労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  巴精工 
事件番号  埼玉地労委 平成 6年(不)第3号 
申立人  全日本金属情報機器労働組合 
申立人  全日本金属情報機器労働組合埼玉地方本部 
被申立人  巴精工株式会社 
命令年月日  平成 9年 9月11日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  本件は、会社が、<1>組合地本及び会社従業員で結成した支部からの団交申入れを拒否したこと、<2>専務らが組合を誹謗・中傷したこと、<3>会社主任らをして支部組合員に組合脱退工作を行わせたこと、<3>支部が解散するよう組合員に圧力をかけたことが不当労働行為であるとして争われた事件である。
 埼玉地労委は、<1>乃至<3>については不当労働行為の成立を認めて文書掲示及び手交(但し、<1>については団交拒否による支配介入に関して)を命じ、その余の申立て(支部組合員の労働条件を議題とする団交拒否)については、支部は解散して申立てを取り下げており、申立てを維持した上部組合には支部組合員の労働条件に関しては救済利益はないとして棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人全日本金属情報機器労働組合及び申立人全日本金属情報機器労働組合埼玉地方本部に対し、下記文書を本命令書受領の日から5日以内に、手交するとともに、秩父工場の食堂内の壁面の従業員の見やすい場所に、縦1.5メートル、横2メートルの白紙一杯に明瞭に墨書して、7日間掲示しなければならない。(下記文書の中の年月日は、手交又は掲示する日を記載すること。)
                 記
                           平成 年 月 日
全日本金属情報機器労働組合
 中央執行委員長 X1 様
全日本金属情報機器労働組合埼玉地方本部
 執行委員長   X2 様
                       巴精工株式会社
                        代表取締役 Y1
 当社が行った下記の行為は、埼玉県地方労働委員会において、不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないよう誓約いたします。
                 記
(1) 全日本金属情報機器労働組合埼玉地方本部及び全日本金属情報機器労働組合埼玉地方本部巴精工支部が団体交渉の開催を申し入れたにもかかわらず、誠実に対応することなく開催を拒否し、支配介入したこと。
(2) 当社の専務及び主任らをして全日本金属情報機器労働組合のひぼう中傷をしたこと。
(3) 当社の主任らをして全日本金属情報機器労働組合埼玉地方本部巴精工支部の組合員に対して組合を脱退するよう働きかけ、また、組合加入を約束していた者に対して加入しないよう働きかけたこと。
(4) 全日本金属情報機器労働組合埼玉地方本部巴精工支部が解散するよう、組合員に圧力をかけるなどの行為を行ったこと。
2 申立人らのその余の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  4613 P.Nのみを命じ、他の救済の必要性を認めなかった例
解散により申立てを取り下げた支部の固有問題に係る団交応諾を求める救済利益について、申立てを維持した組合及び地本は、団交応諾命令を求めているのではなく、会社が正当な理由なく団交拒否したり、脱退工作を行うなどの不当労働行為をして支部を解散に追い込んだという支配介入の救済として、ポストノーティス命令を求めているものであるとして、救済利益がなく却下すべきとの会社主張は採用できないとされた例

3410 職制上の地位にある者の言動
主任らの組合脱退工作は、(a)専務が組合潰しを決意して調査していたと判断でき、(b)組合に対して好意的だった主任らが一転して脱退工作を行ったことに何らかの理由が推認でき、(c)主任らと専務の発言が「会社を潰す組合」との点で符号し、(d)マニュアルに基づき組織的であり、(e)主任らのみで通常業務を行いながら短期間で行えたと考えにくく、(f)会社の「質問書」交付に対応して脱退届が相次いだことを総合勘案して、専務が主任らに行わせたと判断するのが相当とされた例

3410 職制上の地位にある者の言動
主任らの支部壊滅工作は、(a)専務が全力で組合潰しを決意しており、(b)就業時間中の嫌がらせ及びつるしあげを会社が認めていたと判断でき、(c)専務が招集した従業員集会は異例のもので組合活動への圧力をかけたものと言え、(d)専務自ら脱退届・解散届に押印させており解散を強く望んでいたことを総合勘案して、専務が主任らに行わせたと判断するのが相当とされた例

2113 交渉団体として不適格
使用者は、「組合が違法に結成・存在し、労組法適合規約を有し、協約当事者適格を有する」ことに合理的な疑いをもつ場合などに、その諸条件を明らかにするように要求し、その要求に組合が応じない場合には、団交拒否の正当理由となる場合もあるが、本件のように組合の違法性等を明らかにしない限りすべての場合に団交応諾義務は発生しないとの会社の主張は採用できないとされた例

2241 他の係争事件の存在
団交拒否に関する組合の救済申立て以降に、会社が労委で審査中なのでその結果を待ちたいとして団交を拒否することは、審査中であったとしても労使が団交を行うことは何ら差し支えなく、正当な理由ではないので、労組法7条2号の不当労働行為に該当するとされた例

4300 労組法7条2号(団交拒否)の場合
組合の地本と支部が申し入れた団交の議題は、支部の組合員の労働条件に関するものであるから、支部の解散による申立て取下げにより、地本には労組法7条2号に該当する不当労働行為に関しては救済利益はないとされた例

2902 労組法7条2号(団交拒否)と競合
会社の一連の団交拒否は、専務が従業員の組合結成・加入を嫌悪して支部結成後に上部団体たる組合を調査の上、全力を使って支部つぶしを決意したこと等を総合勘案すれば、脱退工作と連動して支部の弱体化、最終的には支部つぶしの手段であったと考えるのが相当で、単なる団交拒否にとどまらず、支部に対する支配介入に該当するとされた例

2620 反組合的言動
専務の「組合ができると会社がつぶれる。」等の発言は、組合結成準備を知って急きょなされた専務の組合嫌悪意思の表明であると言わざる得ず、全従業員を就業時間中にわざわざ集めた上で行われたことを考慮すれば、発言目的は組合結成牽制であり、結成しようとしていた支部に対する支配介入と判断するのが相当とされた例

4613 P.Nのみを命じ、他の救済の必要性を認めなかった例
下部団体が受けた団結権侵害について、上部団体が救済利益を有することは理論上も実務上も認められており、仮にそうでなければ使用者による「組合つぶし」を放置することとなり、今後、申立人らが被申立人会社の従業員を組合員として勧誘するときに重大な障害となりかねないが、本件においては、支部が申立てを取下げ解散していることを考慮して、申立人らに対して不当労働行為であることを認定した旨の文書掲示・手交を命じることが相当とされた例

業種・規模  その他の製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集109集44頁 
評釈等情報   

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