概要情報
事件名 |
そごう(再雇用差別) |
事件番号 |
大阪地労委 平成 8年(不)第20号
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申立人 |
関西合同労働組合 |
被申立人 |
株式会社そごう |
命令年月日 |
平成10年 2月27日 |
命令区分 |
全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、(1)阪神大震災による神戸店の営業不能に伴うFS社員の雇止めに際し、組合との団体交渉の席上、営業再開時には希望者を優先的に再雇用する旨表明し、その後、同店の営業の再開に際して他の元FS社員を再雇用したにもかかわらず、分会員16名を再雇用しなかったこと、(2)職場復帰に伴う労働条件についての団体交渉申入れに誠実に応じなかったことが争われた事件で、大阪地労委は、会社に対し(1)分会員16名のFS社員としての再雇用及び(2)文書手交を命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人は、申立人組合員X1、同X2、同X3、同X4、同X5、同X6、同X7、同X8、同X9、同X10、同X11、同X12、同X13、同X14、同X15及び同X16を、平成8年4月1日付けで、既に同日付けでフリースタッフ社員に雇用した者と同様の条件でフリースタッフ社員に雇用したものとして取り扱わなければならない。 2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない 。 記 年 月 日 関西合同労働組合 委員長 X17殿 株式会社そごう 代表取締役 Y1 当社が、貴組合の組合員X1氏ら16名を平成8年4月1日付けでフリ ースタッフ社員に雇用しなかったこと、及び貴組合から同年2月10日付けで申 入れのあった団体交渉に応じなかったことは、大阪府地方労働委員会において労 働組合法第7条第1号、第2号及び第3号に該当する不当労働行為と認められま した。今後このような行為を繰り返さないようにいたします。 |
判定の要旨 |
1106 契約更新拒否
会社が、経営悪化によるリストラ計画の実施中に震災により多大の被害を受け、勤務させるべき職場がなくなったFS社員を雇止めにして人件費の軽減を図ろうとしたことはやむを得ない措置と認められるうえ、天災事変による事業の縮小等を理由とする解雇の方法を採らず雇用契約期間満了による雇止めとしたこと、本館再開の折には希望者を優先的に再雇用するとの見解を併せ考えると、FS社員の雇止めには合理的理由があるものと認められるとされた例。
1106 契約更新拒否
FS社員の雇止めは整理解雇の4条件に違反するもので、雇止めは本館再開時の雇用再開を条件とする雇用の一時中断であるとの組合の主張が、FS社員の雇止めはやむを得ないものと認められ、会社が雇止めの説明と併せて本館再開時の優先的再雇用を表明したからといって、再雇用の義務を持つ雇用の一時中断となるものではないとして斥けられた例。
1500 不採用
本館再開によるFS社員の再雇用について、分会員を、会社が全FS社員に意思表示していた再雇用についての方針を明文化したにすぎない確認書の有無を理由として、他のFS社員と別異に取り扱う合理的理由は認められないので、再雇用に関する協定・協約等の有無にかかわらず、分会員16名は他のFS社員と同様に優先的再雇用の対象になるというべきであるとされた例。
1500 不採用
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
3700 使用者の認識・嫌悪
会社が分会員に再雇用に関する説明会の案内状すら送付せず再雇用から排除したことには合理的理由がなく、継続雇用を求める組合活動を嫌悪し、分会員が退社届を提出しないことを奇貨として、分会員を会社から排除することを企図してなされたものであると判断するのが相当であり、労組法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為に当たるとされた例。
3201 不当労働行為とされなかった例
本件再雇用拒否は労働委員会への救済申立てを理由とするもので労組法第7条第4号に該当するとの組合の主張が、会社が分会員を除くFS社員に再雇用に関する確認書を交付したのは救済申立て前であることなどから斥けられた例。
2230 不穏当な態度
会社が、分会員の再雇用に関する団体交渉申入れに対し、諸般の状況の変化が生じているにもかかわらず、前回の団交における組合の暴力行為についての謝罪と、今後暴力行為をしないことの確約を求めて団交に応じなかったことは、FS社員の雇止めの撤回、継続雇用を求める組合を嫌悪し、会社側交渉員の受傷を口実として団交を拒否したとみるのが相当であり、団交拒否の正当事由とはいい難いとされた例。
2130 雇用主でないことを理由
分会員を再雇用する義務はないのであるから、同問題に関する団交に応じる義務はないとの会社の主張が、分会員を再雇用しなかったこと自体が不当労働行為に当たることから斥けられた例。
4503 他の救済との関係で団交の必要性を認めなかった例
FS社員に再雇用した者と同様の条件で再雇用されたものとして分会員を取り扱うことを命じているので、同趣旨である議題の団交については改めて命じる必要はないとされた例。
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業種・規模 |
卸売業、小売業、飲食店 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集110集261頁 |
評釈等情報 |
 
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