労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大井交通 
事件番号  東京地労委 平成 7年(不)第60号 
申立人  大井交通労働組合 
被申立人  大井交通株式会社 
命令年月日  平成10年 6月16日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  会社が、(1)社長が組合を誹謗中傷する発言をしたこと、(2)組合費等のチェック・オフを一方的に中止したこと、(3)始末書未提出等を理由に組合役員3名に対し乗務停止措置をとったこと、(4)組合との団体交渉に誠意をもって応じなかったこと、(5)組合から申し出のあった会社施設の利用を許可しなかったこと、(6)組合役員選挙に当たり候補者人事に介入したこと等が争われた事件で、東京地労委は、組合役員3名に対する乗務停止措置がなかったものとしての取扱い及びバック・ペイ、文書手交(上記(1)ないし(4)に関して)並びに履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人大井交通株式会社は、申立人大井交通労働組合執行委員長X1に対し
て平成7年8月30日から同年10月21日までの21乗務日について行った乗
務停止措置、同執行委員X2に対して平成7年9月16日から同年10月18日ま
での14乗務日について行った乗務停止措置および同書記長X3に対して平成7年
9月18日から同年10月20日までの13乗務日について行った乗務停止措置
をそれぞれなかったものとして取り扱い、乗務停止日数に対応する平均賃金相当
額を支払わなければならない。
2 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申
立人組合に交付しなければならない。
                 記
                        平成  年  月  日
 大井交通労働組合
 執行委員長   X1   殿
                        大井交通株式会社
                        代表取締役  Y1
 当社が行った下記行為は、東京都地方労働委員会において不当労働行為である
と認定されました。今後このような行為を繰り返さないよう留意します。
                 記
 (1) 平成7年7月28日、同年8月27日および同年9月28日の常会で
Y1代表取締役が貴組合を誹謗中傷する発言を行ったこと。
 (2) 平成7年7月から組合費および組合闘争資金一斉積立金についてのチ
ェックオフを貴組合と何ら協議もせず一方的に中止したこと。
 (3) 貴組合執行委員長X1氏に対し平成7年8月30日から同年10月21
日まで、同執行委員X2氏に対し平成7年9月16日から同年10月18日まで、
同書記長X3氏に対し平成7年9月18日から同年10月20日まで、それぞれ乗
務の停止をしたこと。
 (4) 貴組合から申入れのあった平成7年8月23日付、同年9月9日付お
よび同年10月18日付の団体交渉に応じなかったこと。
  (注、年月日は交付した日を記載すること。)
3 被申立人会社は、前各項を履行したときは、すみやかに当委員会に文書で報
告しなければならない。
4 その余の申立てを棄却する。 
判定の要旨  5002 不作為命令または不確定な内容の請求
5141 補正されない申立て・要件不備
救済申立書に記載する「請求する救済の内容」は、労働委員会がいかなる救済を与えることが妥当かを検討する際の一応の目安であると解されており、労働委員会には個々の事案に応じた具体的妥当な救済方法を決定する広範な裁量権が与えられていることなどからすると、組合の請求する救済の内容が具体性に欠けているからといって、その一事を以て却下事由には当たらないとされた例。

2624 組合人事への干渉
組合員X1に対する社長秘書Y2の発言は、組合費等横領問題の発生に社長が多大の関心を示していることを知っている同人が、自らの個人的判断でX1に助言を行ったとみることが相当であり、Y2が社長の意を体してX1に対し立候補を思い止まらせようとしたものであったとまでみることは困難であり、Y2の発言が組合の組織運営に対する支配介入であるとはいえないとされた例。

