概要情報
事件名 |
安倍川製紙 |
事件番号 |
静岡地労委 平成 4年(不)第1号
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申立人 |
安倍川製紙労働組合 |
被申立人 |
安倍川製紙株式会社 |
命令年月日 |
平成11年 3月 9日 |
命令区分 |
棄却(命令主文が棄却のみ又は棄却と却下) |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、(1)組合員42名の昇給を差別することにより平成3年4月1日の賃金を別組合の組合員と差別したこと、(2)組合員に対して班長以上の役務への昇進を遅くすることにより別組合の組合員と差別したことが争われた事件で、静岡地労委は申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件申立てをいずれも棄却する。 |
判定の要旨 |
1202 考課査定による差別
2900 非組合員の優遇
定期昇給や昇給に係る考課査定の方法は、その評価要素には抽象的な内容が含まれていて、査定者の主観に左右される可能性を否定できないし、また、所定の評価基準や手続によるとしても、考課査定の客観性や公正さが完全に担保されるとは認め難く、改善が望まれるところではあるが、運用の実態をみると、会社の裁量が作用する昇給要素に係る組合間の昇給格差は主として職能資格制度導入時の等級格付格差に起因しているのであって、この格差については組合として容認したものと認められることや、その他の要因による格差についても軽微であると同時に一定の合理性が認められることなどから、本件昇給格差について、不当労働行為と判断することはでいないとされた例。
1200 降格・不昇格
2900 非組合員の優遇
役務任命は、基本的には会社の人事権に属する事項であって、会社に相当程度の裁量権を認める余地があると考えられることから、組合間に昇給格差があるからといって、それが必ずしも不当な差別に当たるとは言えないが、裁量権が無制限に認められるわけではなく、その運用の次第によっては裁量権の不当行使が推認される場合があることも想定し得る。本件においては、(1)組合員の中にも、比較的勤続年数が長いのに役務に就いていない者が存在する一方、勤続年数の短い者が役務任命を受けたり、上位の役務に就いている例もあることから、役務が、すべての従業員を勤続年数に応じて均等に処遇するための地位としてではなく、昇進制度の趣旨に則って運用されていることが推認されること、(2)別組合員より勤続年数が短くて役務任命を受けたり、上位の役務に就いている例が見受けられること、(3)上位の役務者が少ないことが組合間の昇給格差を広げているが、上位の役職者程その職務の重要性、困難性や責任の度合いが高まるとともに、組織運営上も会社との一層の信頼・協力関係が求められるところとなると考えられることから、その任命に当たっては、会社の裁量権として許容できる範囲がより広くなると解し得ること、(4)会社が推進するQCサークル活動について、生産性向上運動であり、思想教育に結び付くから基本的に反対との方針を示しているが、会社が、その業務の推進に一層の重責を担うこととなる役務者の任命に当たって、こうした組合の会社経営施策への取組姿勢を考慮することがあったとしても必ずしも不合理とは言えないこと、を考え合わせると、本件昇進格差は会社の裁量権として許容できる範囲の中にあるのであって、不当な組合間差別とまで見ることはできないとされた例。
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業種・規模 |
パルプ・紙・紙加工品製造業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集113集554頁 |
評釈等情報 |
 
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