労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  観光日本 
事件番号  京都地労委 昭和48年(不)第3号 
申立人  総評全国一般京都地本京都ゴルフ東キャデー労働組合 
申立人  総評全国一般労働組合京都地方本部 
被申立人  観光日本 株式会社 
被申立人  観光日本 株式会社京都支社 
命令年月日  昭和49年 4月26日 
命令区分  全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) 
重要度   
事件概要  賃上げ、一時金、就労差別、退社時間、脱退工作等をめぐり争われた事件で、差別されなければ受けたであろう賃金等の支給、差別してはならないこと、ポスト・ノーティスを命じた。 
命令主文  1 被申立人観光日本株式会社は、総評全国一般京都地本京都ゴルフ東キャデー労働組合の組合員に対し、昭和47年6月分以降 340円に上記各組合員の毎月稼働日数を乗じて算出した金額を、昭和48年6月分以降 780円に上記各組合員の毎月稼働日数を乗じて算出した金額を支払わなければならない。ただし、早朝指名時限ストライキの時間分を控除すること。
2 被申立人観光日本株式会社は、総評全国一般京都地本京都ゴルフ東キャデー労働組合の組合員に対し、昭和47年夏季一時金、同年年末一時金、昭和48年夏季一時金としてそれぞれ実質上会社が同盟京都ゴルフ労働組合の組合員に支払った1人当たり金額に現在在籍する総評全国一般京都地本京都ゴルフ東キャデー労働組合の組合員数を乗じた金額を同組合員に配分して支払わなければならない。
3 被申立人観光日本株式会社は、昭和48年1月18日付の、キャデーを4班に分け、1班は順ぐりにゴルフ客につくため待機し、他は主としてデボット埋め作業に従事するものとする業務命令を撤回しなければならない。
4(1) 被申立人観光日本株式会社は、総評全国一般京都地本京都ゴルフ東キャデー労働組合の組合員に対し、正午から午後1時までの休憩を強制してはならない。その時間に前記組合員が就労したことにより受けるべきラウンド給を削減してはならず、既に削減したラウンド給相当額を支払わなければならない。
 (2) 被申立人観光日本株式会社は、総評全国一般京都地本京都ゴルフ東キャデー労働組合の組合員に対し、ラウンドする順番、携帯バック数並びに電動カートの使用につき、東コースの同盟京都ゴルフ労働組合の組合員と差別扱いをしてはならない。
 (3) 被申立人観光日本株式会社は、総評全国一般京都地本京都ゴルフ東キャデー労働組合の組合員に対し、昭和47年10月6日から前記差別扱いがなくなるまでの間、差別がなければ受けるべきはずのラウンド給、割増手当を下記の基準に従い支払わなければならない。
                記
ア ラウンド給
(ア) 昭和47年のロックアウト解除後、各月ごとの総評全国一般京都地本京都ゴルフ東キャデー労働組合の組合員全員の延ラウンド数をその延稼働日数で除した同組合員1人の稼働1日当たりの平均ラウンド数と、同一期間の各月ごとの東コースの同盟京都ゴルフ労働組合及び総評全国一般京都地本京都ゴルフ東キャデー労働組合の両組合員全員の延ラウンド数をその稼働日数で除した1人の稼働1日当たりの平均ラウンド数との差を算出する。
(イ) 昭和47年4月22日から同年7月20日までの90日間における総評全国一般京都地本京都ゴルフ東キャデー労働組合の組合員及び東コースの同盟京都ゴルフ労働組合の組合員について、それぞれの延ラウンド数を延稼働日数で除し、総評全国一般京都地本京都ゴルフ東キャデー労働組合の組合員及び東コースの同盟京都ゴルフ労働組合の組合員のそれぞれ1人の稼働1日当たりの平均ラウンド数の差を算出する。ただし、東コースの同盟京都ゴルフ労働組合の組合員が平日の2日間だけ午前8時に出勤をしている期間については前記の差を5分の2、交替で午前8時出勤をしている期間については前記の差を2分の1にそれぞれ修正する。
(ウ) (ア) で算出した値から (イ) で算出した値を減じた数を基礎とし、それに各月ごとに総評全国一般京都地本京都ゴルフ東キャデー労働組合の組合員各人の各月ごとの稼働日数を乗じ、更にこれを1ラウンド当たりのラウンド給に乗じて各月ごとの総評全国一般京都地本京都ゴルフ東キャデー労働組合の組合員が受けるべきはずのラウンド給を算出する。
イ 割増手当
ア(ア)で算出した値からア(イ)で算出した値を減じた数を基礎とし、それに各月ごとに総評全国一般京都地本京都ゴルフ東キャデー労働組合の組合員各人の各月ごとの稼働日数を乗じたラウンド数を、各月ごとの総評全国一般京都地本京都ゴルフ東キャデー労働組合の組合員、東コースの同盟京都ゴルフ労働組合の組合員全員の得た総割増手当を延ラウンド数で除した1ラウンド当たりの平均割増手当に乗じて算出すること。
5 被申立人観光日本株式会社は、総評全国一般京都地本京都ゴルフ東キャデー労働組合の組合員に対し、早番は午後6時、遅番は午後7時まで退社を承認しないという措置を撤回し、前記組合員が従来どおり本来のキャデー業務を終了して午後4時以降に退社する場合、午後6時又は午後7時まで在社しなかったことのゆえをもって賃金カットをしてはならず、既にカットした賃金相当額を支払わなければならない。
6 被申立人観光日本株式会社は、X1、X2、X3、X4に対する昭和47年11月11日から同月17日までの出勤停止処分を取り消し、その間同人らが受けるべきはずの諸給与相当額として、同人らに対し、昭和47年7月20日までの分として支払われた賃金のうち同年4月22日から同年7月20日までの分に相当する金額の1日平均額(ただし、前記期間中の公休日及びストライキの時間を除いて除すること)を1日分として算出した額を支払わなければならない。
7 被申立人観光日本株式会社は、総評全国一般京都地本京都ゴルフ東キャデー労働組合の組合員に対し、職制を通じ又はゴルフクラブの会員を利用して組合脱退工作をしてはならない。
8 被申立人両名は、縦1メートル、横 1.5メートルの模造紙に下記の文章を墨書し、被申立人京都支社内の従業員の見やすい場所に1週間掲示しなければならない。
            記
 会社は、貴組合の組合員に対し、賃上げや一時金の支給を行わず、休憩時間を正午から午後1時までとして強制し、ラウンドする順番、携帯バック数並びに電動カートの使用につき東コースの同盟京都ゴルフ労働組合の組合員と差別扱いを行い、従来の慣行に反し早番は午後6時、遅番は午後7時以前に退社した場合に賃金カットし、昭和48年1月18日には、同盟京都ゴルフ労働組合の組合員に比べ実質上総評全国一般京都地本京都ゴルフ東キャデー労働組合の組合員が不利益を受けることになる業務命令を出し、無許可外出という理由を付してX1、X2、X3、X4らを6日間の出勤停止処分にし、更に職制を通じ又はゴルフクラブの会員を利用して組合脱退工作を行いましたが、これらの行為はいずれも不当労働行為であったことを認め、今後かかる行為はいたしません。
 以上、京都府地方労働委員会の命令により誓約いたします。
  昭和  年  月  日
 総評全国一般京都地本京都ゴルフ
 東キャデー労働組合
  執行委員長 X5 殿
 総評全国一般労働組合京都地方本部
  執行委員長 X6 殿
            観光日本株式会社
             代表取締役 Y1
            観光日本株式会社京都支社
             支 配 人 Y2 
判定の要旨  1201 支払い遅延・給付差別
会社が賃上げ方式の変更を含む協定未締結を理由に、実質上賃上げを行なわないことは、新しい方式が早期ストを行なっている組合にとって不利な内容であること、賃上げ方式を変えねばならぬ特段の事情のないこと、労使間に紛争が続いていること等からみて、不当労働行為である。

