労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件名  ワタナベ学園 
事件番号  埼玉地労委 平成 7年(不)第7号 
申立人  全労協・全国一般東京労働組合埼玉支部ワタナベ学園関連分会 
再審査被申立人  学校法人ワタナベ学園 
命令年月日  平成 9年12月11日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  学園が<1>組合員らを本来的業務から外し、学園本部管理課へ異動させグラウンドの草むしりや荷物の運搬等に従事させ、<2>団交にあたって資料の提示・具体的説明を行わなかったことが争われた事件で、<1>学園に対して当該組合員への異動命令の撤回と原職復帰<2>団交にあたって必要な資料の提示・具体的根拠の説明など誠意をもった団交を行うよう命じ、謝罪文の掲示は棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、組合員X1及び元組合員X2に対して行った平成7年6月1日付けの学園本部管理課への異動命令を撤回し、X1を埼玉社会体育専門学校の教員に復職させなければならない。
2 被申立人は、組合員X3を越谷保育専門学校付属吉川幼稚園の園児送迎バスの運転業務に従事させなければならない。
3 被申立人は、組合員X4を越谷保育専門学校付属みさと団地幼稚園に幼稚園教諭として復職させなければならない。
4 被申立人は、申立人と賃金及び一時金について交渉するに当たって、申立人に対して交渉に必要な関係資料を提示し、その根拠を具体的に説明するなど誠意をもって団体交渉に応じなければならない。
5 被申立人は、申立人に対し、下記文書を本命令書受領の日から5日以内に手交しなければならない(下記文書の中の年月日は、手交する日を記載すること)。
                 記
                           平成 年 月 日
 全労協・全国一般東京労働組合埼玉支部ワタナベ学園関連分会
  分会長 X1 様
                       学校法人ワタナベ学園
                        理事長   Y1
 当学園が行った下記の行為は、埼玉県地方労働委員会において、不当労働行為であると認定されました。
 今後このような行為を繰り返さないよう誓約いたします。
                 記
 (1) 組合員X1及び元組合員X2に対して、平成7年6月1日付けで、学園本部管理課への異動命令を行ったこと。
 (2) 組合員X3を、平成7年4月から越谷保育専門学校付属吉川幼稚園の園児送迎バスの運転業務に従事させなかったこと。
 (3) 組合員X4を、平成7年4月から越谷保育専門学校付属みさと団地幼稚園に幼稚園教諭として復職させなかったこと。
 (4) 貴組合との平成7年度賃金及び夏季一時金についての団体交渉に当たって、関係資料の提示及び具体的説明を行わず、誠実に対応しなかったこと。
6 申立人のその余の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  1300 転勤・配転
3700 使用者の認識・嫌悪
両名の配転は、学園が組合の活動を嫌悪し、両名を学校から排除するために行ったもので、組合員であることを理由とした不利益取扱いである。

1101 承認・合意(含退職金等の受領)
1300 転勤・配転
1302 就業上の差別
学園は、X1の本部管理担当職への配転に関して組合と合意した送迎バスの運転業務から同人を外し、パート職員をそのために雇用する一方で、草むしり程度の仕事しか与えておらず、同人を非組合員と分離し、掃除用具置場であった部屋を執務室としたこと、B幼稚園では組合員は同人のみであったこと、同人が副分会長でリーダ格であったことなどを考慮すれば、組合員であることを理由とした不利益取扱いであると判断するのが相当。

0211 その他の組合活動
1101 承認・合意(含退職金等の受領)
1300 転勤・配転
1302 就業上の差別
学園が組合員X4を本部事務職に配転し、移籍期間を1年間とするとの確認書にもかかわらず、D幼稚園に復職させないことは、D幼稚園で教諭が不足していたにもかかわらずX4の復職を拒否し、同人に掃除、草むしりなどの仕事をさせていること、同人がD幼稚園でリーダー的存在で組合員の勧誘など積極的に組合活動を行っていたこと、D幼稚園では組合員が減り続け、同人が復職しなければ組合員が存在しないという状況になっていたことからすれば、組合員であることを理由とした不利益取扱いである。

2240 説明・説得の程度
2249 その他使用者の態度
団体交渉の主たる目的は、労使双方の相互の譲歩による合意の達成にあり、団体交渉に当たっては、いかなる場合においても、労使は誠実に対応する義務がある。そして「誠実に対応する」の意味するところは、使用者に対しては、組合の見解についても十分耳を傾けるとともに、自己の主張を組合に納得してもらうようその論拠を具体的に説明し、合意達成に向けて努力することであり、そのためには当然のこととして、必要に応じ関係の資料を提示することも含まれるものである。

0211 その他の組合活動
1300 転勤・配転
配置転換命令が不当労働行為に該当するか否かは、その配転命令の発せられるに至った経緯、配転の必要性、配転対象者の人選基準、具体的人選の合理性、その労働者の組合内における地位、活動状況、配転による組合活動への影響の有無及び程度等を総合考慮して決定すべきである。

1300 転勤・配転
生徒数が減少した場合、教員の定数を減らし、配転することには合理性はあるが、使用者の故意又は怠慢によって生徒数が減った場合には不当労働行為になる場合もあり得る。

1800 会社解散・事業閉鎖
学校経営者は、職業選択の自由の一面として、学園を続けるかどうかを決定する自由を有し、採算が取れない所を閉校することは、経営権の一作用として独自に決めることのできる事項であるが、組合活動の強い所だけを組合活動が強いために組合員を排除することを目的として閉校することは不当労働行為となる。

1300 転勤・配転
1302 就業上の差別
1602 精神・生活上の不利益
配転された組合員2名に学園が命じた業務は草むしりなどの雑役であり、教員として仕事をしてきた両名の誇りを著しく傷つけるもので、しかも両名が就労を命じられた部屋は、それまでは掃除用具の置場であったこと、非組合員と区別された部屋であったことを考慮すれば、学園は組合員であるために両名に対し不利益な取扱いをしていたと判断せざるを得ない。

4614 文書手交のみを命じた例
組合は、陳謝文の掲示を求めるが、誓約する旨の文書の手交で足りる。

業種・規模  教育(自動車教習所を含む) 
掲載文献  不当労働行為事件命令集109集299頁 
評釈等情報   

[先頭に戻る]
 
[全文情報] この事件の全文情報は約446KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。