労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  東陽社 
事件番号  東京地労委 平成 6年(不)第7号 
申立人  全労連・全国一般労働組合東京地方本部中部地域支部東陽社分会 
申立人  全労連・全国一般労働組合東京地方本部 
被申立人  株式会社東陽社 
被申立人  株式会社朝日新聞社 
被申立人  株式会社朝日エージェンシー 
命令年月日  平成10年 8月 4日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  朝日新聞社の専属広告代理店である東陽社が経営不振のため解散し、朝日新聞社が全額出資して設立された朝日エージェンシーに営業譲渡したことに伴い、(1)東陽社が組合員を解雇したこと、(2)朝日新聞社及び朝日エージェンシーが東陽社の営業譲渡及び組合員の雇用関係に関する団体交渉に応じなかったことが不当労働行為であるとして争われた事件で、東京地労委は、(1)東陽社に対し、組合員12名の解雇がなかったものとしての取扱い、従業員でなくなるまでの間の賃金の支払、文書交付等を命じ、(2)朝日新聞社に対し、朝日エージェンシーへの採用条件についての誠実団交を命じ、その余の申立て((1)朝日新聞社、朝日エージェンシーが連帯して組合員12名の賃金の支払、(2)朝日エージェンシーの従業員としての原職復帰、(3)朝日エージェンシーに対する採用条件に関する誠実団交)は棄却した。 
命令主文  1 被申立人株式会社東陽社は、申立人全労連・全国一般労働組合東京地方本部
および申立人全労連・全国一般労働組合東京地方本部中部地域支部東陽社分会所
属の組合員X1、同X2、同X3、同X4、同X5、同X6
、同X7、同X8、同X9、同X10、同X11および同
X12に対する平成6年2月28日付解雇がなかったものとして取り扱い、平
成6年3月1日以降、同人らが同社の従業員でなくなるまでの間、賃金相当額を
支払わなければならない。
2 被申立人株式会社東陽社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容
の文書を申立人組合に交付しなければならない。
                 記
                            年  月  日
 全労連・全国一般労働組合東京地方本部
 中央執行委員長  X13殿
 全労連・全国一般労働組合東京地方本部
 中部地域支部東陽社分会
 執行委員長    X9殿
                      株式会社東陽社
                      代表清算人 Y1
 当社が、貴組合との確認書を無視し、貴組合と誠実な協議を行わずに、異例で
性急な手続きによって当社の解散を行い、貴組合員を解雇したことは、不当労働
行為であると東京都地方労働委員会において認定されました。今後このような行
為を繰り返さないよう留意します。
(注:年月日は文書を交付した日を記載すること。)
3 被申立人株式会社東陽社は、前各項を履行したときは、すみやかに当委員会
に文書で報告しなければならない。
4 被申立人株式会社朝日新聞社は、申立人組合が、被申立人株式会社朝日エー
ジェンシーへの採用条件について団体交渉を申し入れた場合には、誠意をもって
これに応じなければならない。
5 その余の申立てを棄却する。 
判定の要旨  4916 企業に影響力を持つ者
朝日新聞社が広告取引によって、東陽社に対して大きな影響力を持ち、また東陽社に退職者や出向者を役員として送り込み、これら役員が東陽社の株式を保有するほか、第1次再建計画、第2次再建計画に係わるなど経営に深く関与し、解散に重要な役割を果たしていたことが認められていたとしても、朝日新聞社が東陽社の意思決定そのものに関与したと認めるに足る疎明がない以上、法的には東陽社が自らの意思で行ったとみざるを得ず、朝日新聞社が東陽社の解散及びこれに伴う従業員の解雇に関して、労働組合法上の使用者であるまでとはいえないとされた例。

1800 会社解散・事業閉鎖
3105 事業廃止、工場移転・売却
朝日新聞社の提案を受け入れて、会社の解散を決定した場合であったとしても、組合の強い反発を憂慮し、誠実な協議を行わず、性急な手続きによって会社を解散することにより、組合が重大な打撃を受けることを認識しつつ、組合が効果的な対応をなしえないうちに従業員全員を解雇したことは、組合の運営に対する支配介入に当たるとされた例。

1500 不採用
1900 営業譲渡・合併
(1)営業譲渡後の朝日エージェンシーが、募集に当たり、組合所属を理由に差別しない方針を表明していたこと(2)応募資格の設定や合否の決定に当たってどのような差別が行われていたかについて組合の具体的な主張、疎明がないこと(3)組合の脱退者が相次ぎ、従業員の組合所属について組合、会社ともに十分な把握ができないこと等が認められる場合、採用選考に当たり、組合員に対する差別が行われたとはいえないとされた例。

2301 人事事項
4916 企業に影響力を持つ者
(1)朝日エージェンシーが、東陽社の従業員を一部受け入れ、営業活動を引き継ぐことを目的に設立されたこと、(2)朝日エージェンシーが朝日新聞社の全額出資で設立され、役員の全員が朝日新聞社から派遣されていたことが認められる場合、朝日エージェンシーと朝日新聞社は、朝日エージェンシーの設立と従業員の採用に関する限りは、一体のものであったといえるとされた例。

2130 雇用主でないことを理由
4908 営業譲渡後の譲受人
解散した会社の業務内容や取引先との関係がそのまま受け継がれ、解雇された者の一部がそこに雇用されることが解雇と密接不可分の措置として提案されている場合、新会社による被解雇者の受け入れは、退職条件の一部をなすというべきであり、このような場合にあっては、労組法7条の使用者には、当該労働者との間に雇用関係の成立する可能性が現実かつ具体的に存する者も該当し、朝日エージェンシーに組合員が引き継がれる現実の可能性があった以上、朝日新聞社及び朝日エージェンシーは、採用条件や採用後の労働条件について団体交渉に応ずべき立場にあったといえるとされた例。

4402 企業閉鎖・偽装解散と救済
4406 バックペイに利子・付加金を付したもの
東陽社の支配介入の救済としては、東陽社の行った解雇がなかったものとして取り扱うよう命じることが適当であるが、会社がすでに清算会社となっており、原職ないし原職相当職への復帰を命じることはできないから、解雇の日の翌日以降の賃金相当額の支払いのみを命じるとされた例。

4612 P.Nに替えて他の措置を命じた例
会社は、清算法人となっており、営業活動を行っておらず、文書掲示を命じる実益は乏しいので、文書交付を命じるに止めるとされた例。

4908 営業譲渡後の譲受人
4916 企業に影響力を持つ者
5006 採用の請求
東陽社解散の過程における支配介入の責任は東陽社にあり、朝日新聞社や朝日エージェンシーに帰責することはできないから、朝日エージェンシーに対して東陽社を解雇された組合員12名の採用を命じることはできず、東陽社から営業の全部の譲渡を受けて、東陽社の業務を引き継いでいるとして、朝日エージェンシーの使用者性を肯定したとしても、組合員らを承継から除外したことが不当労働行為意思によるものとまでは認められない本件にあっては、東陽社の行った支配介入行為の救済として、組合員らを朝日エージェンシーに採用するよう命じることは相当でないとされた例。

2301 人事事項
2400 その他
団交申入書に記載している議題からは、その内容が義務的団交事項であるか否か疑問がないわけでもないとしても、申入書の全文等全体からみれば、組合員の解雇と新会社への採用手続きが一方的に行われている事態に抗議するとともに、組合員の雇用を確保しようとする趣旨とみられるから、団交議題足りうるとされた例。

業種・規模  情報サービス・調査業(ソフトウェア業等)、広告業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集111集168頁 
評釈等情報   

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