労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  丸子警報器 
事件番号  長野地労委 平成 3年(不)第2号 
申立人  全日本金属情報機器労働組合長野地方本部 
申立人  全日本金属情報機器労働組合 
申立人  全日本金属情報機器労働組合丸子警報器支部 
被申立人  丸子警報器 株式会社 
命令年月日  平成 5年 4月15日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  本件は、会社が(1)チェックオフ金額の変更及び臨時者組合員の組合費チェックオフを拒んだこと、(2)組合側の団体交渉委員を7名に制限したこと、(3)支部等の委任状を持参しなかったことを理由に県労連等の役員の団交出席を拒否したこと、(4)組合旗の掲揚及びワッペン着用就労を理由に団交に応じなかったこと、(5)年末一時金等についての不誠実団交、(6)スト中の施設使用不許可及び無断使用に対し退去要請をしたことが不当労働行為であるとして争われた事件である。
長野地労委は、(1)についてチェックオフの実施、(2)について交渉委員を減員しない団交応諾、(3)、(4)について正当な理由なく団交を拒むことの禁止(5)について回答の根拠について裏付けとなる資料を提出するなどした誠実な対応を命じ、併せてそれぞれについての文書掲示を命じ、その余の申立てについては棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人全日本金属情報労働組合丸子警報器支部が被申立人の従業員の過半数を組織している限り、同支部とチェックオフに関する書面協定を締結した上で、同支部の臨時者組合員を含めた組合員全員について、同支部から通知された組合費の全額をチェックオフしなければならない。
2 被申立人は、申立人らとの団体交渉を行う場合には、申立人全日本金属情報機器労働組合丸子警報器支部の交渉委員の人員を減ずることのないように、団体交渉に応じなければならない。
3 被申立人は、申立人らとの団体交渉に、長野県労働組合連合会及び上小地区労働組合連合の役員が参加することを、正当な理由なく拒んではならない。
4 被申立人は、申立人らが申し入れる団体交渉を、申立人全日本金属情報機器労働組合丸子警報器支部の行う組合旗の掲揚ないし同支部組合員の行うワッペン着用就労を理由に拒否してはならない。
5 被申立人は、申立人らとの団体交渉において、回答の根拠につき、その裏付けとなる資料を提示するなどして、具体的に説明し、誠実にこれに応じなければならない。
6 被申立人は、下記の文書を縦80センチメートル、横55センチメートル(新聞紙2ページ大)の白紙にかい書で明瞭に墨書して、タイムカードわきの会社掲示板など全従業員の見やすい場所に、き損することなく7日間掲示しなければならない。
                記
 当社が行った次の行為は、長野県地方労働委員会により、不当労働行為と認定されました。当社は、今後このような行為を行わないようにいたします。
(1) 貴支部の組合費増額に伴うチェックオフ金額の変更及び臨時者組合員の組合費のチェックオフを拒んだこと。
(2) 団体交渉において、貴支部らの交渉委員を7名に制限してきたこと。
(3) 平成3年5月8日に行われた要請交渉において、長野県労働組合連合会及び上小地区労働組合連合の役員の参加を、貴支部らの委任状を持参しないことを理由に拒否したこと。
(4) 平成3年秋闘要求に対する回答が遅延する理由について十分な説明をせずに回答指定日までに回答しなかったこと。
(5) 平成3年秋闘、年末一時金等の団体交渉を、組合旗の掲揚及びワッペン着用就労を理由に拒否したこと。
(6) 平成3年年末一時金の団体交渉において、回答の根拠について具体的な説明をせず、裏付けとなる資料の提出も拒否したこと。
 平成  年  月  日
  全日本金属情報機器労働組合丸子警報器支部
  全日本金属情報機器労働組合長野地方本部
  全日本金属情報機器労働組合       御中
            丸子警報器株式会社
             代表取締役社長 Y1
7申立人らのその余の申立てを棄却する。 
判定の要旨  2800 各種便宜供与の廃止・拒否
上部団体加盟、臨時者の組合加入を理由とするチェック・オフ金額増額の申入れを会社が拒否したことは、会社が具体的な拒否理由を何ら主張せず、増額申入れの理由を会社が承知していたこと等からみて、上部加盟等嫌悪の不当労働行為であるとされた例。

2213 交渉人数
組合は上部団体に加盟したことに伴い、交渉委員に上部団体役員を加えようとするものであるのに、会社が組合と協議を尽くすことなく1年以上も組合側交渉委員を7名に制限し続けていることには合理性なく、7条2号の不当労働行為であるとされた例。

2123 その他交渉出席者
会社が上部団体役員の団交への参加資格に疑義を抱いたとしても、その場で釈明を求め説明を受ければ済むことであり、ことさら委任状の持参を要求して、その参加を拒んだことには正当理由がないというべきであるとされた例。

2242 回答なし
組合の要求する回答指定日に何らの回答もしなかった会社の対応は、不相当とはいえない準備期間がありながら、回答を遅延する理由等について十分説明もしなかったもので不誠実であり、7条2号の不当労働行為であるとされた例。

2249 その他使用者の態度
組合の組合旗の掲揚、ワッペンの着用はそれ自体違法行為か否かはさておき、会社に団交を強制することが労使間の信義に反すると評価される場合とは認められず、会社の団交拒否の正当理由とはならないというべきであるとされた例。

2248 実質的権限のない交渉担当者
社長が団交に出席せずとも、会社専務、常務取締役らが出席していることが認められ、交渉権限のある者が出席していなかったとは必ずしもいうことはできず、実質的話し合いが行われなかったとの疎明はないとされた例。

2240 説明・説得の程度
年末一時金交渉において、会社は回答根拠の具体的説明をせず、組合の要求にもかかわらず、裏付けとなる資料を提示することを拒否しており、かかる交渉態度は不誠実であるといわざるを得ないとされた例。

4300 労組法7条2号(団交拒否)の場合
年末一時金交渉が妥結したからといって組合の不利益は直ちに回復されたものとはいえず、本件案間でも資料を出す必要がないとしているので、被救済利益をまだ欠くものとはいえないとされた例。

3020 組合活動への制約
会社がスト中、組合に会社の会館使用を禁止したことは必ずしも不合理ともいえず、組合が施設使用の必要性等につき十分に説明して会社の理解を得ようとした事情もなく、本件不許可も従来の取扱いに従ったまでで、支配介入とはいえないとされた例。

業種・規模  輸送用機械器具製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集96集593頁 
評釈等情報   

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