概要情報
事件名 |
みどり十字 |
事件番号 |
福岡地労委 平成 5年(不)第15号
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申立人 |
福岡医療労働組合 |
被申立人 |
医療法人 財団みどり十字 |
命令年月日 |
平成 7年 2月24日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、(1)分会書記長X1の労働条件が変更されたこと、(2)X1及び分会書記次長X2の配転、(3)組合及び分会員に対する非難中傷、脱退勧奨、(4)分会4役であるX3ら7名に対する懲戒解雇処分、(5)副主任制度の廃止、副主任であった組合員X10ら4名の降格、(6)組合書記長X14の評議員解任、院内立入り禁止、(7)組合事務所移転の一方的通告、(8)非組合員のみへの一時金支給が、それぞれ不当労働行為であるとして争われた事件である。 福岡地労委は、(1)から(5)については不当労働行為に当たるとし、(3)について不作為命令を、その他についてはそれぞれの措置の撤回又は原職復帰・バック・ペイを命じ、(8)については棄却している。なお、(6)及び(7)の申立てについては、証人調べ終了後に申立人が取り下げている。 |
命令主文 |
1 被申立人は、申立人組合員X1に対する平成5年4月21日付の基本給及び年次有給休暇日 数の改定措置を撤回し、同人に対して、その措置がなければ同人が支給を受けたであろう賃 金と同人が既に支給を受けた賃金との差額を支払わなければならない。 2 被申立人は、申立人組合員X1及び同X2に対する平成5年6月11日付配置転換命令を撤 回し、主文第4項による原職復帰後は、同人らを配置転換前に従事していた業務に就けなけ ればならない。 3 被申立人は、申立人組合の組合員に対して、直接にまたは就職時の紹介者を通じて組合脱 退を働きかけたり、あるいは不利益が及ぶことを暗示する発言を行うことにより、申立人組 合の運営に支配介入してはならない。 4 被申立人は、申立人組合員X3、同X4、同X5、同X6、同X1、同X2及び同X15 に対する平成5年7月1日付懲戒解雇処分を撤回し、同人らに対して次の措置をとらなけれ ばならない。 (1) 原職または原職同等職に復帰させること。 (2) 懲戒解雇処分がなければ同人が受けたであろう賃金相当額を支払うこと。 5 被申立人は、平成5年7月16日付けで行った副主任制度廃止の措置を撤回し、申立人組 合員X8、同X9、同X10及び同X11を原職に復帰させるとともに、副主任制度廃止の 措置がなければ同人らが受けたであろう役職手当相当額を支払わなければならない。 6 被申立人は、本命令交付の日から7日以内に、次の文書を縦55cm×横40cm(新聞紙1頁 大)の白紙に明瞭に記載し、被申立人の経営する行橋厚生病院の入り口等従業員の見易い場 所に10日間掲示しなければならない。 医療法人財団みどり十字が行った下記の行為は、福岡県地方労働委員会によって不当労働 行為と判断されました。 今後このような行為を繰り返さないよう留意します。 記 1平成5年4月21日付で、福岡医療労働組合の組合員X1の基本給及び年次有給休暇日 数の改定を行ったこと。 2平成5年6月11日付で、福岡医療労働組合の組合員X1及び同X2を配置転換したこと。 3福岡医療労働組合の組合員X12に対して、直接にまたは同人の就職時の紹介者を通じて組 合脱退を働きかけたり、同組合員X8及び同X13に対して不利益が及ぶことを暗示する発 言を行ったこと。 4平成5年7月1日付で、福岡医療労働組合の組合員X3、同X4、同X5、同X6、同X 1、同X2及び同X6を懲戒解雇したこと。 5平成5年7月16日付で、副主任制度を廃止し、副主任であった福岡医療労働組合の組合員 X8、同X9、同X10及び同X11を降格したこと。 平成 年 月 日 福岡医療労働組合行橋厚生病院分会 分会長 X3 殿 医療法人財団みどり十字 理事長 Y1 7 その余の申立てについては、棄却する。 |
判定の要旨 |
1600 休暇の取扱い
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
採用の際に病院とX1との合意により決定された基本給及び有給休暇日数を一方的に切り下げたことには合理性がなく、その時期等を総合すると、本件措置は分会書記長である同人の活動を嫌ってのもので、7条1、3号に該当するとされた例。
1300 転勤・配転
3103 労働協約締結をめぐる行為
診療報酬請求業務に従事していた分会の書記長と書記次長を同業務の外注化を理由に、病歴管理業務、管理部門の管理業務に配転したことが、その必要性及び配転に関する就業規則所定の手続の履行に疑問があり不当労働行為とされた例。
2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
病院長が、就職紹介所を通じて分会員の脱退を働きかけたことが労組法7条3号に該当する不当労働行為とされた例。
2610 職制上の地位にある者の言動
2700 威嚇・暴力行為
病院長及び病院理事が分会員らに対して行った言動が、処分を暗示するものと受け取れる威嚇的言動であるとして、労組法7条3号に該当する不当労働行為とされた例。
1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
分会役員7名に対する病院の名誉毀損等を理由とする懲戒解雇が、処分の相当性に欠けるものであること、病院の分会役員や分会員に対する対応等を合わせ考えると、労組法7条1、3号に該当する不当労働行為とされた例。
4403 解雇後の事情と原職復帰
懲戒解雇の救済につき、原職には既に他の職員が就いているとして、原職復帰については将来の人事異動で実現されることを期待し、現時点においては、原職同等職に復帰させることが現実的な救済であるとした例。
1200 降格・不昇格
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
副主任制度を廃止し、その結果、同職にあった分会員4名を一般職に降格したことが、分会役員の懲戒解雇と合わせて看護部門の職制から分会員を排除する意図で行ったものと推認せざると得ず、労組法7条1、3号に該当するとされた例。
2620 反組合的言動
病院が全職員集会で「全職員の疑問に答えます」と題したビラを配布したことが、その内容からみて、支配介入には当たらないとされた例。
1301 出向
組合員への夏季一時金の支給が約1か月遅れたのは、病院の団交再開、仮支給提案に応じなかった組合の対応によるもので、不当労働行為には当たらないとされた例。
4421 文書掲示等を命じた例
文書の手交及び掲示を求めたのに対し、文書掲示で足りるとされた例。
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業種・規模 |
医療業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集101集180頁 |
評釈等情報 |
 
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