| 事件名 |
石川島播磨重工業 |
| 事件番号 |
東京地労委 昭和46年(不)第79号
東京地労委 昭和47年(不)第82号
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| 申立人 |
全日本造船機械労働組合 |
| 申立人 |
全日本造船機械労働組合石川島分会 |
| 申立人 |
X4 ほか22名 |
| 被申立人 |
石川島播磨重工業株式会社 |
| 命令年月日 |
昭和53年11月21日 |
| 命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含
む) |
| 重要度 |
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| 事件概要 |
会社が、職制をして組合員に組合脱退、別組合加入を勧奨せしめたこ
と、社内でのビラ配布等を妨害し、また、組合紙の内容を理由に責任者を譴責処分にしたこと、従業員教育に当り、別組合の存
在、別組合とのユニオン・ショップ協定を協調したこと、組合掲示板貸与、チェックオフの便宜供与をしなかったこと、組合指令
により1時間以上の時間外勤務を拒否した組合員に定時帰りを命じたこと、指名スト等に入った組合員を事故欠勤、無断欠勤と
し、一時金から相当額をカットしたこと、各種問題の団交に当り、多数派別組合との団交を優先したこと、46年3月の職務等級
格付けに当り、組合員2名を低位に格付けしたこと、46年度定期昇給の成績加算及び同年夏期・年末一時金の査定に当り、組合
間差別したこと等が争われた事件で、職制を介して組合脱退勧奨、別組合加入の慫慂の禁止、譴責処分がなかったと同様の取扱
い、組合活動妨害の禁止、チェックオフ等の便宜供与、不利益取扱措置の取消し、再査定及びこれに伴う相当額の支給及びポス
ト・ノーティスを命じ、別組合とのユニオン・ショップ協定の締結、組合専従、構内への組合事務所設置、労委への出頭の事故扱
い及び組合員3名の不利益扱いについては申立てを棄却した。 |
| 命令主文 |
1
被申立人石川島播磨重工業株式会社は、申立人全日本造船機械労働組合石川島分会の分会員に対し、課長あるいは職長・班長などを介して申立人全日本造船機械労働組合石川島分
会から
の脱退と申立外石川島播磨重工労働組合への加入を慫慂してはならない。
2
被申立人は、申立人X2、同X3に対し、昭和46年12月25日付譴責処分がなかったと同様の取扱いをしなければならない。
3 被申立人は、申立人分会が就業時間外に会社構内で行うカンパ活動ならびに機関紙配布活動を妨害してはならない。
4 被申立人は、申立外石川島播磨重工労働組合の存在のみを強調するような社員教育を行なってはならない。
5
被申立人は、申立人分会に掲示板を貸与しなければならず、その貸与については申立人分会と合理的取決めをしなければならない。
6 被申立人は、申立人分会からの申出に基づき、申立人分会の分会員から組合費のチェック・オフを行なわなければならない。
7 被申立人は、申立人X1に対し、昭和46年5月14日について、1時間分の時間外賃金相当額を支払わなければならない。
8 被申立人は、申立人X3が
昭和46年4月23日に行なったストライキを「事故欠勤」として取扱った措置を取消し、昭和46年度夏季一時金につき、同取扱いをしたことによって減額し
た額を支給しなければならない。
9
被申立人は、申立人X4が昭和46年5月21日、6月1日ないし4日、同月25日、7月16日、同月26日、同月27日および8月18日に行なったストライキを「無断欠
勤」として
取扱った措置を取消し、昭和46年度年末一時金につき、同取扱いをしたことによって減額した額を支給しなければならない。
10
被申立人は、昭和46年3月16日付で、申立人X5を技能職4級に、同X6を技能職2級にそれぞれ格付けしなければならない。
11
被申立人は、申立人分会員23名に対し、昭和46年3月16日付定期昇給の成績加算金について、1人平均360円を下回らないよう再査定をしなければならない。
12
被申立人は、前項の申立人らに対し、昭和46年度夏季一時金および年末一時金の成績係数について、平均が1.00となるよう再査定をしなければならない。
13
被申立人は、申立人分会員に対する昭和46年度夏季一時金および年末一時金について、ストライキの時間数を算式上不就業扱いにしてはならない。
14 被申立人は、前記第10項ないし第13項の措置によって生ずる差額を支払わなければならない。
15
被申立人は、本命令書受領の日から一週間以内に、110センチメートル×160センチメートル(新聞紙4頁大)の大きさの白紙に、下記の内容を楷書で明瞭に墨書して、被申
