労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  富士運輸 
事件番号  奈良地労委 平成 8年(不)第2号 
申立人  X1 他4名 
申立人  奈良県自動車交通労働組合富士運輸分会 
被申立人  富士運輸株式会社 
命令年月日  平成10年 3月24日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  本件は、会社が(1)組合員2名を解雇したこと、(2)組合員やその家族に対し暴言等により、組合活動に支配介入したこと、(3)労働条件について誠実に団体交渉しなかったこと、(4)別組合を設立し、入社時に別組合への加入強制したこと、(5)賃金規程の変更及び不当な取扱いにより組合員の賃金を減額させるようにしたことが争われた事件で、奈良地労委は、(1)組合員2名の解雇撤回、原職復帰、バックペイ、(2)支配介入の禁止、(3)誠実団交及び(4)文書手交を命じ、その余の申立ては棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人組合の組合員らに対して脅迫、中傷、暴言を繰り返すな
どして同組合の活動に支配介入してはならない。
2 被申立人は、申立人X1及び申立人X2に対する平成8年5月22
日付の解雇通告を撤回し、原職に復帰させ、解雇前に従事していた運行コースに
相当するコースに復職させなければならない。
3 被申立人は、申立人X1及び申立人X2に対して、平成8年5月2
2日以降、原職に復帰させるまでの間に同人らが受けるはずであった賃金相当額
(一時金相当額を含む。)を支払わなければならない。
4 被申立人は、組合員の労働条件に関する団体交渉については、誠実にこれを
行わなければならない。
5 被申立人は、申立人に対して、本命令書受領の日から1週間以内に下記の文
書を手交しなければならない。
                 記
 当社が貴組合及び貴殿に対し行った次の行為は、奈良県地方労働委員会におい
て、労働組合法第7条第1号、第2号及び第3号に該当する不当労働行為である
と認定されました。よって、今後はこのような行為を繰り返さないようにいたし
ます。
 (1)貴組合員らに対して脅迫、中傷、暴言を行い貴組合の活動に支配介入し
たこと。
 (2)平成8年5月22日付で貴組合のX1分会長及びX2書記次長を解雇し
たこと。
 (3)貴組合との団体交渉に誠実に応じなかったこと。
   平成  年  月  日
 奈良県自動車交通労働組合富士運輸分会
  分会長  X1殿
    X1殿
    X2殿
                    富士運輸株式会社
                      代表取締役 Y1
6 申立人のその余の申立は、これを棄却する。 
判定の要旨  2620 反組合的言動
2700 威嚇・暴力行為
3700 使用者の認識・嫌悪
組合が抗議文書を提出したことに対して、組合員に対し「脅迫でくるんだったら家族もそれぐらいではすまされん。」等の会社の言動は、正当な組合活動を抑制する不当労働行為であるとされた例。

2620 反組合的言動
3700 使用者の認識・嫌悪
特定の組合員を名指しで攻撃し、組合員の孤立化を意図した文書の掲示は不当労働行為であるとされた例。

0700 職場規律違反
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
短期間に連続的に有給休暇がとられ、会社の業務に支障を来したとしても、就業規則が従業員に周知されず、年次有給休日暇の時季指定権も認められていなかった場合、その事件の多くは会社の体制不備にあったものというべきであって、これを理由とする解雇は不当労働行為であるとされた例。

2500 別組合の結成・援助
申立人組合結成の1ヵ月後、元課長らが設立準備委員となって別組合を結成し、その発足時の組合員役員の多くが新入後間もない社員だとしても、会社が別組合を結成させたとまでは言えない。会社が新入社員を強制的に別組合に加入させたとの具体的疎明がなく別組合が労働組合として実質的な活動を行っていることから、不当労働行為に当たらないとされた例。

2212 交渉の場所・時間
2230 不穏当な態度
2240 説明・説得の程度
団交が十分な回数行われ、組合の要求がある程度実現されていることが認められても、会社が提案した案の内容の根拠等を具体的な資料を示すなどして、説明しなかったこと、団体交渉の席で不穏当な発言が認められること、合理的理由なく団交期日の延期・変更をしたこと、組合役員の出席が困難な日程で交渉期日の認定をしたことが認められる場合、会社の態度は不誠実な団交に当たるとされた例。

1201 支払い遅延・給付差別
(1)賃金規程変更後、賃金の減少した組合員もいるが、逆に増加した者もいること、(2)組合員の従事するコースが他のコースと比較してどのような不利益が認められるのか具体的に立証されていないこと、(3)脱退組合員の中にも脱退前の賃金と比べて必ずしも全員が増加しているわけではないことから、賃金規程の変更及び運用において組合員に差別乃至不利益な取扱いをした不当労働行為には当たらないとされた例。

業種・規模  道路貨物運送業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集110集382頁 
評釈等情報   

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