労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  西日本旅客鉄道(島根年末手当等) 
事件番号  島根地労委 昭和63年(不)第4号 
島根地労委 平成 1年(不)第1号 
島根地労委 平成 1年(不)第2号 
申立人  国鉄労働組合出雲支部ほか一ケ所 
申立人  国鉄労働組合米子地方本部 
申立人  国鉄労働組合浜田支部 
被申立人  西日本旅客鉄道 株式会社 
命令年月日  平成 6年 5月10日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  本件は、会社が、申立人組合の組合員に対し(1)昭和62年年末手当(対象者47名)、63年度夏季手当(同41名)・年末手当(同21名)を減額支給したこと、(2)昭和63年度所定昇給を4分の1号棒減じて実施したこと(対象者51名)、(3)事業所を設置して役員・活動家を集中的に配属し、レポート作成業務や果樹栽培業務を行わせたことが不当労働行為であるとして争われた事件である。
 島根地労委は、(1)について各手当から減額した金額にそれぞれ年率5分を加算した金額の支払い、(2)について所定の4号棒昇給したものとして扱いこれにより生じた差額に年率5分を加算した金額の支払いを命じ、併せて(1)、(2)及び(3)に関する文書交付と文書による履行報告を命じた。その余の救済申立て(事業所の廃止)については棄却した。 
命令主文  1 被申立人西日本旅客鉄道株式会社は、別紙1記載の申立人国鉄労働組合米子地方本部に所 属する組合員等に対し、昭和62年度年末手当から減額した別紙1記載の金額に、それぞれ年 率5分を加算した金額を支払わなければならない。
2 被申立人西日本旅客鉄道株式会社は、別紙2記載の申立人国鉄労働組合米子地方本部に所 属する組合員等に対し、昭和63年度昇給における昇給号棒を1号棒加算し、所定の4号棒昇 給したものとして扱い、これにより各人別に算定される基本給及び諸手当を再計算した金額 から既に各人に支給した基本給及び諸手当の金額を減じて得られる差額に、それぞれ年率5 分を加算した金額を支払わなければならない。
3 被申立人西日本旅客鉄道株式会社は、別紙3記載の申立人国鉄労働組合米子地方本部に所 属する組合員等に対し、昭和63年度夏季手当から減額した別紙3記載の金額に、それぞれ年 率5分を加算した金額を支払わなければならない。
4 被申立人西日本旅客鉄道株式会社は、別紙4記載の申立人国鉄労働組合米子地方本部に所 属する組合員等に対し、昭和63年度年末手当から減額した別紙4記載の金額に、それぞれ年 率5分を加算した金額を支払わなければならない。
5 被申立人西日本旅客鉄道株式会社は、本命令書受領の日の翌日から1週間以内に、下記内 容の文書を申立人国鉄労働組合米子地方本部に交付しなければならない。
                      記
                                   年 月 日
   国鉄労働組合米子地方本部
    執行委員長 X1 殿
                       西日本旅客鉄道株式会社
                        代表取締役社長 Y1
  当社が、貴組合の組合員に対して昭和62年度年末手当の減額支給、昭和63年度昇給の減号 棒、昭和63年度夏季手当の減額支給及び昭和63年度年末手当の減額支給をしたことは不当労 働行為であると島根県地方労働委員会において認定されました。
  今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
6 被申立人西日本旅客鉄道株式会社は、本命令書受領の日の翌日から1週間以内に、下記内 容の文書を申立人国鉄労働組合米子地方本部、同国鉄労働組合浜田支部、同国鉄労働組合出 雲支部及び同国鉄労働組合益田支部にそれぞれ交付しなければならない。
                    記
                                   年 月 日
   国鉄労働組合米子地方本部
    執行委員長 X1 殿
                        西日本旅客鉄道株式会社
                         代表取締役社長 Y1
  当社が、松江事業所、出雲事業所、浜田事業所及び浜田事業所益田派出に貴組合の組合員 を配属し、当該事業所において行わせてきたレポート作成業務及び果樹栽培業務(開墾作  業)は、形式上は新規事業の調査・実施といいながら、その実態は、当該事業所に配属され た組合員に対して精神的、肉体的苦痛を強いる業務であり、貴組合員に対する不利益取扱い であると同時に、貴組合に対する支配介入にあたる不当労働行為であると島根県地方労働委 員会において認定されました。
  今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
7 被申立人西日本旅客鉄道株式会社は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書 で報告しなければならない。
8 申立人らのその余の請求を棄却する。 
判定の要旨  5124 その他の審査手続
本件は島根県内の会社各事業所での業務行為等が不当労働行為かどうか問題とされており、労組法施行令27条1項により島根地労委に管轄が明らかであるとして、移送の申立てに理由がないとされた例。

5124 その他の審査手続
会社は、本件が鳥取地労委に申立てた別件と当事者、事実関係を同一としており、二重申立てであるというが、本件は島根県内の勤務地に勤務する組合員の63年年末手当てに関する申立てであって、二重申立てではないとされた例。

4905 経営補助者
米子支社は会社の地方機関であって、会社の組織の一部にすぎず、被申立人適格を有せず、会社のみを被申立人として表示することが適切であるとされた例。

5000 具体的請求の欠除
労働委員会は、個々の事案に応じて適切な命令を出す裁量権を有しており、必ずしも厳格に申立人の「請求する救済命令の内容」に拘束されず、それに仮に不特定、不明な部分があっても、それだけで申立てを却下すべきでないとされた例。

5201 継続する行為
本件会社事業所で現在行われているレポート作成、開墾等の業務行為は「継続する行為」に該当し、申立日の平成元年8月4日から1年前の時点で各行為が終了していないことは明らかであるから、却下することにはならないとされた例。

5200 除斥期間
本件年末手当は63年12月9日支給されており、元年12月9日が民法141条による申立期間満了日となるところ、同日及び翌日は土・日曜で県の休日であり、同法142条、地方自治法4条の2により、同月11日の申立ては適法とされた例。

5147 その他
申立ての要件としては、申立人の主張する事実が法7条各号の規定による不当労働行為に該当することが判別できればよく、本件の場合3号該当が判別できるので、規則34条1項1号により却下すべしとの主張は採用しないとされた例。

5121 挙証・採証
勤務成績の査定は会社が実施し、その関係資料を所持しているが、これを公開せず、説明もしていないが、申立人が差別の外形事実の存在を立証し、公正さに疑義があると疎明した以上、会社は反証として査定の公正を疎明すべきだとされた例。

4102 承認・合意
会社を退職し、組合員資格を失った者についても、同人らが自己の利益を放棄するなどの意思の表明がない以上、組合にはその救済を求める適格があるとされた例。

1200 降格・不昇格
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
組合バッジ着用等を理由に、組合員らの62、63年度年末一時金、63年度昇給について、減額し又は減号棒したことが、組合嫌悪による不当労働行為であるとされた例。

1300 転勤・配転
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
組合の役員・活動家を新たに設置した事務所に配属し、レポート作成業務、果樹栽培業務を行わせたことが、組合員らを嫌悪した7条1、3号の不当労働行為とされた例。

5008 その他
事業所の廃止を命ずることは労働委員会の裁量権の範囲外であるとされた例。

業種・規模  鉄道業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集99集616頁 
評釈等情報   

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