労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  古賀タクシー 
事件番号  福岡地労委 平成 7年(不)第3号 
申立人  古賀タクシー労働組合 
被申立人  株式会社古賀タクシー 
命令年月日  平成 9年11月21日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  本件は、会社が、<1>執行委員長X1及び副執行委員長X2を就業時間中の組合活動等を理由に譴責処分としたこと、<2>「時短に関する希望調査」に回答しなかった等を理由に組合員16名を譴責処分、2名を同処分保留、執行委員長X1を譴責処分としたこと、<3>副執行委員長X2及び書記長X3を就業時間中の団交出席等を理由に譴責処分及び出勤停止処分、執行委員長X1を譴責処分としたこと、<4>執行委員長X1及び書記長X3を無線私語等を理由に譴責処分・出勤停止処分としたこと、<5>書記長X3を団交折衝混乱を理由に譴責処分としたこと、<6>上記<1>乃至<5>につき賃金・諸手当・一時金を減額したこと、<7>組合員X4を雇止めとしたこと、<8>組合誹謗・中傷文書を掲示・配付したことが不当労働行為に当たるとして争われた事件である。
 福岡地労委は、<1>上記<1>乃至<6>につき各処分の撤回及びバックペイ(年5分加算)、<2>上記<2>及び<8>による支配介入の禁止を命じ、その余の申立て(<7>、<2>のうち2名の処分保留、<6>のうち抗議行動控除分)については棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人組合員X5に対する、平成7年7月6日付譴責処分及び申立人組合員X6に対する、同月7日付譴責処分を撤回し、これら処分がなければ支給されたであろう同年夏期賞与と既に支給した同賞与との差額を同人らに支払わなければならない。
2 被申立人は、申立人組合員X7に対する平成7年7月11日付の、同X7に対する同月12日付の、同X5、同X8、同X9、同X10、同X11、同X12、同X13、同X14及び同X15に対する同月18日付の、同X16に対する同月20日付の、同X17に対する同月22日付の、並びに同X18、同X19及び同X20に対する同月26日付の譴責処分を撤回し、これら処分がなければ支給されたであろう同年冬期賞与と既に支給した同賞与との差額を同人ら(X6、X5、X7及びX17を除く。)に支払わなければならない。
3 被申立人は、申立人組合員X17に対する、平成7年7月31日付譴責処分及び同年8月1日付出勤停止処分を撤回し、これら処分がなければ支給されたであろう同年8月分給与(手当を含む。)及び同年冬期賞与と既に支給した同給与及び同賞与との差額を同人に支払わなければならない。
4 被申立人は、申立人組合員X5に対する、平成7年8月4日付出勤停止処分を撤回し、同処分がなければ支給されたであろう同年8月分給与(手当を含む。)及び同年冬期賞与と既に支給した同給与及び同賞与との差額を同人に支払わなければならない。
5 被申立人は、申立人組合員X6に対する、平成7年8月4日付の2件の譴責処分を撤回し、これら処分がなければ支給されたであろう同年冬期賞与と既に支給した同賞与との差額を同人に支払わなければならない。
6 被申立人は、申立人組合員X6、同X5及び同X7に対する、平成8年5月10日付譴責処分を撤回しなければならない。
7 被申立人は、申立人組合員X5及び同X7に対する、平成8年5月10日付出勤停止処分を撤回し、同処分がなければ支給されたであろう同年5月分給与(手当を含む。)及び同年夏期賞与と既に支給した同給与及び同賞与との差額を同人らに支払わなければならない。
8 被申立人は、申立人組合員X5及び同X7に対し、両名が平成7年7月26日に就業時間中に団交に出席したとして同人らの同年7月分給与から控除した1時間30分の賃金相当額を支払わなければならない。
9 被申立人は、上記第1項ないし第8項(第6項を除く。)により支払を命じた金員に、年5分の金員を付加して支払わなければならない。
10 被申立人は、次のような行為により申立人組合の運営に支配介入してはならない。
 (1) 申立人組合の組合活動及び同執行部の指導を誹謗中傷し、上部団体に加盟しその指導に従う申立人組合の運営に介入する文書を会社内に掲示し或いは従業員に配布すること。
 (2) 組合指令が出ていることを知りながら、申立人組合及び組合員に対し処分を暗示又は警告して希望調査表記入の業務命令を発すること。 
判定の要旨  1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
委員長、副委員長に対する、会社信用失堕行為及び就業時間中の組合活動・大会出席を理由とする譴責処分は、問責理由を欠くもので、組合役員を処分することにより、同人らに不利益を与え、かつ組合の運営に影響を及ぼそうとしたもので、労組法7条1・3号に該当するとされた例。

