労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  報知新聞・報知印刷 
事件番号  大阪地労委 昭和45年(不)第85号 
大阪地労委 昭和45年(不)第86号 
大阪地労委 昭和46年(不)第23号 
大阪地労委 昭和46年(不)第25号 
申立人  X1 ほか33名  X2  ほか14名 
申立人  日本新聞労働組合連合近畿地方連合会 
申立人  報知新聞労働組合  報知印刷大阪労働組合 
被申立人  株式会社報知新聞社 
被申立人  報知印刷株式会社 
命令年月日  昭和48年12月25日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  両会社が争議中に組合が行った教宣活動、業務命令拒否、抗議行動、社内デモ、材料の搬出阻止などを理由に組合員49名を懲戒解雇、懲戒休職、出勤停止、役職解除の処分に付した事件で処分の取消し、現職復帰、バックペイ、ポストノーティスを命じ、他は棄却した。 
命令主文  1 被申立人株式会社報知新聞社は、別紙申立人組合員目録(1)記載の各申立人に対して、また被申立人報知印刷株式会社は、同目録(2)記載の各申立人に対して、それぞれ次の措置を含め昭和45年10月31日づけ各懲戒処分を行なわなかったものとして取扱わなければならない。
(1)懲戒解雇および役職解除を行なった者を現職に復帰させること
(2)各懲戒処分がなされなかったならば受けるはずであった賃金相当額(ただし、昭和46年賃上げに際しての本件懲戒休職処分に基づく不就労控除に関する部分を除く)を支払うこと
2 被申立人株式会社報知新聞社は、代表者名をもって申立人報知新聞労働組合代表者あてに、また被申立人報知印刷株式会社は、代表者名をもって申立人報知印刷大阪労働組合代表者あてに、それぞれ縦1メートル、横2メートルの白色木板に下記のとおり明瞭に墨書して、各被申立人会社大阪支社正面玄関付近の従業員の見やすい場所に1週間掲示しなければならない。
                   記
  年  月  日
    申立人組合代表者あて
                           被申立人会社代表者名
  当社は、昭和45年10月31日づけで、多数の貴組合員に対して懲戒処分を
 行ないましたが、この行為は労働組合法第7条第1号および第3号に該当する不
 当労働行為であることを認め、個々に陳謝するとともに、今後このような行為を
 繰り返さないことを誓約します。
 以上、大阪府地方労働委員会の命令によって掲示します。
3 申立人らのその他の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  0208 暴力・不穏当な言動を伴った組合活動
争議中に組合の行った教宣活動は、激しい労使の対抗関係の中で、労働組合の団結を守り、要求の実現をはかることを目的としたものであり、著しい虚偽、わい曲にわたるものは見当らず、かつ、両会社の宣伝活動、組合脱退勧奨をあわせ考えると、正当な組合活動の範囲を逸脱したものとはいえない。

0209 会社役員宅等への抗議行動
組合が、会社職制の自宅を訪問し、組合脱退工作を行なわないよう求めたことは、本来組織を守るために労組に許された組合活動であり、説得や要請も穏やかになされているのであって、これをとりあげて問責することは妥当でない。

0201 就業時間中の組合活動(含職場離脱)
会社は、執務中の支社長への抗議を理由に懲戒処分に付しているが、紙面変更問題についての団交申入れを会社が拒否していること、支社長の発言が抗議に赴いた組合員らを刺激したことが推認されることからみると、本件行為をとりあげて問責することは妥当でない。

0208 暴力・不穏当な言動を伴った組合活動
会社が、勤務ローテーションの作成について部長、次長に申入れたことを理由に懲戒処分したことは、組合の行動には穏当を欠くと考えられる点もあるが、短時間のうちになされたものであること、暴言や暴行にわたる言動が認められないこと、業務に支障が生じていないことなどからみて、当を得ないというべきである。

0205 第三者・取引先等への働きかけ
組合が、臨時就労者X3の自宅を訪問し、争議に関して組合側に協力するよう説得したことは、会社を中傷ひぼうしたり、X3に威圧を加えたりした事実も認められず、正当な組合活動の範囲内の行為と考えられる。

0203 職場闘争と業務妨害
組合が、就業中の組合員に対し、採字課の勤務体制についての組合の決定を説明し、これに従うよう求めたことは、いささか穏当を欠くものと思科されるが、職務体制変更問題についての経緯からみて相当の理由があると認められ、執拗につきまとったわけでもないから、作業の妨害を図ったものとは認められない。

0201 就業時間中の組合活動(含職場離脱)
組合活動のための離席は、職制もしくは同僚にその旨告げて行われており、そのことについて会社が組合員に対し必ず所属部課長に届出るよう注意したとの事実も認められず、上記態様による届出をもって同人らを無断職場離脱であるとして問責することはできない。

0201 就業時間中の組合活動(含職場離脱)
3600 処分の差別
会社が、手待ち時間中に組合ニュースの原稿を執筆したことを理由に組合員X8を懲戒処分に付したことは、手待ち時間は自由に利用されており、会社もこれを認めていたのであるから、失当であると言わざるを得ない。