立人
会社の東京地区にある全事業所入口の見易い場所に10日間(被申立人会社の休日を除く。)掲示しなければならない。
記
昭和 年 月 日
全日本造船機械労働組合
中央執行委員長 X7 殿
全日本造船機械労働組合石川島分会
執行委員長 X8 殿
同分会分会員各位 殿
石川島播磨重工業株式会社
代表取締役 Y1
会社が行なった下記の行為は、不当労働行為であると東京都労働委
員会において認定されました。今後かかる行為を繰り返さないよう留
意します。
記
1 貴分会員に対して、Y2課長、Y3班長、Y4班長およびY5職
長らが貴分会からの脱退や石川島播磨重工労働組合連合会東京労働組
合への加入を慫慂したこと。
2 貴分会のカンパ活動ならびに機関紙配布活動に対してY6部長、
Y7課長およびY8課長らが妨害したこと。
3 貴分会員X2、同X3両氏に対して機関紙掲載記事を理由として
譴責処分に付したこと。
4 会社と石川島播磨重工労働組合連合会との間で締結したユニオン
・ショップ協定に関し、社内報「あい・えいち・あい」を発行、配布
したこと、ならびに新人社員教育において、新人社員が全日本造船機
械労働組合石川島分会に加入することを妨害したこと。
5 貴分会に対して掲示板を供与しなかったこと、ならびに組合費の
チェック・オフを行なわなかったこと。
6 貴分会の行なった時間外就労拒否闘争に対して、個々の分会員を
対象に定時帰りを強制したこと。
7 貴分会員X3、同X4両氏の行なった指名ストライキに対し、「
事故欠勤」、「無断欠勤」扱いをして不利益を与えたこと。
8 貴分会から申入れのあった、就業時間充実対策問題、昭和46年
春闘問題、同年度一時金問題、安全問題および特別一時金問題につい
ての団体交渉を拒否したこと。
9 貴分会員X5、同X6両氏を昭和46年3月16日付職能等級格
付において低位に格付したこと。
10 貴分会員に対し、昭和46年度定期昇給における成績加算金を
不利益に扱ったこと。
11 貴分会員に対し、昭和46年度一時金における成績係数を不利
益に扱ったこと、ならびにストライキ時間数を一時金計算式上不就業
扱いとしたこと。
(注、年月日は文書を掲示した日を記載すること。)
16 その余の申立てを棄却する。 |
| 判定の要旨 |
1203 その他給与決定上の取扱い
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
X3の指名スト通告を事前に行なわなかったことが、たとえ事前通告の慣例に反していたとしても、その違反に対する非難は、分
会にたいしてはなしえてもそれゆえにX3のストライキそのものが許されないものではなく、これを「事故欠勤」とした会社の行
為は支配介入である
1203 その他給与決定上の取扱い
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
分会員X4の指名スト当時、便宜供与問題については、分会は従来の諸協定の継続適用を主張して会社と協議を続けてきた経緯も
あり、5月18日の団交において会社が、組合業務扱いについて分会からの要求に応じて一旦検討を約しておきながら、同月20
日には分会の要求を拒否する態度に出るなど、誠意を示す対応をしていないことからみると、会社がX4のストライキを「無断欠
勤」扱いとしたことは、分会嫌悪の情から出たものと推認せざるを得ない。
1204 スト・カット
会社のストライキ時間数不控除の取扱いの慣行は存在しないとの主張は、組合分裂前はその取扱いについて労使間で論議されたこ
とはあったものの、結果的には控除せず、不控除の取扱いがなされてきたこと、また組合分裂後において、ストライキ時間数の取
扱いについて変更が加えられたと認められる事実もないことからみると、ストライキ時間数不控除の慣行が存在していたと認めざ
るを得ない。
1200 降格・不昇格
分会員X4は、年令、勤続年数、学歴などが同等である申立外X9との比較において不利益だと主張する分会の主張が斥けられた
例。
1200 降格・不昇格
分会書記長X5を、工業高校同期生であり、かつ組合専従役員歴においても同等の申立外X10と比較し、職能等級格付で低位に
格付けしたことが不当労働行為とされた例。
1202 考課査定による差別
分会員2名に対する格付補正は、格付けの不当に低い人事考課点に原因があったための是正であるとは認められずまた分会員ゆえ
に差別されたと認めるに足る疎明がないことから不利益扱いではないとされた例。
1200 降格・不昇格
分会員X6は、格付査定において、職務遂行能力の面から当然人事考課点の見直しがなされるべき条件が備わっていたと認められ