1201 支払い遅延・給付差別
一時金について、組合を脱退すれば支給するとの会社幹部の発言、退職した元組合員には、支給していること、別組合には実質上支給していること等からみて、組合員にのみ支給しないのは、会社が組合を嫌悪し、組合員を経済的に困窮させる意図をもってした不当労働行為である。

1302 就業上の差別
会社が組合員に対して、休憩時間の強制、付随業務への配置等、極力組合員を客につかせないようにした差別的諸行為は容認すべき正当な理由が存在しないし、ロックアウトや組合執行部全員解雇等の不当労働行為を行なっていることとあわせ考えれば、組合活動を嫌い、稼働給の減収を策し、組合の壊滅を意図したものと判断される。

1400 制裁処分
就業時間中組合員5名が外出許可を係長に提出し、係長が異議を述べなかった以上、許可権限者から許可されたものと考えるのは当然であり、被処分者が実質上組合役員であることを考え合わせれば、組合を嫌悪し、組合弱体化の意図で出勤停止処分を行なったものと推認せざるを得ない。

1302 就業上の差別
従来の退社時間の慣行を無視し、一方的に組合員のみに拘束時間を厳守させたことは、組合が監督署へ申告したことの報復措置として組合員を不利益取扱いしたものとみられる。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
会社は組合員に対し、職制を通じ利益誘導や組合員であるかぎり不利益をうけるとの脱退工作を行なったうえに、ゴルフクラブの会員を利用して組合脱退工作をしたことが明らかであって、これらの諸行為は不当労働行為である。

4415 賃金是正を命じた例
不当労働行為により減収となったキャディーのラウンド給等については、キャデー全員の1人平均のラウンド数から組合員の1人平均ラウンド数を減じ、さらに組合員の早朝時限ストの結果生じたラウンド数の差を減じて得た数に、1ラウンド当り単価を乗じて減収相当額を算定するのが相当である。

業種・規模  娯楽業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集53集305頁 
評釈等情報   

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