概要情報
事件名 |
武谷病院 |
事件番号 |
東京地労委 平成 3年(不)第52号
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申立人 |
全関東単一労働組合武谷病院分会 |
申立人 |
全関東単一労働組合 |
被申立人 |
医療法人 レニア会 |
被申立人 |
武谷病院ことY1 |
命令年月日 |
平成 8年 3月19日 |
命令区分 |
全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、<1>病院長Y1が組合員X1及びX2を解雇したこと(その後同病院は法人化されL法人となり、Y1が理事長に就任した)、及び<2>同解雇問題に関する組合との団交を拒否したことが不当労働行為であるとして申立てのあった事件である。 東京地労委は、<1>及び<2>について不当労働行為と認定し、組合員X1及びX2に対する解雇の取消し及びL法人への原職復帰、バックペイ(<1>に関して)、文書掲示(<2>に関して)を命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人武谷病院ことY1は、申立人全関東単一労働組合武谷病院 分会の組合員であるX1およびX2に対し、平成3年8月15日付解 雇がなかったものとして取り扱い、解雇の日から平成5年11月30日までの間 に両名が受けるはずであった賃金相当額および一時金を支払わなければならない 。 2 被申立人医療法人社団レニア会は、X1およびX2に対し、平成 5年12月1日からその雇用する労働者(X1は視能訓練士、X2は 看護婦)として取り扱い、同日から同レニア会に就労するまでの間に両名が受け るはずであった賃金相当額および一時金を支払わなければならない。 3 被申立人医療法人社団レニア会は、本命令書受領の日から1週間以内に55 センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に、下記内容を楷 書で明瞭に墨書して、医療法人社団レニア会武谷病院の正面玄関入り口および裏 門入り口の従業員の見やすい場所に、10日間提示しなければならない。 記 年 月 日 全関東単一労働組合 執行委員長 X3 殿 全関東単一労働組合武谷病院分会 分会長 X1 殿 医療法人社団 レニア会 理事長 Y1 全関東単一労働組合が、平成3年8月29日に武谷病院に申し入れた、X1 およびX2の解雇問題を議題とする団交交渉を武谷病院が拒否したこと は、不当労働行為であると東京都地方労働委員会において認定されました。今後 このようなことを繰り返さないよう留意します。 (注;年月日は文書を掲示した日を記載すること。) 4 被申立人らは、前各項を履行したときは、すみやかに当委員会に文書で報告 しなければならない。 |
判定の要旨 |
0200 宣伝活動
組合のビラ配布に関して、使用者の名誉・信用を傷つけ、誹謗中傷したビラの配布は正当な組合活動の範囲をを逸脱している。ビラの内容が事実に基づく場合及び組合を非難する怪文書に対する抗議行動としてビラを配布した活動は、正当な組合活動の範囲内である。
0200 宣伝活動
3020 組合活動への制約
使用者がビラ配布について、ビラの内容について事前に承認を得なければならないとし、ビラの配布時間等について組合との協議の余地なしとしたことは、組合活動の自由を不当に制限するものである。
1102 業務命令違反
職場で任意の意識調査を拒否し、調査終了後、労働者の声は労働者自身でまとめようとのビラを配布したことは正当な組合活動といえる。使用者が業務調査の目的、内容を記載した書面を交付後、格別の理由もなく、拒否し続け、調査を1ヶ月遅らせたこと、何らの反省の態度を示さなかったことは業務命令違反である。
0210 リボン・ワッペン等の着用
3105 事業廃止、工場移転・売却
リボンの形、大きさ、書かれた文言には問題がなく、同時期に別組合のリボン着用を黙認していることから、組合員のリボン着用だけを職務専念業務違反とすることは著しく権衡を失する。
0201 就業時間中の組合活動(含職場離脱)
0203 職場闘争と業務妨害
組合員が腕を掴んだり、立ちはだかったとしても、使用者が、団交の申し入れに対し、日程を返答する旨約束しながら、返答をせず誠意を持って応じないので、説明を求めた際のことであって、一方的に職場秩序攪乱及び業務命令違反と決めつけることは問題がある。
0500 勤務成績不良
医師の指示なく直接患者に病名等を告げたこと、カルテに別人のデーターを記載したことなど職務怠慢行為があったとしても、その後患者に事情を説明して謝罪していることから事後処理が無反省、無責任ということはできない。
0210 リボン・ワッペン等の着用
名札着用の業務命令を拒否し、名札に職位はいらないとのビラを配布しても、不着用期間が2日間であったこと、組合として対応を考える時間的余裕を必要としていた等の事情を考えると職場秩序攪乱とまでは言い難い。
0410 目的・手続き
組合は知事及び地労委に争議行為を実施する旨の通知をしており、労働関係調整法等に違反するものではない。
0500 勤務成績不良
組合員の就業規則違反は明らかであるが、使用者にY2総務部長が就任して以降、組合への嫌悪を強めていったこと、懲戒規定の就業規則未整備のまま懲戒処分を行っていること、別組合の組合活動と組合の組合活動とを差別的に扱っていること、不利益処分の処分としては到底合理性の認められない種々の理由を主張していることから、組合員を解雇したことは不当労働行為である。
4907 合併・組織変更後の新企業体
従来の病院の敷地、建物、設備及び雇用していた従業員を引き継ぎ、前の病院の院長と現在の法人の理事長が同一であることからみて、法人は病院と実質的同一性を有する法人として継続している。 本件にあっては、病院の不当労働行為責任を問いうるものと解すべきであるから、法人に対しても不当労働行為責任を負わせることとする。
4505 その他
病院が団交を拒否したことは不当労働行為であるが、組合員の就労を病院ではなく法人に命じているのであるからポストノーティスにとどめる。
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業種・規模 |
医療業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集104集225頁 |
評釈等情報 |
 
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