ること等から同人の技能職の格付けが不利益扱いとされた例。
1202 考課査定による差別
分会員に対する成績加算金の査定について、別労組員に比べ低く査定したことが不当労働行為とされた例。
1202 考課査定による差別
一時金の成績査定で、分会員全員を平均以下に査定したことは、不自然の域にとどまるのみでなく、分会員ゆえの不利益扱いであ
るとされた例。
1302 就業上の差別
分会の闘争指令に従った分会員に残業をさせず、定時帰りを命じたことが不当労働行為とされた例。
1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
3700 使用者の認識・嫌悪
組合機関紙発行責任者X2及び編集責任者X3を、会社に不利益となる浮説を宣伝流布したとして譴責処分に付したことが会社の
当時の対応等からみて不当労働行為とされた例。
1203 その他給与決定上の取扱い
労委への出頭は救済を求める必要最小限の正当な組合活動であり、その出頭を事故扱いすることは不利益扱いであると主張する分
会の主張が斥けられた例。
2240 説明・説得の程度
会社が、隔週週休2日制に関する説明は、団交において説明済であるとして、以後の団交を拒否したことが不当労働行為とされた
例。
2246 併存団体との関係
会社が分会との団交で、別労組を重視する態度をとったことが、誠実な団交を行ったとは認められないとされた例。
2211 団交ルールの先議
分会の団交申入れに対し、別労組と妥結していないとして拒否したこと及び分会書記長に回答メモを渡して済まそうとしたこと
が、団交を行なおうとしていたとは認められないとされた例。
2242 回答なし
安全問題について、会社は分会の見解と対立するとして、予定されていた団交を断ったことが団交拒否とされた例。
2242 回答なし
特別一時金について、会社は別労組には回答を出しておきながら、分会との団交で誠実な態度をとらなかったことが団交拒否であ
るとされた例。
2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
課長が分会員X1に対し、組合脱退勧奨及び新労への加入を慫慂したことが利益誘導による不当労働行為とされた例。
2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
別組合員である下級職制らが分会員X4に対し、分会誹謗の言動を行ったことが、会社がその行動を利用した不当労働行為とされ
た例。
2620 反組合的言動
会社が職制に配布した文書及び全従業員に配布した社内報の表現内容が分会への加入抑圧の意図による不当労働行為とされた例。
2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
会社課長らの言動が、組合員のカンパ活動や組合員機関紙の配布を妨害する意図でなされたものとして不当労働行為とされた例。
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
別組合には組合事務所を貸与しているのに、分会に貸与しないのは不当労働行為であるとの組合主張が斥けられた例。
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
組合費のチェック・オフ及び構内掲示板の設置についての分会要求を会社が拒否したことが不当労働行為であるとされた例。
3011 従業員教育
新入社員研修会における勤労部長の発言ならびにテキストの記事が、組合が併存する場合における公平な取扱いを怠り、分会加入
妨害の意図に出た不当労働行為とされた例。
3105 事業廃止、工場移転・売却
組合分裂後、別労組とユニオン・ショップおよび唯一交渉団体条項を含む労働協約を締結したことが不当労働行為にあたらないと
された例。
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
別組合に対しては組合専従扱いを認めながら、分会に対しX4及びX5の専従を認めないのは不当労働行為であるとの分会の主張
が斥けられた例。
4413 給与上の不利益の場合
分会員X1は、5月14日当日残業を行う態勢にあったと認められるとして、同日の残業賃金1時間分の回復を認めた例。
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| 業種・規模 |
一般機械器具製造業 |
| 掲載文献 |
不当労働行為事件命令集64集475頁 |
| 評釈等情報 |
労判、1979年4月1日、313号、69頁
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