労働委員会命令データベース

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件名  日本国有鉄道金沢鉄道管理局 
事件番号  公労委 昭和35年(不)第5号 
申立人  国鉄労働組合 
被申立人  日本国有鉄道 
命令年月日  昭和37年 7月 3日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  金沢鉄道管理局管内の金沢駅等の駅長、助役らが、新たに結成された組合を援助するため、国鉄労働組合の組合員に対し、国鉄労働組合からの脱退を勧奨したこと、金沢鉄道管理局局報に国鉄労働組合に不利な内容の記事を掲載したこと等が争われた事件で、文書手交を命じ、文書掲示については棄却した。 
命令主文  主  文
1 被申立人は、本命令交付の日から7日以内に、下記事項を記載した文書を申立人に交付しなければならない。
            記
 日本国有鉄道は、金沢鉄道管理局管内の駅長及び助役の一部が職員に対して貴労働組合から脱退するようしょうようし、並びに金沢鉄道管理局が貴労働組合に不利な記事を掲載した「金鉄だより」を配布して、貴労働組合の運営に支配介入したことについて遺憾の意を表するとともに、今後かかる行為を繰り返さないことを約する。
2 申立人のその余の申立は、棄却する。 
判定の要旨  2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
駅の助役(使用者の利益を代表する者)と主務者とが出席して旅客サーヴィス向上運動懇談会が行なわれたが、この懇談会において新組合を結成することについて話合いがなされたこと、同懇談会における助役の挨拶が申立組合を批判する趣旨のものであったこと、懇談会のあった翌日から脱退の動きが始まり、かつ懇談会に出席した主務者はいずれも新組合に加入したことなどの諸点を考慮して、助役のなした一連の言動を綜合判断すれば、助役により支配介入が行なわれたことは明らかである。

3410 職制上の地位にある者の言動
助役は、公労法第4条第1項ただし書に規定する者に該当し、使用者の利益を代表する地位にある者であるが、助役のなした行為は使用者の利益を代表する地位にある助役としての言動であると認められるので、被申立人にその責を帰せしめることは当然である。

2621 個別的示唆・説得・非難等
3420 従業員の親族・保証人・友人の言動
助役が、新組合に加入することを断った申立組合員を私宅に招待し、「私は君の保証人だから悪いようにはしない。はんこだけは預けておけ、よい時期をみて新組合にいれてやる」と述べたことは、申立組合から脱退することを積極的にしょうようしたものであり、支配介入に該当する。

2610 職制上の地位にある者の言動
2624 組合人事への干渉
組合代議員の選挙に際し、立候補者の上司である助役が、他掛の職員に対し儀礼的に「よろしく」と述べたことは、支配介入とは認められない。

3020 組合活動への制約
被申立人の施設を利用して行なうビラ、ポスター類について、掲示場所の特定、事前の許可、内容の審査、無許可掲示物の撤去を励行すべきことを内容とする通達が出されたが、掲示類の取扱いについてはその後も従来と変るところがなく、支配介入とは認められない。

2610 職制上の地位にある者の言動
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
助役が、組合役員に対し、「構内詰所で勤務中の職員に労働組合の話をすると作業に支障があるので話をすることはやめてもらいたい」と述べたことは、支配介入とは認められない。

2610 職制上の地位にある者の言動
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
助役が、申立組合員が日常の作業において新組合の組合員と協力しない旨の話を聞き、「組合の問題で業務に影響を与えられては困る」と注意を与えたことは、支配介入とは認められない。

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
駅長が点呼のさい「北陸にも新しい労働組合が生まれたので皆さんも良識があることでよく考えてもらいたい」と発言したりしたことは、この発言の時期に申立組合員が最も多数脱退していることおよびこの発言の直後にも3名が脱退していることを考慮すれば、申立組合から脱退し、新組合に加入することを促す趣旨のものであったと認められ、支配介入に該当する。

2620 反組合的言動
鉄道管理局の職員らを対象とする公的出版物である「金鉄だより」の記事は、その記述内容、配布の方法、時期等の諸事情を考え合せれば、発行者において、新組合は「労働者の利益」を守る「良識ある」労働組合を指向するものであるとの認識を持っていること、これに反し申立組合は激しい組織動揺下にあり、その分裂の傾向を防止できるかどうか危ぶまれる一方、新組合は、今後組織を拡大してゆくであろうとの見通しないし期待をもっていることを示したものであり、これらの記事を掲載した「金鉄だより」を職員に配布したことは、申立組合の運営に対する支配介入に該当するものと認める。

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
新規採用職員の座談会の席上、文書課長が、「組合のあり方は、これから一組合員となる皆さんにとっても大きな問題となりますが、自分で判断して正しいと思った行動をとること、附和雷同しないこと。もし判断を間違えると組合も正常に育たないし、慎重に行動してほしい」と述べたことは、支配介入とは認められない。

4614 文書手交のみを命じた例
申立組合は、陳謝文の手交のほか、陳謝文の鉄道管理局局報への掲載および管理局管内各駅への掲示をも求めているが、本件については主文のとおりの命令をもって足りるものと認める。

業種・規模  分類不能の産業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集1集72頁 
評釈等情報   

[先頭に戻る]