労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件名  日立製作所(愛知・昇級差別等) 
事件番号  愛知地労委 平成 4年(不)第4号 
愛知地労委 平成 5年(不)第9号 
愛知地労委 平成 7年(不)第2号 
愛知地労委 平成 8年(不)第4号 
愛知地労委 平成 9年(不)第1号 
申立人  X3 
申立人  X2 
申立人  X1 
被申立人  株式会社日立製作所 
命令年月日  平成10年11月24日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  本件は、組合員3名が、会社及び自らが所属する組合支部を批判するビラを工場や社宅で配布したこと等を会社が嫌悪して、同人らの昇給及び賃金を低位に抑えたことが不当労働行為であるとして争われた事件で、愛知地労委は、平成8年3月21日付けで、1名を副参事1級に、他の2名を一級企画職に格付け是正すること、3名の平成8年4月分以降の賃金及び同年6月以降の賞与の、既支給額と格付け是正後の金額との差額を支給すること、3名にそれぞれ1千万円の支払いをすること及び文書手交を命じ、3名の平成3年5月以前の賃金及び同年6月支給分以前の賞与の是正を求める申立ては却下し、その余の申立ては棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、平成8年3月21日付けで、申立人X1を副参事1級に、
同X2及び同X3を1級企画職に、それぞれ格付を是正しなければな
らない。
2 被申立人は、申立人3人の平成8年4月分以降の賃金及び同年6月支給分以
降の賞与を、上記の格付の是正に伴ってそれぞれ是正し、是正後の金額と既に支
給した金額との差額を誠意をもって算出し、当該差額及びこれに対する各支給日
から当該差額の支払日までの年6分の割合による金員を、申立人3人それぞれに
対し、本命令書交付の日から20日以内に支払わなければならない。
3 被申立人は、申立人3人それぞれに対し、1,000万円を支払わなければ
ならない。
4 被申立人は、申立人3人それぞれに対し、下記の内容の文書を本命令書交付
の日から7日以内に交付しなければならない。
                 記
当社が貴殿らを処遇、賃金及び賞与について不利益に取り扱ったことは、労働組
合法第7条第1号に該当する不当労働行為であると愛知県地方労働委員会によっ
て認定されました。
今後、このような行為を繰り返さないようにします。
 平成 年 月 日
 X1 様
 X2 様
 X3 様
                       株式会社日立製作所
                        代表取締役 Y1
5 申立人3人の平成3年5月分以前の賃金及び同年6月支給分以前の賞与の是
正を求める申立ては、これを却下し、その余の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  5201 継続する行為
本件の当初の申立てが平成4年10月19日であるところ、査定とこれに基づく賃金支給は、それぞれ一体として一個の行為として「継続する行為」に該当するとみるのが相当であるので、平成3年10月18日以前の行為でも救済の対象となるが、工場では毎年5月21日の査定による賃金支給は当年6月分から翌年5月分までであるので、平成3年5月分以前の賃金支給についての申立ては受けることができないとされた例。

5008 その他
5201 継続する行為
申立人は、愛労委平成4年不第4号事件の申立て以降、毎年申立てを繰り返しているが、これは、差別が継続する期間のすべてに関する救済を求めるところにあるとみるのが相当であり、このことは、上記の第4号事件で今後一切の差別の禁止を求めていることからも明らかであるので、この申立ての趣旨を認め、本件命令の日までの賃金及び賞与を救済の対象になり得るものとして扱うとされた例。

1200 降格・不昇格
3501 労働者の行為と不利益取扱の時期との関連
申立人3人はその勤務状況に特に問題が認められないのに、その処遇、賃金及び賞与が低位低額におかれていたとみざるを得ず、その真の理由は、3人の「労働組合の正当な行為」であることは、3人と組合執行部との対立が激しくなったことから差別が始まっていること、3人のビラ配布を嫌悪していた事情が認められること、組合の執行委員長を専従期間中にもかかわらず、対照的に昇格させていること等を併せ考えると一層疑いが深まり、総合的に判断すれば、申立人の処遇、賃金、賞与に対する不利益取扱いであるとされた例。

4419 現存格差を一挙に是正した例
処遇の救済としては、3人の勤務状況に特に問題となる点が認められないことを勘案し、X1を副参事1級に、X2及びX3を1級企画職に格付けすることを命ずるのが相当であるとされた例。

4415 賃金是正を命じた例
本件賃金と賞与についての救済として、疎明された申立人3人の賃金、賞与の状況、勤務状況、同人らの労働組合の正当な行為の内容、当委員会が審査の際に受けた3人の潜在的資質にかかわる心証、上司の証言からうかがわれた職場の雰囲気にかかわる状況等をすべて勘案し、3人が受けた不利益取扱いは同等であったとみなし、3人それぞれに1000万円を支払うべきことを命ずるのが相当であるとされた例。

業種・規模  電気機械器具製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集112集244頁 
評釈等情報   

[先頭に戻る]
 
[全文情報] この事件の全文情報は約464KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。