0413 ストライキ(含部分・指名スト)
会社が、取材命令拒否を理由にX4を懲戒処分に付したことは、X4が取材に赴かなかったのは組合の指令に基づき時限ストに参加したためであって、失当と言わざるを得ない。

0203 職場闘争と業務妨害
0420 その他の争議行為
各種機器の電源を切断してストに参加したことを理由に懲戒処分に付したことは、機器の無人稼働による故障を防止しようとしたものであり、このことについて会社も注意をしていないし、かつ、会社業務を妨害したとの事実も認められないことからみて、失当と言わざるを得ない。

0202 会社施設の利用
0420 その他の争議行為
組合の行った社内デモは、会社にとって好ましいものでなかったとしても、デモに対して、中止の申入れ等なんらの措置をとっていないこと、従前のデモと同じ態様で行なわれたものであることから考えると、本件デモをとらえて突如として問責することは失当である。

0203 職場闘争と業務妨害
0414 ピケッティング
組合が、紙型の搬出をいったん阻止したことは、会社がこれまでと異なりケースに入れて搬出しようとしたために、原稿がひそかに市内に搬入されるおそれがあるとして阻止したという相当の理由が認められ、かつ、業務に支障を及ぼしていないことからみて、これをとりあげて問責するのは失当である。

0421 幹部責任
会社が、争議中数々の違法不当な行為を企画、指導したことを理由に、幹部責任を追求したことは、組合側の行為に行きすぎや穏当を欠くものも若干は存在するが、全体的にみれば、違法不当視することはできないことからみて、失当と言わざるを得ない。

0700 職場規律違反
会社が、外来者を無断で職場見学させたことを理由に組合員X5を懲戒解雇したことは、その経緯からX5が無断で外来者を職場に入れ見学させたとは認められず、また、このことについては本件処分がなされるまで問題にされていないのであるから、失当であると言わざるを得ない。

0500 勤務成績不良
3600 処分の差別
会社が、腐食液の取替えを失念したことを理由に組合員X5を懲戒解雇したことは、このことによって作業上支障をきたした事実が認められないこと、この程度のミスは他の従業員にも存するが、それを理由に処分された者がいないこと、X5が作業を故意に放棄したものではないことなどからみて、失当であると言わざるを得ない。

0700 職場規律違反
会社が、会社の指定した内容の診断書の提出を拒否した組合員X6を懲戒解雇したことは、X6は一応診断書を提出しており、これ以上のものの提出を求めることが無理であると認められること、かつ、会社は本件処分にいたるまで、このことについてなんら問題にしていないことからみて、失当であると言わざるを得ない。

1102 業務命令違反
1400 制裁処分
会社は、原稿のパンチ拒否を理由に懲戒処分に付しているが、基準行数を上まわるパンチを命じたために、拒否もしたのであるから拒否したことに合理的な理由があり、しかもこの問題については労使間に合意が成立し解決済みであることからみても、業務の遂行に支障をきたしたとしても、これを問責することはできない。

1102 業務命令違反
1400 制裁処分
会社が、配転辞令の受領拒否を理由に懲戒処分したことは、Mは辞令の受領をいったんは拒否したものの、その後すぐに辞令を受領し、配転先の業務に従事していること、本件配転は慣行に違反してなされたものであり、会社側に重大な瑕疵が存することからみて、失当といわざるを得ない。

1400 制裁処分
3501 労働者の行為と不利益取扱の時期との関連
社内会合における言動を理由に懲戒処分に付したことは、同人の態度および表現は穏当を欠くものであるが、この発言によって会合が混乱におちいったとは認められず、またこの発言から半年以上経過した後に同人を問責していることからみて、失当といわざるを得ない。

1400 制裁処分
3605 他の処分で決着ずみのものを対象とした場合
会社が、深夜組合員の社内立入りを黙認した組合員である警備員を懲戒処分に付したことは、従来黙認していた立入りを突如禁止した会社の態度は組合活動の妨害を意図したものと考えられ、同人の行為には相当の理由が認められることからみて、失当と言わざるを得ない。

1400 制裁処分
電話交換用器具の返還拒否を理由に懲戒処分に付したことは、口に接する器具を他従業員に使用されるのを嫌い、かつ予備器具が存在していたため、その返還要請を拒否したものであるから、失当であると言わざるを得ない。

1400 制裁処分
無断欠勤を理由に組合員X7を懲戒処分に付したことは、X7はロックアウト中いったんは闘争から脱落し就労したものの、組合の説得によって再び闘争に参加し、就労をとりやめたものであり、かつ、このことを会社に通知しているのであるから失当と言わざるを得ない。

4811 労組法7条3号(個人申立)の場合
被申立人は、本件個人からの救済申立ては、既になされた組合の申立てと同内容で、二重申立てであると同時に多人数を審査手続きに参加させ、圧力をかけようとするものであるから不適法というが、組合も労働者も個別に、あるいは、連名で申立てがなしうるものであるから、採用できない。

業種・規模  出版・印刷・同関連産業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集52集208頁 
評釈等情報   

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