労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大和交通(カイナラタクシー) 
事件番号  奈良地労委 平成 8年(不)第1号 
申立人  X1 他個人2名 
申立人  カイナラタクシー労働組合 
被申立人  大和交通株式会社 
命令年月日  平成10年12月28日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  本件は、違法ピケによりタクシー業務を妨害したこと、就業時間中に要請行動のためのタクシーパレードを実施したこと及びスト破りした別組合員に暴行したことを理由に執行委員長を懲戒解雇処分に、副委員長及び書記長を出勤停止処分にしたこと、会社のタクシーにステッカーを貼り付けるなどして無断でタクシーパレードに参加したことを理由に書記長を出勤停止処分にしたこと及び団交に誠実に応じなかったことが不当労働行為であるとして争われた事件で、奈良地労委は、組合役員3名に対する処分の撤回及び賃金または減給相当額の支払い、誠実な団交の実施、支配介入の禁止並びに文書交付及び文書掲示を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、X1に対する平成8年5月7日付け懲戒解雇処分を撤回し、原
職に復帰させ、解雇の日から原職復帰の日までの間、同人が受けるはずであった
賃金相当額(一時金を含む)を支払わなければならない。
2 被申立人は、X2に対する平成8年5月7日付け7日間の出勤停止処分がな
かったものとして取扱うこととし、同処分による減給相当額を支払わなければな
らない。
3 被申立人は、X3に対する平成8年5月7日付け7日間の出勤停止処分がな
かったものとして取扱うこととし、同処分による減給相当額を支払わなければな
らない。
4 被申立人は、賃金改定その他の労働条件の改善要求に関し、申立人組合と誠
実に団体交渉しなければならない。
5 被申立人は、争議行為や組合活動等を理由に申立人組合執行委員長X1を懲
戒解雇処分に、同副執行委員長X2、同書記長X3を出勤停止処分に、それぞれ
するなどして、申立人組合の活動に支配介入してはならない。
6 被申立人は、本命令受領後1週間以内に、申立人組合らに対し、下記の文書
を手交すると共に、同文を1メートル×2メートル大の白色木板に明瞭に墨書し
て、被申立人の本社車庫付近の被申立人の従業員らの見やすい場所に2週間掲示
しなければならない。
                 記
 カイナラタクシー労働組合
  執行委員長  X1  殿
      X1     殿
      X2     殿
      X3     殿
  このたび、奈良県地方労働委員会によって、当社が、貴組合の執行委員長X
1氏に対してなした平成8年5月7日付け懲戒解雇処分、同副執行委員長X2氏
並びに同書記長X3氏に対してなした同日付け各7日間の出勤停止処分が、いず
れも貴組合の組合活動を理由とする不利益取扱いであるとともに、貴組合の団結
に対し支配介入するものであり、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する
不当労働行為であると認定されました。
  また同時に、当社が、貴組合との団体交渉にあたって、不誠実な態度をとっ
たことが、同委員会によって、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為
であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
                       平成  年  月  日
                         大和交通株式会社
                          代表取締役  Y1
7 申立人のその余の申立てを棄却する。 
判定の要旨  0414 ピケッティング
組合執行委員長の懲戒解雇の理由の1つである違法ピケについては、タクシーの出庫を実力阻止したといってもタクシーの前に佇立する程度にとどまったにすぎず、その違法性の程度は軽微なものにとどまり、営業所車庫内で行われたもので、会社の社会的名誉や信用を著しく毀損したとは認められず、会社の主張するような重大な企業秩序に違反するものであるとは認められないとされた例。

0420 その他の争議行為
組合執行委員長の懲戒解雇の理由の1つであるタクシーパレードは、一般に、使用者の所有するタクシーを許可なく組合活動に使用することとなり、かかる組合活動に正当性があると直ちに認めることはできないが、会社のタクシー10台がパレードに参加した時間は、午後4時台の1時間程度の短時間で、走行距離も短く、相応するタクシー料金が会社に納金されていることを考えれば、その企業秩序違反の程度は軽微であると判断されるとされた例。

0421 幹部責任
0422 実行行為者の責任
組合執行委員長に対する違法ピケ、タクシーパレード、スト破りした別組合員に対する暴行を理由とする懲戒解雇処分が、ピケ及びタクシーパレードの態様の違法性の程度が軽微であること、暴行の事実がないことからみて、7条1、3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

0421 幹部責任
1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
組合副委員長及び書記長に対する7日間の出勤停止処分が、その理由である違法ピケ、タクシーパレードの態様の違法性が軽微であることから、幹部責任を問うことに籍口して、同人らを威圧、萎縮しようとした不利益取扱いであるとともに、同人らの戦意喪失により求人力を失なわせようとした組合弱体化を企図した支配介入であるとされた例。

1400 制裁処分
書記長に対する3日間の出勤停止処分が、その理由である大阪市内でのタクシー、トラック、観光バスパレードへの参加が、許可なく会社のタクシーを長時間使用し、かつ消費税率引き上げ反対等々労働条件改善要求とは直接関係のないものであることを総合すると、組合活動の正当性を超えて会社の経営権を侵害したもので、不当労働行為に該当しないとされた例。

2244 特定条件の固執
会社が長期間にわたって組合と団交を行って来たことは認められるものの、組合が要求していたにもかかわらず、会社の主張の具体的根拠や裏付け資料を示して説明を尽くしたとの疎明はなく、一貫して12月25日の回答が最終回答だとの態度に固執した会社の賃上げ交渉における態度は不誠実であったといわざるを得ないとされた例。

4617 その他
組合の求めるポスト・ノーティスにつき、「命令受領後3日以内」は早急に過ぎるので、これを「1週間」に延長し、掲示期間として求める「1カ月」は、会社の従業員現模からみて、掲示の内容を周知させるには2週間程度で足りると判断されるので、これを「2週間」に短縮して、ポスト・ノーティスを命ずるのが相当であるとされた例。

業種・規模  道路旅客運送業(ハイヤー、タクシー業) 
掲載文献  不当労働行為事件命令集112集585頁 
評釈等情報   

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