事件名 |
日立製作所 |
事件番号 |
東京地労委 平成 4年(不)第50号
東京地労委 平成 5年(不)第61号
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申立人 |
X2 |
申立人 |
X1 |
被申立人 |
株式会社日立製作所 |
命令年月日 |
平成 8年11月 5日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含
む) |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、X1及びX2に対し、<1>昭和52年以降賃金を
低位に査定し、職群等級を低位に格付けしたこと、<2>配転、社宅入居等について差別したことが不当労働行為であるとして申
立てがあった事件である。東京地労委は、平成4年10月をもって申立人X1を参事に、X2を副参事1級に是正し、是正した等
級の者に支払われるべき賃金と既支給分との差額を支払うこと、更にX1については平成3年度から4年9月までの、X2につい
ては元年度から4年9月までの賃金を是正し、既に支払われた賃金との差額を支払うこと、文書掲示、東京地労委への履行報告等
を命じ、その余の申立ては却下した。 |
命令主文 |
1 被申立人株式会社日立製作所は、平成4年10月をもって、申立
人X1
を参事に、同X2を副参事1級にそれぞれ是正し、各々是正した等級の者に
支払われるべき賃金とすでに支払われた賃金との差額を支払わなければならない
。
2 被申立人会社は、申立人X1については平成3年度から4年9月までの
、同X2については平成元年度から4月9日までの賃金を、〔別表〕記載の
各年度の賃金に是正し、すでに支払われた賃金との差額を支払わなければならな
い。
3 被申立人会社は、第1項および第2項の差額に対して、各支給日の翌日から
差額の支払日まで、年6分の割合による金員を付加して支払わなければならない
。
4 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、55センチメートル
×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に、下記の内容を楷書で明瞭に墨
書して、被申立人会社の日立研究所および情報システム事業部の従業員の見易い
場所に10日間掲示しなければならない。
記
年 月 日
X1 殿
X2 殿
株式会社日立製作所
代表取締役 Y1
当社が貴殿らの賃金、資格を低位にとどめおいたことは、いずれも不当労働行
為であると東京都地方労働委員会において認定されました。今後このような行為
を繰り返さないよう留意します。
(注:年月日は文書を掲示した日を記載すること。)
5 その余の申立てを却下する。
6 被申立人会社は、第1項、第2項、第3項および第4項を履行したときは、
すみやかに当委員会に文書で報告しなければならない。
〔別表〕
X1の是正すべき賃金(単位円)
3年度 4年度
月額賃金 495,887 509,349
夏季一時金 1,874,183 1,908,382
年末一時金 1,908,382 -
X2の是正すべき賃金(単位円)
元年度 2年度 3年度
月額賃金 344,394 369,441 391,587
夏季一時金 1,088,290 1,220,731 1,339,692
年末一時金 1,220,731 1,339,692 1,382,976
4年度
411,988
1,382,976
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判定の要旨 |
5201 継続する行為
会社が組合員の正当な組合活動を嫌悪し、かつ組合員を差別する意図のもとに毎年の賃金・一時金、職群等級の格付の決定にあた
り、差別を繰り返していると認めるに足る具体的徴憑が顕在化している場合には、賃金・一時金、職群等級の格付の決定は継続す
る行為に該当するとし、X1については本件申立の前年度である平成3年度以降、X2については労働協約上の苦情処理を申立て
た平成2年4月の前年度の平成元年度以降が救済対象となるとされた例。
0200 宣伝活動
組合の役員としての活動はもとより、会社の経営施策や組合の運動方針に対する批判を含むものであっても、労働者の立場から、
同僚の解雇撤回を求めたり、労働条件その他の生活利益を守ることを目的とする情宣活動等は、単なる個人的活動といえず、かつ
特段組合の統制を乱す行動であったという事実は認められないから、「労働組合の正当な行為」として保護するに値すると解する
のが相当であるとされた例。
1200 降格・不昇格
会社は、X1やX2の組合内少数派活動を嫌っており、X1の昇格を遅くらせたり、X2の昇格を遅らせ企画職に編入させなかっ
たことは、同人らの正当な組合活動を嫌悪した差別取扱いであり、労組法7条1号の不利益取扱いに該当するとされた例。
4413 給与上の不利益の場合
4415 賃金是正を命じた例
4419 現存格差を一挙に是正した例
本件申立時である平成4年10月をもってX1を参事に、X2を副参事一級に是正し、是正した等級の者に支払われるべき賃金と
すでに支払われた賃金との差額を支払うことが相当であるとされた例。
4418 継続する行為を認めた例
賃金・一時金、職群等級の格付を決定する行為は、それが労使協定により毎年行なわれている以上、一回限りの行為といえるが、
この協定にあたり、差別を繰り返していると認めるに足る具体的徴憑が顕在化している場合には継続する行為に当たるとされた
例。
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業種・規模 |
電気機械器具製造業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集106集103頁 |
評釈等情報 |
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