎明がなく、組合に対する支配介入の不当労働行為であるとまで判断することは出来ないとされた例。

1302 就業上の差別
2622 組合員調査
会社が、組合員X3らの営業車にタコグラフを設置したことについて、会社は、設置可能な他の営業車にもタコグラフを設置しており、組合員だけを対象したものといえず、これをもって組合に対する支配介入の不当労働行為であるとまで判断することは出来ないとされた例。

1302 就業上の差別
2621 個別的示唆・説得・非難等
2622 組合員調査
会社が、組合員X3に対し、通話記録調査を実施し、その記録を示した上で「やめろ」と退職を強要したことについて、会社が、X3の擬用務内容について、具体的に問題点を指摘し、注意したことだけをとらえて、組合に対する支配介入とはいえず、また、脱退強要したという疎明もないことから不当労働行為であるとまで判断することは出来ないとされた例。

1400 制裁処分
会社が、組合員X2を業務命令違反等4項目を理由とする譴責処分並びに始末書提出を理由とする出勤停止処分にしたことは、不当労働行為とされた例。

1202 考課査定による差別
会社が、組合員X3の夏季一時金を大幅減額したことは、会社が、X3が組合員であることを嫌い不利益取扱を行った不当労働行為であるとされた例。

0500 勤務成績不良
0700 職場規律違反
1102 業務命令違反
会社が、組合員X3を勤務成績不良等3項目を理由に解雇したことは、会社が、X3の組合活動を嫌悪し、組合の弱体化を諮った不当労働行為であるとされた例。

1400 制裁処分
会社が、組合員X3を、会社を誹謗中傷したとして出勤停止処分にしたことは、会社が、X5の組合活動を嫌悪し、組合の弱体化を諮ったものとして、不当労働行為とされた例。

0201 就業時間中の組合活動(含職場離脱)
1400 制裁処分
会社が、組合員X5が就業時間中の組合活動を行ったとして、譴責処分したことは、会社が、X5が組合員であることを理由に不利益取扱を行い、組合の弱体化を図ったものとして不当労働行為であるとされた例。

1300 転勤・配転
会社が、組合員X4及びX6に対して行った、平成8年9月20日付け発令の人事異動は、会社が、両名の組合活動を嫌悪して不利益取扱した不当労働行為であると認められた例。

業種・規模  出版・印刷・同関連産業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集113集481頁 
評釈等情報   

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