2620 反組合的言動
常会で、社長が公然と、組合を「…泥棒団体」などと呼んだほか、組合の存在を否定する発言を行ったことは、単に従業員たる組合役員のモラルの問題として述べたにすぎないと解することはできず、組合費等横領問題に藉口した支配介入行為であると判断することが相当であるとされた例。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
本件組合費等のチェックオフは、労使の書面による協定によらずして行われていたものであるが、(1)約20年近くにわたって格別問題なく行われてきたにもかかわらず組合との協議なく突然一方的に中止したこと、(2)親交会の会費のチェックオフは依然として継続していること、(3)社長の組合誹謗等の発言を併せ考えれば、その中止の真の理由は、組合費等横領問題の発声を奇貨として、組合財政に打撃を与える意図の下に行われたものと推認せざるを得ず、支配介入に該るとされた例。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
任意退職金一斉積立金等5費目のチェックオフについては、労働基準法第24条の全面的な適用を受けるものとみざるを得ず、同法同条所定の用件を満たさないチェックオフを会社が一方的に廃止したとしても、その目的・内容等が組合費等のようにそれ自体明確であって、組合運営に対する影響力の大きなことが明らかなものとは事情を異にし、会社のこの措置によって組合運営上いかなる不都合が生ずるかの疎明もないので、支配介入には該らないとされた例。

1302 就業上の差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
常会欠席を理由に会社がX1委員長に始末書の提出を求めたことに対し、同人がこれを拒んだとしても、これを反抗的態度であるとみることは行き過ぎの誹りを免れず、したがって、同人を乗務停止としたことは合理的理由を欠くものであり、その真の理由は、社長の嫌悪する組合の最高責任者である同人に対し報復的色彩を帯びた措置をとることによって組合を動揺させることにあったと判断せざるを得ず、不当労働行為であるとされた例。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
社長が高速券についてもチェックオフが行われていることに奇異な感を覚え、社長の命を受けたY3取締役が組合の会計担当執行委員であるX2に対しその事情の説明を求めたとしても、そのこと自体を直ちに非難することはできないと解すべきであり、支配介入行為に該当するとまではいえないとされた例。

1302 就業上の差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
Y3取締役は、高速券の処理について組合に正式に申し入れることもなく、X2執行委員に対し執拗に該文書の提出を求めて、これに固執し、X2執行委員が上司の指示を無視する態度をとったと決めつけ乗務停止としたことは、行き過ぎた行為であったといわざるを得ず、その真の理由は、X2執行委員が社長の嫌う組合の執行部に一翼を担う役職に就いたことに対し、報復的色彩を帯びた措置をとることによって組合を動揺させることにあったものと判断せざるを得ず、不当労働行為であるとされた例。

1302 就業上の差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
X3書記長の業務妨害がいかなる内容、いかなる程度のものであったかについては具体的な疎明がなく、同人の発言には多少の行き過ぎがあるものの、会社のとった措置は均衡を失するものといわざるを得ず。その真の理由は、X3書記長が、同社長の嫌う組合の中軸である書記長という要職に就いたことに対し、報復的色彩を帯びた措置をとることによって組合を動揺させることにあったものと判断せざるを得ず、不当労働行為であるとされた例。

2248 実質的権限のない交渉担当者
X4委員長を頂点とする組合の新執行部が構成されてからは、会社は、組合が重ねて団体交渉を申し入れているにもかかわらず、これに応じないか、権限の不明確なものを団体交渉担当者として出席させたに過ぎず、常会における組合無視の社長発言からすれば、会社は少なくとも組合の新執行部構成後は、最初から誠意をもって団体交渉に応ずる意思がなかったものと判断せざるを得ず、不当労働行為であるとされた例。

3020 組合活動への制約
組合が会社施設を使用しなければならない差し迫った必要性があったとまでは認められず、会社は、組合から申し出があれば会社施設の使用を許可しなければならない特段の事情も見出し難いから、組合の提出した本件使用許可願の受取りを拒否したからといって、組合の組織運営に支配介入したとまではいえないとされた例。

5002 不作為命令または不確定な内容の請求
組合は、本件乗務停止措置について、将来にわたる不作為を求めているものの、実際には、現実になされた措置をなかったものとして取り扱い、かつ、その被った経済的損失の補填を求めていると解され、労働委員会は救済の方法に関して広範な裁量権を与えられているのであるから、具体的事案に即した現実的な救済を命ずることができるものであるとして、本件乗務停止措置がなかったものとしての取扱い及びバック・ペイを命じた例。

4505 その他
本件においては改めて団体交渉を命ずる必要性に乏しいとして文書手交を命じた例。

業種・規模  道路旅客運送業(ハイヤー、タクシー業) 
掲載文献  不当労働行為事件命令集111集59頁 
評釈等情報   

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