労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  榮交通 
事件番号  大阪地労委 平成 6年(不)第12号 
大阪地労委 平成 6年(不)第38号 
大阪地労委 平成 7年(不)第5号 
申立人  自交総連栄交通労働組合 
被申立人  榮交通株式会社 
命令年月日  平成 8年12月27日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  本件は、会社が<1>慰安会の中止等に関する団交に誠実に応じていないこと、<2>新車の配車に関して組合と協議して決定していないこと、<3>会議室の使用を禁止したこと、<4>慰安会の中止及び交通事故の示談交渉の不実施等の不利益取扱いを行ったこと、<5>X1に対する乗務拒否期間中の賃金を支払わなかったこと、<6>組合員に対する乗務拒否及び車両の配車についての不利益取扱いを行ったことが不当労働行為であるとして申立てのあった事件で、大阪地労委は<1>今後新車の配車を行うにあたっては労使で決定する旨の手続と同様の手続で行うこと、<2>X1に対し乗務拒否期間中の賃金相当額(年5分加算)の支払い、<3>上記申立ての<1>から<3>、<5>及び<6>のうち遅刻を理由に組合員3名を遅刻を理由に乗務拒否したことに関する文書手交を命じた。 
命令主文  1 被申立人は、今後新車の配車を行う際には、平成5年3月26日付け被申立
人代表取締役名の申込書に記載された労使で決定する旨の手続と同様の手続を行
った上で新車の担当乗務員を決定しなければならない。
2 被申立人は、申立人組合書記長X1に対し、同人が平成6年6月21日
から同年8月2日までの間に乗務できなかった16.5乗務の賃金相当額及びこ
れに年率5分を乗じた金額を支払わなければならない。
3 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない

                 記
                             年 月 日
 自交総連栄交通労働組合
  執行委員長 X2 殿
                      榮交通株式会社
                       代表取締役 Y1
 当社が行った下記の行為は、大阪府地方労働委員会において、労働組合法第7
条第1号、第2号及び第3号に該当する不当労働行為であると認められました。
今後このような行為を繰り返さないようにいたします。
                 記
(1)貴組合から平成6年1月8日、同月15日及び同年2月4日付けで申入れ
のあった車両の使用期間の延長を議題とする団体交渉に誠意をもって応じなかっ
たこと。
(2)貴組合から平成6年5月1日に申し入れられた同月15日の会議室の使用
を拒否したこと。
(3)新車の配車の決定において、平成6年度から、同5年3月26日付け当社
代表取締役名の申込書に記載された労使で決定する旨の手続と同様の手続を行わ
なくなったこと。
(4)貴組合書記長X1氏に対し、平成6年6月21日から同年8月2日ま
での間、乗務を拒否したこと。
(5)平成6年11月10日及び同月24日貴組合組合員X3氏に対して、
同月10日貴組合組合員X4氏に対して、及び、同月26日貴組合組合員X5氏
に対して、遅刻を理由に乗務を拒否したこと。
4 申立人のその他の申立ては棄却する。 
判定の要旨  2251 一方的決定・実施
団交において、会社が使用期間を5年に延長する車両は一台限りである旨約束したにもかかわらず、その後それ以外の車の使用期間の延長を通告し、それに対する組合の団交要求に応ぜず、一方的に他の車両の使用期間を5年に延長したことは、労働組合法7条2号の不当労働行為に該当するとされた例。

3020 組合活動への制約
会社が組合に会議室の使用を拒否したことは、<1>従来、中間決算関連業務を行う時期である5月にも使用を許可していたこと、<2>本件において、会社が中間決算の税務申告のため会議室を使用する必要があったとしても、2週間前の申入れであれば会議室を使用可能な状態にすることは可能であり、例年と違い特段使用を不可能とする事情があったとは認められないこと、<3>当時組合が労働委員会に不当労働行為の申立てを行っており、これに関する組合の臨時大会のための使用が目的であったことから、労働組合法7条3号の不当労働行為に該当するとされた例。

1601 福利厚生上の差別
会社が慰安会を中止にしたことは、慰安会が全従業員を対象としており、その中止は全従業員に及ぶものであり、組合員に差別的な不利益取扱いが生ずるものでなく、また、会社が慰安会を中止した理由は業績悪化でやむを得ないものであり、更にこのことについて会社は団交において説明していることから、不当労働行為とは認められないとされた例。

1604 その他
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
組合員の交通事故に関し、会社が処理を放置したとまではいえず、また、組合員でない他の従業員と比較して不利益な取扱いをしたとの事実も認められず、会社の対応が不当労働行為とはいえないとされた例。

1401 労務の受領拒否
2620 反組合的言動
交通事故の治療を終えて出勤した組合書記長X1について、配車の都合がつかなかったことを理由として、当初の月水金の乗番から他の組合役員と異なる火木土の乗番へ変更したことは、不当労働行為救済申立てを後った後の組合の会議開催を困難にするものであり、また、火木土の乗番指示に従わず乗務しなかったことに関して、理由書の提出を求め、提出された理由書の訂正を拒否した同人を乗務させなかったことは、労働組合法7条1号及び3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

2901 組合無視
従来、組合から意見を聞いた上で新車の配車を決定する慣行があったのにもかかわらず、平成5年度において会社が一方的に破って新車の配車を行ったことは、労働組合法7条3号に該当するとされた例。

1302 就業上の差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
組合員3名が遅刻した際に乗務を拒否したにもかかわらず、他の組合員が遅刻した際に乗務させたことは、会社の対応として均衡を失するものであり、また、この時期は組合が労働委員会に不当労働行為の救済申立てを行っており、会社と対立していたことを考え併せると、会社の遅刻した組合員に対する乗務拒否は、差別的不利益取扱いを行い、もって組合の弱体化を企図したものと判断され、労働組合法7条1号及び3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

業種・規模  道路旅客運送業(ハイヤー、タクシー業) 
掲載文献  不当労働行為事件命令集106集348頁 
評釈等情報   

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