1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
「時短に関する希望調査」への記入の業務命令は、専ら組合ないし組合員に向けて処分を警告し威嚇するもので、組合の団結抑圧を意図する支配介入行為であり、同命令違反を理由に組合員を、指導責任を問い委員長を譴責処分としたことは労組法第7条1・3号に該当するとされた例。

1400 制裁処分
「時短に関する希望調査」へ記入後に組合指示により消去し、譴責処分保留とされた組合員2名については、その後同処分も実施されておらず、何ら処分としての実質は伴っていないと解されるとして、これを不当労働行為には該当しないとされた例。

1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
副委員長、書記長の団交出席のための職場離脱届に関する折衝混乱について、副委員長に伴って出席した書記長を5分間の賃金カットとしたことは認められても、同人を譴責処分として賞与からも減額したことは、労組法7条1・3号に該当するとされた例。

1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
会社が、職場離脱届を提出して乗務日の休憩時間利用により団交出席した副委員長、書記長について、就業時間中に上司の許可なく職場離脱したとして両名を出勤停止処分及び委員長を譴責処分としたことは相当性を欠くもので、結局同人らの団交出席という組合役員として正当かつ積極的な組合活動を理由とする労組法7条1・3号の不当労働行為であるとされた例。

1106 契約更新拒否
会社が、昭和63年より嘱託雇用を更新してきた組合員X13を、平成7年9月で雇止めしたことは、同人が健康で業務上の支障はないものの、(a)就業規則で再雇用しない旨規定の人身事故を起こしていること、(b)同人より高齢の嘱託が乗務数減で勤務しており、同人も乗務数減なら再雇用に応ずる旨の会社提案を断っていること等から、不当労働行為に当たらないとされた例。

1603 組合活動上の不利益
2620 反組合的言動
会社が社内に掲示し従業員に配付した文書の記述は、本来会社が容喙すべきでない組合と上部の関係、組合執行部と組合員との関係に言及・非難し、かつ組合員に対して処分の威嚇をもって組合指令に従わないよう命ずるものであり、組合結成後4か月の短期間に集中して執拗になされたこれら一連の行為は、組合運営に不当介入し、結成直後の組合の弱体化を企図した労組法7条1・3号の不当労働行為とされた例。

1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
タクシー配車無線を利用した私語を理由に組合三役を譴責処分したことは、(a)意味が明確でない短いことばのやり取りで業務上の影響が生じたとは認められず、(b)掲示文書で、一般・抽象的に禁止したが、個々に直後に当事者に指摘・注意することなく突如乗務給を控除し、労基署指導によりこれを返還後本件処分したこと、(c)私語の相手を含め、組合三役のみ処分したこと等から総合勘案して、些細な違反をことさら問題として組合役員に不利益を与え、もって組合を弱体化させようとした労組法7条1・3号の不当労働行為とされた例。

1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
副委員長及び書記長の抗議言動が業務妨害であることを理由とする両名の出勤停止処分は、同人らに責められるべき点がないではないが、同人らが組合結成以来委員長とともに組合活動の中心となって活発な組合活動を行ってきたことを嫌悪して行われたもので労組法7条1・3号の不当労働行為であるとされた例。

4411 配転・転勤・出勤停止・下車勤等の場合
不当労働行為と判断した譴責処分及び出勤停止処分を理由に会社が行った一時金からの考課給等の控除につき、救済方法として、処分の撤回を命じるとともに控除額の支払いを命じることが必要かつ相当とされた例。

業種・規模  道路旅客運送業(ハイヤー、タクシー業) 
掲載文献  不当労働行為事件命令集109集184頁 
評釈等情報   

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