労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  神谷商事(懲戒処分等) 
事件番号  福岡地労委 昭和63年(不)第65号 
福岡地労委 平成 1年(不)第7号 
福岡地労委 平成 1年(不)第72号 
申立人  労働組合東京ユニオン 
申立人  X1 
被申立人  神谷商事 株式会社 
命令年月日  平成 5年 4月 6日 
命令区分  全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) 
重要度   
事件概要  本件は、会社が、(1)屋台活動及び社長室への乱入等を理由に、組合員7名を出勤停止処分及び申立人X1を解雇処分したこと、(2)組合事務所家賃の支払いを拒否したこと、(3)休憩室や就労場所に関して組合員と非組合員とを分離したこと、(4)組合掲示板の組合ビラを撤去したこと、(5)スト時における非組合員に対するビラ配布及び説得活動を妨害したことが不当労働行為であるとして争われた事件である。
東京地労委は、(1)についてそれぞれの処分の撤回及びバックペイ、(2)について家賃の支払い、(3)、(4)、(5)について当該行為による支配介入の禁止を命じ、併せて(1)から(5)についての10日間の文書掲示と、(4)を除く事項について文書履行報告を命じた。 
命令主文  1 被申立人神谷商事株式会社は、申立人労働組合東京ユニオン所属組合員X1、同X2、同X3、同X4、同X5、同X6および同X7に対して行った次表記載に各懲戒処分がなかったものとして取り扱い、同処分がなければ受けるはずであった賃金相当額を支払わなければならない。
  被処分者    処分年月日    処分の内容
  X1      63年7月4日   出勤停止5日
          〃 7月25日   出勤停止5日
          〃 8月15日   出勤停止6日
          〃 9月2日   出勤停止6日
          〃 9月27日   出勤停止7日
          〃 10月21日   出勤停止7日
  X2      〃 7月7日   出勤停止5日
          〃 7月29日   出勤停止5日
          〃 8月15日   出勤停止6日
          〃 9月2日   出勤停止6日
  被処分者    処分年月日    処分の内容
  X3      63年11月14日   出勤停止5日
  X4       〃        出勤停止1日
  X5       〃         〃
  X6       〃 11月15日   出勤停止3日
  X7       〃         〃
2 被申立人会社は、申立人X1に対し、次の措置を含め昭和63年12月20日付解雇処分がなかったものとして取り扱わなければならない。
(1) ビリヤード部門の他の従業員と同じ業務に従事させること。
(2) 解雇の翌日から復帰するまでの間の賃金相当額を支払うこと。
3 被申立人会社は、申立人組合傘下の神谷商事支部組合事務所家賃について、62年1月以降63年6月まではその値上分を、63年7月以降は新家賃全額を支払わなければならない。
4 被申立人会社は、
(1) 休憩室および就労場所に関して、申立人組合組合員と非組合員とを分離すること、
(2) 申立人組合の組合掲示板の組合ビラを撤去すること、
(3) 申立人組合のストライキ時における非組合員に対するビラ配布活動および説得活動などを妨害すること、
によって、申立人組合の運営に支配介入してはならない。
5 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の大きさの白紙に下記内容を楷書で明瞭に墨書して、被申立人会社の従業員出入口の見易い場所に10日間掲示しなければならない。
               記
                     年  月  日
労働組合東京ユニオン
執行委員長 X8殿
               神谷商事株式会社
               代表取締役 Y1
 当社が貴組合および貴組合所属組合員らに対して行った下記の行為は、いずれも不当労働行為であると東京都地方労働委員会で認定されました。
 今後このような行為を繰り返さないよう留意します。
(1) 屋台営業に従事したとしてまた社長室に乱入したなどして出勤停止処分あるいは解雇処分にしたこと。
(2) 神谷商事支部組合事務所家賃について、昭和62年1月以降63年6月までの値上分を支払わなかったことおよび63年7月以降の全額の支払いを打ち切ったこと。
(3) 貴組合員と非組合員との休憩室および就労場所を分離したこと、掲示板のビラを撤去したこと並びに貴組合のストライキ時におけるビラ配布活動および説得活動などを妨害したこと。
(注、年月日は掲示した日を記載すること。)
6 被申立人会社は、前記第1項、第2項、第3項および第5項を履行したときは、すみやかに当委員会に文書で報告しなければならない。 
判定の要旨  3106 その他の行為
組合員と非組合員間で、休憩室と就労場所を分離したことに必然性は見い出せず、組合員が非組合員に接触できないようにするための措置で、支配介入にあたる。

3020 組合活動への制約
3102 争議対抗手段
ストライキ時に組合員がアルバイトに対して行った説得、情宣活動は争議中の言論の許される範囲のものであり、組合掲示板のビラ内容も事実に反するものはなく、これを妨害し又は撤去した会社の措置は組合運営に対する介入である。

0200 宣伝活動
1400 制裁処分
組合の本件「屋台活動」は、会社が紛争解決にかたくなな態度を示す本件に限ってみれば抗議のための情宣活動とみることができ、その方法も特に社会的に非難されるべきものではなく、正当な活動と認められ、出勤停止処分は支配介入である。

1400 制裁処分
組合員X1らが社長室へ乱入したとして出勤停止処分に付したことは、会社の処分事由が誇張にすぎ正当とはいえず、組合及び組合員を嫌悪し、就業規則違反に藉口した不当労働行為である。

0700 職場規律違反
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
X1に対する、「屋台活動」及び社長室への乱入を理由とする普通解雇は、その理由に首肯しうるものがなく、組合及びX1が組合員であることを嫌悪し就業規則違反に藉口した不当労働行為である。

4302 組合員資格喪失者(含組合脱退・死亡)
X3及びX4はすでに退職しているが、いまだ組合員の身分を保持しており、出勤停止処分についての被救済利益を失わない。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
組合が組合事務所を屋台営業の準備に使ったからとして警告を発しただけで家賃支払いを打切ったことは、会社が長期にわたり家賃を支払って来た経緯からみて正当とはいえず、組合の屋台活動を嫌悪して行った支配介入行為である。

業種・規模  娯楽業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集96集540頁 
評釈等情報   

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