労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  渡島信用金庫 
事件番号  北海道地労委 平成 9年(不)第4号 
申立人  渡島信用金庫労働組合 
被申立人  渡島信用金庫 
命令年月日  平成11年 8月26日 
命令区分  全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) 
重要度   
事件概要  金庫が、(1)組合員を呼び出し組合加入の動機とその経緯を聴いたこと、(2)組合書記長に対し、組合活動を非難したり、退職を強要したこと、(3)組合の執行委員長及び副執行委員長に対して組合活動を妨害する発言をしたこと、(4)副執行委員長を降格させ、賃金を減額したこと、(5)労働基準法の改正に伴う就業規則の改定において、誠実に団体交渉を行わず、一方的に変更したこと、(6)副執行委員長に対して懲戒解雇処分を行ったことが、それぞれ不当労働行為に当たるとして争われた事件で金庫に対し、(1)組合副執行委員長に対する資格の変更及び懲戒解雇処分の取り消し、原職復帰、バックペイ、(2)組合員を呼び出しての加入経緯の聴取り、組合役員に対する組合活動妨害発言、書記長に対する退職強要、副執行委員長に対する降格処分及び賃金減額、就業規則改定に伴う不誠実団交、就業規則の一方的変更及び副執行委員長に対する懲戒解雇処分等による労働組合運営への支配介入の禁止、(3)陳謝文の掲示を命じた。 
命令主文  1 被申立人は、X1副執行委員長に対する平成9年5月1日付けの資格の変更及び平成10年2月27日付けの懲戒解雇処分を取り消し、原職たる管理事務職D級に復帰させなければならない。さらに、被申立人は、同人に対し、平成9年5月1日以降、原職たる管理事務職D級に復帰するまでの間、上記資格の変更及び懲戒解雇処分がなければ得られたであろう賃金相当額を支払わなければならない。
2 被申立人は、X2組合員を呼び出して組合加入の経緯を聴いたり、X3執行委員長、X1副執行委員長及びX5書記長に対して組合活動を妨害する発言をしたり、同書記長に対して退職を強要したり、同副執行委員長を降格させ、賃金を減額したり、平成9年4月1日からの労働基準法の改正に伴う就業規則の改定において、誠実に団体交渉を行わず、また、これを一方的に変更したり、さらには同副執行委員長に対して懲戒解雇処分を行ったりなどして、申立人の運営に支配介入してはならない。
3 被申立人は、次の陳謝文を縦1メートル、横1.5メートルの白紙に楷書で明瞭に記載し、被申立人の本店及び支店の正面玄関の見やすい場所に、命令交付の日から7日以内に掲示し、10日以内に掲示し、10日間掲示を継続しなければならない。
              陳  謝  文
 当金庫の次の行為は、北海道地方労働委員会において、労働組合法第七条第一号、第二号及び第三号に該当する不当労働行為であると認定されました。
 ここに、深く陳謝し、今後このような行為を繰り返さないようにします。
                 記
(1)貴組合のX2組合員を呼び出し、組合加入の経緯を聴いたこと。
(2)貴組合のX3執行委員長、X1副執行委員長及びX5書記長に対して組合活動を妨害する発言をしたこと。
(3)貴組合のX5書記長に対して退職を強要したこと。
(4)貴組合のX1副執行委員長を降格させ、賃金を減額したこと。
(5)平成9年4月1日からの労働基準法の改正に伴う就業規則の改定において、誠実に団体交渉を行わず、また、一方的に変更したこと。
(6)貴組合のX1副執行委員長に対して懲戒解雇処分を行ったこと。
   平成 年 月 日(掲示する初日を記載すること)
渡島信用金庫労働組合  様
                       渡島信用金庫 
判定の要旨  2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
女性組合員1名に対し行った、金庫本部での理事長らが直接対応した事情聴取は、組合への加入の動機や経過を主眼に聞いていることがうかがわれ、その後まもなく当該組合員及び他の女性組合員が組合を脱退したことからも、組合の運営に対する支配介入と判断するのが相当であって、このような金庫の行為は、労働組合法第七条第三号に該当する不当労働行為であるとされた例。

2621 個別的示唆・説得・非難等
2700 威嚇・暴力行為
金庫が、組合書記長に対し、勤務時間中に組合活動をしていると決めつけ、非難を繰り返し融資業務を行うに当たっての手続ミスについて、本人が反省しているのに対し、金庫本部に呼び出し、職場での組合活動を執拗に非難したり、威嚇ともとれる個人攻撃の発言を繰り返し、遂には同書記長が退職届を出さざるを得なかったことが想像に難くなく、これら組合書記長に対する組合活動妨害及び退職強要は、組合の運営に対する支配介入と判断するのが相当であって、このような金庫の行為は、労働組合法第七条第三号に該当する不当労働行為であるとされた例。

2621 個別的示唆・説得・非難等
2700 威嚇・暴力行為
重大な支障を来すようなものとは認められない金庫の「経営方針」の外部への漏洩という些細なことを逆手にとってプレッシャーをかけ、業務中に組合委員長及び副委員長がそれぞれ短時間の電話連絡をしたことを急に問題視し、金庫幹部が副委員長に執拗に個人攻撃を行い、始末書の提出を強要する等の金庫の行為は、組合の運営に対する支配介入と判断するのが相当であって、労働組合法第七条第三号に該当する不当労働行為であるとされた例。

1200 降格・不昇格
組合副委員長に対する資格の見直しに伴う給与の大幅な減額は組合が本件申立てをした直後に急に実施されたものであり、副委員長を嫌悪し、経済的な不利益を与えるとともに、組合の弱体化を意図した組合の運営に対する支配介入と判断するのが相当であって、このような金庫の行為は、労働組合法第七条第一号及び第三号に該当する不当労働行為であるとされた例。

2240 説明・説得の程度
2901 組合無視
金庫の行った労働基準法改正に伴う就業規則の変更についての経過をみると、団体交渉において事前に具体的内容の提案を提示していないなど、誠実に対応していないのみならず、就業規則改正説明会の開催通知を組合員の多くに行わなかったことが見受けられ、組合を無視ないし軽視することによって、組合の運営に対して支配介入をしたと判断するのが相当であり、このような金庫の行為は、労働組合法第七条第二号及び第三号に該当する不当労働行為であるとされた例。

0500 勤務成績不良
3607 労働者の行為と不利益取扱の程度との関連
金庫が、業務中生じた過剰金の報告を遅れて行った等の理由で組合副委員長に対し行った懲戒解雇処分は、就業規則を不当に適用したものと認めざるを得ず、また、他の例と比しても異常に厳しい処分であり、同人を金庫から排除することによって、組合を弱体化させることを意図して行ったもので、同人に対する不利益扱い及び組合の運営に対する支配介入と判断するのが相当であり、このような金庫の行為は、労働組合法第七条第一号及び第三号に該当する不当労働行為であるとされた例。

業種・規模  金融業、保険業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集114集264頁 
評釈等情報   

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